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16話 交戦

お久しぶりです。

 圧倒的な光景。ラファエルさんがブラッドと斬り合っている。とはいえ当然受けに回りっきりで、押されている。


「救援を要請するのもわかるな……」


 俺は思わず口にする。彼は魔王軍のトップクラスだ。勝てないのも仕方がない。どうやって連絡したのかは気になるが。


「ラファエル殿下、加勢します!」


 そう言いながらリーゼロッテ先生は魔力弾を大量に解き放つ。


 ブラッドは自分の腕の辺りから赤い腕のようなものを生やし、魔力弾に対しての壁とした。


 その様子に、駆け寄っていた俺たち近接戦闘組は咄嗟に足を止める。が、赤い腕が魔力弾にあっさりと霧散させられたのを見ると、再び地面を蹴り足を動かす。


 最速でブラッドの元に到達したのはシルバさん。走り込んだ勢いでブラッドの攻撃を躱し、回避しながら突きを叩き込む。


 傍から見る限りでは、ブラッドの傷は浅い。シルバさんはそのままブラッドの傷を走り抜け、跳び上がる。同時にラファエルさんが下がり、後ろからやってきていたアリアと交代する。


 次に、道中でクロノスを呼び出し、エクスカリバーを覚醒させていた俺がそのままの勢いで背後から斬りかかる。同時に武術の先生、アリア、シルバさん、ドミニクの一撃がダメージを着実に与える。


 攻撃の後で体勢が崩れた武術の先生を、ブラッドが赤い腕で、アリアを、自らの爪で攻撃する。


 そこに一度下がっていたラファエルさんが爆炎の刃を翳してアリアの前に割り込み、俺の呼び出したクロノスが魔力探知を一度切って空間切断の能力を行使し、武術の先生に迫る赤い腕を空間事切断する。

 が、この一撃によって魔力を使い切ってしまった俺は戦線を離脱する。

 当然ブラッドが見逃すはずはなく、新たに4本の赤い腕を生やして俺を追撃するが、すべてシルバさんが受け、その威力を受け流す。




 かくして、俺は戦闘を聖騎士たちの本陣から見守りながら魔力の回復に専念せざるを得なくなった。そこで、ラファエルさんが連れてきていた聖騎士の一人が魔力回復用のポーションを渡してくれる。


 どうやら彼ら聖騎士は力不足で足手まといになりかねないので支援に徹しているということのようだ。


 魔力回復用ポーションを飲み、魔力の回復を促すが――時空の精霊クロノスを呼び出せるほどの魔力は回復しない。


 そして、ついにドミニクさんがブラッドの猛攻を防ぎきれず、吹き飛ばされてしまう。そこですかさず俺がドミニクさんの吹き飛ばされた先に向かい、聖騎士たちの本陣に連れ帰り治療してもらう。




 ドミニクさんが一人抜けた影響により、離脱するものが現れるわけではないが段々とこちら側が押されていく。ついにはブラッドの行動を封じ込み切れなくなりリーゼロッテ先生の魔術攻撃すらも当たらなくなる。


 そこで、魔力を持て余したリーゼロッテ先生が聖騎士たちの本陣まで退避してくる。


「勇者様、私の魔力の使い道がなくなってしまったのですが、必要でしょうか?」

「先生。よろしくお願いします」


 魔術の教科書に於いては確か、他者への魔力の譲渡は非常に燃費が悪いと書いてあったのだが、俺はエクスカリバーを覚醒させ、クロノスを呼び出した上で10分程度なら戦闘できるほどの量の魔力を得ることができた。


「では行ってきます」


 俺がブラッドの元に辿り着き、王龍剣術と覚醒エクスカリバーの力を使い奮戦する。だが勝利までは持ち込めない。ブラッドが消耗している様子もなし。そうして、俺がとどめを刺されかける瞬間――竜が咆哮した。


 比喩ではない。ブラッドの背後で黒光りする鱗に包まれ、巨大な体躯をした竜が咆哮し、ブラッドに向けて光波を放った。ブラッドはその攻撃を赤い腕だけで防げるものではないと判断したのか、俺に向けていた攻撃の手を緩め、代わりに自分への守りの手を打つ。


「竜――!?」


 誰だろうか、いや、全員だったかもしれない。誰かが驚愕の声を上げる。


 竜。種族的に見るのであれば、間違いなくトップクラスの戦力を持つ生物。ブラッドであれば、一般的な竜であればさほど苦戦しないのだろうが――ここに現れたのは間違いなく上位種。


「魔王軍ども! これまで、よくも我らが里を苦しめてくれたな!」


 皆が驚いている状況下、さらに驚くべきことが発生する。なんと、竜が喋り出したのだ。


「里――ほう、竜人か」


 ブラッドはふと思い当たったかのように告げる。元の世界にいたころでは稀に聞く言葉ではあったが、この世界に於いては竜人の存在は認識されていなかったらしく、周囲の人々はさらにくっきりと驚愕を顔に張り付ける。


「よいだろう。魔王軍四天王が一角、この【不死のブラッド】が相手してやろうではないか」

「我はリドラ。竜人の族長を継ぐ者。そして、我々にとって害になるだろう相手は、どんな手段を用いてでも殺す」


 互いに名乗りを上げるタイミングで、リドラさんが人の姿となる。竜と人との使い分け、それがまさに竜人たる所以。


 リドラは腰に差した剣を引き抜く。綺麗な漆黒の刃が煌めく。


「それは……聖剣の極致。神剣か」

「然様。名を、竜装神剣ドラゴニック」


 試合なんて小綺麗なものではない。もっと薄汚れた、昏い闇を体現するような戦い、殺し合い。死合が幕を開けた。

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