20話 【神怒憤剣グラム】
ストックが切れたので最大半年くらい投稿が止まります。
「良助は。本当は悪い人間じゃない」
界人はそう語り、良助の封印を解いた。
「さて、良助。頼みがある」
「またかよ? なんだ?」
「魔王討伐を手伝ってくれ」
界人が良助にそう伝えると、良助は露骨に嫌そうな顔をして首を振った。
「嫌だ。俺に義父さんは殺せない」
父さん? 良助は勇者である以上、日本人ではあると思うのだが。
「まだイヴに拘ってるのか……」
「お前もじゃないか。それにまだとか言っても感覚的にはまだ1か月経ってないんだから」
「言われてみればその通りだね」
イヴ。響きからして女性だとは思うが、どういうことだ?
「ケジメをつけるって意味でも、悪くない提案だとは思ったんだけど……」
「それなりの理由がないとさすがになあ。目覚めたばっかりだし、もうちょっと感傷に浸らせてくれよ」
「だってよ勇。それなりの理由を用意しろ、ってよ」
「そこで俺に話が飛んでくるか? まあそうだな、探しとく」
そういうと俺は、王宮の方へ向かう。
「どこ行くんだ?」
「ちょっと部屋を見てくる。心配だ」
そう答え、俺は歩いてアリアの部屋へと向かう。ノックしても返事がないのでしばらく待つと、中から声が聞こえてきた。
「おい、扉の前にいる男。どっか行け邪魔だ」
アリアの声ではなく、男の声。不審に思って一歩下がってクロノスを呼び出し、魔力を探知する。
デストロほどとは言わないが、ブラッド以上には量のある魔力で、質も禍々しく人間のものではない。アリアの魔力が感じられないが、アリアは魔力自体ほとんどないようなので無視しても構わないだろう。
俺はすかさず扉を開け、エクスカリバーを覚醒させ、男の目の前に接近したところで、俺は動きを止めた。男が無言で自らの持つ斧の刃をアリアの首に突き付けているのを見て。
「その剣を捨てろ」
男の言葉を聞いてなどいない。
男が俺に気づき、斧でアリアの首を断つ、あるいは取り返しのつかない状況にするまで。その時間で、男をアリアからどかす方法はあるのか。
「勇さん……」
助けて、とも言わず。
私のことは気にしないで、とも言わない。
俺は、剣を放り投げる。
男は、斧を弾き飛ばされる。
俺は腕にアリアを抱え、斧をさらに蹴り飛ばし、後ろに下がる。
「やりやがったな。もう容赦はしない」
男はゆっくりと斧を拾い、俺は落ちていたアリアの剣を拾った。アリアに初めて会った時から思っていたが、これは多分俺に適性がある剣だ。
「【神怒憤剣グラム】」
頭が勝手に情報を入手する。
「《始まりの覚醒:グラム》」
即座に覚醒させる。
どうやらエクスカリバーの覚醒体を継承することはできないようだ。でも十分戦える。アリアは敗北したみたいだが、神器を覚醒させれば戦力はアリア以上。
「ほう、神器か」
先ほどの戦いで魔力を消費しており、もう権能には頼れない。覚醒を維持できるのも30秒が限界。
早速斬りかかり、切り刻む。王龍剣術でも発動しようものなら即座に魔力切れで敗北する。
斧とグラムが交差する。力と力というわけでもなく、相手側がうまく攻撃を受け流したり、その流れで反撃の機会を作り、着々とダメージを与えている。対する俺は食らうばかりで、斧とグラムを交えてはいるが攻撃が通っている様子はない。あっという間に30秒が経過し、魔力不足により覚醒が切れる。
剣で何とか受けるが、【剣聖覚醒】以外の身体強化を発動していないので戦力はアリア以下。大人しくアリアにグラムを投げ渡す。
「ええっ!? そこ私を守るところじゃ!?」
「俺じゃ無理。一緒にやらねえと負けて死亡だろ」
「2人で戦っても無理そうですが?」
「抵抗せずに死ぬのもなあ」
軽口を叩きながらも、正直グラムを覚醒させた俺よりもうまく立ち回り、いまだ無傷でいるアリア。その間に俺はエクスカリバーを拾い、覚醒させずに男を斬る。
これでも戦闘技術は上がっていることには上がっているのだ。
当然受け止められ、今度は俺が攻撃対象になり――目の前に影が割り込んだ。
「【堕悪】の権能はもう発動できねえ。期待通りの活躍はできないかもしれないが、勘弁しろ」
「もう覚悟は見たってよ。良助が【記憶】の権能で時を戻したはずだよ」
界人の発したその言葉の通り、俺の魔力が完全に回復し、傷もなくなっている。
「彼らは!?」
アリアが焦ったように言葉を発した瞬間、男に蹴り飛ばされたみたいでこちらに飛んでくる。俺は巻き込まれるように転び、アリアに言葉をかける。
「味方だ。でも安心するな、戦うぞ」
手に持ったエクスカリバーに大量の魔力を流し込み、覚醒させる。顕現するは、またも新形態。
「《共闘の覚醒:エクスカリバー》」
共闘相手のタイミングに合わせやすくするため。いつでも割り込んで守れるようにするため。威力は下がるが、剣が軽くなり速く動かせるようになった。
アリアが手に持った剣で男の攻撃を上手く受け流したのを見て、男に出来た隙を狙って攻撃を食らわせる。瞬間、膨大な魔力が周囲を飲み込んだ。
界人が権能を解放させたようだ。
気にせずに一撃一撃を当てる俺たちだが――与えるダメージが大幅に上がっているように思える。それに、受けるダメージも抑えられているようだ。
「【勝利】の権能。それはあらゆる勝利の確率が上がる――平たく言えば、能力強化」
続いて、権能が覚醒するような気配――空間。目の前に立ち並ぶは、時空の神と同じ時のように、神だ。




