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四 はじめて④

「あと、自分は”鏡”だっていうことは、わざわざ自分から言うことはないと思うからな。たいていのやつが、もう前世とは割り切って生きているやつらだろうし。それに、もうじき決着も付けるんだろ?」


 わたしはうなずいた。


「・・・俺も行こうか?」

「いえ、希湖と涼也と、多分柊吾も来てくれると思うので大丈夫です。さすがにそこまでご迷惑をかけられませんよ。」

「全然、頼ってもらった方が嬉しいけどな。今日みたいに。」

「新部長は面倒見がいいですもんね。」

「あー、まあ、部長という立場もあるが・・・。」


 そこで、ふともう一つ聞きたいことがあったのを思い出した。


「そういえば、新先輩は、進路はどうされるんですか?」

「ああ、演劇の専門学校に行くことにしてる。入りたい劇団もあって、そこのオーディションも受けるつもりだ。」

「すごいですね。やっぱり、小さい頃からの刷り込みの影響ですか?」

「まあ、それもあるよな。やっぱり、観るだけじゃなくて、自分が自分じゃない誰かになって、違う世界を体験するのが楽しいというのもあるけど。」

「楽しい、ですか・・・。いいなあ。わたし、まだそこまで没頭できそうなことがないんです。だから、進路でも悩んでしまって。」

「じゃあ、趣味探しに演劇見に行くか?来月なんだが、多分まだチケットあるぞ。」

「あ、行ってみたいです。」

「そしたら、チケットとれたら連絡するな。」

「ありがとうございます。」

「そういえば、この喫茶店カレーもあるけど、食べていくか?一応、メニュー渡すな。」

「そうですね・・・。」


 メニューを見ながら、先ほどの会話を思い返す。

 あれ?さっき、さらっと言ったけど、今度、一緒に、演劇を見に行くことになった?

 いや、でも、二人きりとは限らない。もしかしたらお父さんと一緒かも。それもそれで気まずい。他の部員も一緒?それならありそう。時々部活に招待券来てるみたいだし。一応確認しておこうかな。


「あの、新先輩。」


 新はメニューから顔をあげた。


「なんだ?」

「さっきの演劇を見に行く話ですけど、えっと、他の部員も一緒ですか?」

「いや、俺と優姫の二人・・・。」


 そこでまた新の耳に火が灯った。


「ごめ、あのな、そんな下心があったわけじゃなく、純粋に、優姫なら演劇はまるんじゃないかって、あ、ちょっと待って、まじか、このタイミングぁ、は、は」


 はっっっっっくしょん


 新は最大限身をかがめて音を抑えたけれど、それでも大きいものは大きいので、周りの席に一緒に軽く頭を下げる。

 わたしはまだ耳の赤い新を見て、くすくす笑いがとまらなくなってしまった。

 新は気まずそうに頭を掻いた。


「あー、そうだな、せっかくなら、他の部員とかにも声をかけるが・・・。」

「いえ、新先輩と二人がいいです。」


 自然と口から声が出ていた。近づくだけでドキドキしたり、会えるだけで嬉しいと思ったり、照れた顔が可愛いと感じたり、新といるとはじめての感情が溢れてくる。


 もっと一緒にいたい。


 わたしは、はじめて恋に落ちた。

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