表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
22/35

五 思い返すと②

「優姫せんぱーい!」


 早速、育が飛びついてきた。


「お休みはどうされてましたか?ゆっくりされました?それとも、どこか行きました?あ、今日も可愛いですね!」


 そう聞かれてドキッとしたけれど、どうやら新は妹に会ったことは話していないらしい。もし話していたら、もっと突っ込んだ質問をしてくるはずだ。


「ええ、ゆっくりできたわ。育ちゃんはどうだった?」

「わたしは友達と遊んでました!そこで、行った先であったことなんですけど」


 そのまま、わたしにくっついたまま、マシンガントークが始まる。

 あれ?いつもなら、このあたりで新が妹をひきはがしに来るのだけれど、今日は来ない。そっと見回してみると、三年生どうしで話し合っているようだった。なんだか忙しそう。


 あ、目が合った。

 と思ったら、すぐそらされた。なんだか、ヘンだ。


 結局、そのまま稽古が始まった。今日はわたしの出番まで回ってくる。

 気持ちを切り替えて、舞台へ立つ。今のわたしは悪い妖精だ。相手役が先輩だろうと、戦闘シーンに手抜きはしない。


 一幕終えたら、チェックタイムだ。学年関係なく、意見を言うことができるが、なかなか一年生から手を挙げる人は少ない。その中でも、育は物怖じせず思ったことが言えるタイプだ。しかも、言っていることが的確なので、もしかしたら育も父親の影響を受けているのかもしれない。もちろん、わたしも先輩や同級生からアドバイスをいただいたので、素直に受け止める。ただ、新からは何も言われなかった。たまたま、言うことがなかっただけかもしれないけれど・・・。というか、顔すらこっちを向いてくれていない気がする・・・。


 そうして練習も終わった。帰りを誘おうと思ったら、すでに姿が見えなかった。こんなに早く部室から出て行くなんて珍しい。


 仕方がないので、育、希湖、涼也、そして今日は柊悟も一緒に帰り道を歩く。

 歩きながらも、今日は新に声をかけてもらえなくてなんとなく気落ちしてしまった。今朝はあんなに浮かれていたのに。でも、たった一日だし。気のせいかもしれないし。


「ねえ、育ちゃん。」


 わたしはタイミングを見計らってこそっと育に話しかけた。


「あのさ、その・・・新先輩さ、何かわたしのこと怒ってたりしなかった?」

「え?優姫先輩のことを?なんで・・・はっ」


 何が育の中でひらめいたのか、目の色を変えて詰め寄ってきた。


「そう言えば、今日の練習、お兄ちゃんヘンでしたよね!?いつもなら毎回欠かさず優姫先輩に話しかけて、あまつさえボディタッチまでかましていくのに、なーんか今日は距離ありましたね。」

「いや、でも、わたしの自意識過剰かもしれないし。」

「いやいやいやいや。だって、わたし今年入部してまだ一学期も終わってないですけど、毎回話しかけにいくの、優姫先輩だけですよ。」

「それは、育ちゃんがいるからじゃない?」

「わたしは都合のいいダシなだけですよ。一年生の頃とかどうだったんですか?」


 そう言われて、去年を思い返す。言われてみれば、よく話していた気がする。部活のことだけじゃなくて、テストとか教師とか、他愛のない話も。


「あと、さりげなく肩とか髪の毛とか触っていくのも、優姫先輩だけですよ。他の女子にはしていません。」

「そうなの!?」

「そうです。まあ、本人もそこは自覚があるのかわかりませんけど。天然タラシみたいなところもあるので。」


 わたしだけ、なんて聞いてしまうと、また気持ちが舞い上がってしまいそうになる。さっきは気落ちしていたのに、ちょっと嬉しくなってしまった。


「まったく、優姫先輩を落ち込ませるなんてけしからんですね!帰ったらとっちめておきますね!」

「いや!本当に、わたしの自意識過剰なだけだから!」

「いいえ!こういうのはこじれる前に喝をいれないとダメです。任せてください!」


 育は胸を叩いてくれるけれど、わたしは若干不安と焦りがあった。こんなことをして、わたしの想いがバレたりしないだろうか。新に重い女だと思われたりしないだろうか。

 そんな話をしていたら、あっという間に駅前通りに着いてしまって、育と希湖と柊悟はそこで別れた。


 帰宅してから、一応陽太にはマコトと土曜の午後に会うことを伝えた。すると、案の定「僕も同席する!」と言い出した。


「大丈夫よ。涼也と希湖と柊悟も来てくれるし。」

「でも、心配だよ。」

「話をするだけよ。それに、ファミレスなら手も出しにくいでしょ。」

「それでも・・・大切な人の、一大事だよ。傍にいることくらい、したいよ。」


 わたしは陽太のやわらかい髪の毛をなでた。


「ありがとう。陽太は本当にいい弟だね。」


 わたしがそう言うと、陽太は下唇を噛んだ。


「・・・もう、何言っても僕は行くからね。」

「はいはい。お店の迷惑にだけはならないでね。」

「それは、アイツしだいだね。」


 陽太はそう言い捨てると、自分の部屋に引っ込んでしまった。

 わたしも夕飯とお風呂を済ませて自室でのんびりしていると、育から携帯のメッセージが届いた。なかば食い気味に開いて読んでいく。


『優姫先輩!お疲れ様です!お兄ちゃん問い詰めて反省させましたので、明日からは普段通りで大丈夫です!では、おやすみなさい。』


 何を言って、どう反省したのか、詳しく聞きたかったけれどまた墓穴を掘りそうなので『ありがとう。新先輩にもよろしく。おやすみなさい。』とだけ返した。


 明日また、新にあったらどんな顔をすればいいのだろう。妹まで使って、面倒くさいなんて思われたりしていないだろうか。

 わたしは悶々としながら眠りについた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ