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19話 勇者たちの記憶

お久しぶりですすみません何がとは言いませんが。

 現状、良助の対応力では2方面から常に放たれる高威力の攻撃をすべて受けることも躱すことも、不可能。四撃に一撃くらいは食らってしまう。が、その良助も俺と界人2人がかりで捌ききれないほどの攻撃を放っているため、防戦に専念すればすべての攻撃を無効化するのは難しくないはずだ。


「カッ、2対1でいまだ互角か」

「仕方がない、にしても【堕悪】の権能、相当厄介な」


 良助が煽るように呟くと、界人はご丁寧にも返答する。その隙に俺がうっかり攻撃を食らうも、魔の覚醒(イーヴィル)の能力で即座に回復する。繰り返す痛みに徐々に慣れていくにつれ、俺の動きが鈍かったのがどんどん改善される。


「上がってきたか――速度」


 呟く瞬間、良助の剣が自身の首の薄皮に食い込んだのを察知し、素早く飛び退く。良助は界人を無視し、俺の右腕に斬撃を食らわせ、断ち切る。これまで慣れてきた痛みよりもさらに強く、俺の精神を抉る。断ち切れた右腕が地面に転がり、赤い染みが広がるのを見ると、俺の体は思うように動かなくなる。バランス感覚の欠如もあるし、精神的なダメージもその要因だ。




 身体がうまく動かせるようになると、目の前には白髪で長い髭の生えた、ただ者でない魔力量の老爺が地面に錫杖を突き、自らの足で突っ立っている。


「お主もそろそろ権能に目覚めるかとは思っていたが、想像よりも早かったな」

「――ここは? あなたは? 権能って?」


 真っ白な空間。俺と老爺以外は全て取り繕ったような白で塗りたくられたようだ。


「そうだな、ここは権能を授けるための空間だ。おそらく精神世界――つまりは心の中なのだろう。私は時空の神クロノス。時空の精霊クロノスの……父のような存在だな。権能は、一部の選ばれたものに授けられる飛びぬけて強力な特殊能力、と言おうか」

「権能を授ける……。どうやって?」

「普段ならば試すのだが、あの状況でも闇に落ちなかったお主のことは信じてもよいだろう。託す」


 そう言うと、クロノスは俺に向かって手をかざした。俺の中から力と同時に、神器の覚醒時と同じように、その能力についての詳細な情報があふれだしてくる。神器の覚醒時と違う点は、中から湧き出す点だ。神器の覚醒時は外から情報が入ってくる感覚なのに、だ。


「では、5秒後に元の世界に戻す。備えよ」


 5秒という猶予を与えてくれるし、口調自体は偉そうではあるのだが随分と思いやりのある神様だ。死んだらこんな神様のところに逝きたい。


 俺は、元の世界に戻ると同時に、権能を発動させる。


 その権能は、【時間】の権能。その中にもいくらか能力はあるが――時間を戻す、巻き戻しの能力で、千切れ飛んだ右腕を治療する。吸収では非常に時間がかかり、効率が悪い。特に高速化する戦いの中で数十秒が持っていかれるのはその間で仕留められる可能性が非常に高いから論外だ。その点権能は、魔力消費は大きいが、魔力を吸収すればその問題は解決するし、時間も全くとらない。


 万全の状態で俺は、宣言する。


「逆転だ」


 次に【時間】の権能で発動させるのは、停止の能力。良助の動きを停止させ、処分は界人に任せる。


「魔よ、敵を封じろ」


 界人は何やら手を翳し、魔力を収束させると、良助を包み締め付けるように魔力を解放する。魔術かと思ったが、そうではないようだ。


「……これは?」

「封印術だ。とりあえず、君に状況の説明をしようか」


 まずはこの場にいる全員で協力して、端っこの方に騎士たちの遺体を集めて並べる。名前が分かる人たちは、学校から紙を取ってきて名前をメモして近くにおいておく。

「良助は。本当は悪い人間じゃない」


 界人はそう語り、良助の封印を解いた。


「さて、良助。頼みがある」

「またかよ? なんだ?」

「魔王討伐を手伝ってくれ」


 界人が良助にそう伝えると、良助は露骨に嫌そうな顔をして首を振った。


「嫌だ。俺に義父さんは殺せない」


 父さん? 良助は勇者である以上、日本人ではあると思うのだが。


「まだイヴに拘ってるのか……」

「お前もじゃないか。それにまだとか言っても感覚的にはまだ1か月経ってないんだから」

「言われてみればその通りだね」


 イヴ。響きからして女性だとは思うが、どういうことだ?


「ケジメをつけるって意味でも、悪くない提案だとは思ったんだけど……」

「それなりの理由がないとさすがになあ。目覚めたばっかりだし、もうちょっと感傷に浸らせてくれよ」

「だってよ勇。それなりの理由を用意しろ、ってよ」

「そこで俺に話が飛んでくるか? まあそうだな、探しとく」


 そういうと俺は、王宮の方へ向かう。


「どこ行くんだ?」

「ちょっと部屋を見てくる。心配だ」


 そう答え、俺は歩いてアリアの部屋へと向かう。ノックしても返事がないのでしばらく待つと、中から声が聞こえてきた。


「おい、扉の前にいる男。どっか行け邪魔だ」


 アリアの声ではなく、男の声。不審に思って一歩下がってクロノスを呼び出し、魔力を探知する。


 デストロほどとは言わないが、ブラッド以上には量のある魔力で、質も禍々しく人間のものではない。アリアの魔力が感じられないが、アリアは魔力自体ほとんどないようなので無視しても構わないだろう。


 俺はすかさず扉を開け、エクスカリバーを覚醒させ、男の目の前に接近したところで、俺は動きを止めた。男が無言で自らの持つ斧の刃をアリアの首に突き付けているのを見て。


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