13話 商国戦争
諒哉の話を聞き終えた俺は、自身の境遇を嬉しく思った。それと同時に、もっと強くならなければ、という使命感も抱いた。
そうして喋っている間に、アリアと陽菜の戦いが終わった。結果はアリアの勝利。勇者ではないとはいえ、陽菜もかなり鍛えていたようだが、神国でもトップクラスのアリアには敵わなかったようだ。
次は俺が陽菜と戦う番だ――
あれから俺とアリアの両方がクラスの全員と戦い終わった。陽菜との戦いにはかなり苦戦したものの何とか勝利し、他のクラスメイトも時々苦戦しつつも全員に勝利した。アリアは涼しい顔で全員を倒していたが。
これで初日が終わりを迎え、神国組の俺とアリア、そして勇者として城に招かれているらしい諒哉と陽菜は商国の城へと帰った。
一緒に帰ったとはいえ、部屋はまあまあ遠かったので途中で別れることになる。
「アリアから見たら、皆の実力はどうだったんだ?」
「神国の養成学校と同等、あるいはそれ以上の実力でしたね……。戦争をするとしたら、ヴィルラギア帝国も加わってくる以上厳しいんではないでしょうか」
王女というか、国の上の方の人らしく戦力の見積もりをしているが、そういう意味で訊いた訳ではない。だが、戦争をするとしたら恐らく俺も加わることになるので他人事ではないのが微妙に違うといいづらいところだ。
そしてアリアと同じ部屋に戻り、就寝の準備をする。今から寝るという訳でもないが、首都で食事をしてから帰ってきたらすぐ寝たい。
俺たち2人が食事をしていると、突然外が騒がしくなる。気になったので外に出て確認した結果、魔王軍たちが首都まで侵入してきて、商国騎士団が戦っているとのことだ。
俺とアリアは幸い防具を必要としないため、腰に携えた各々の剣を抜き、目前にまで迫っている魔王軍の末端兵に斬りかかる。
あっと言う間に数十の末端兵を斬り倒すと、このグループの長と思われるオーガとの戦いが始まる。素のスペックは第5領域のボスに遠く及ばないが、技量で言えば圧倒している。
技量は高いとはいえスペックの低さが仇となり俺は一撃で斬り殺し、ついでに後ろに何十と来ていた一般兵もまとめて斬り倒す。凄まじい速さで、魔力で伸ばした刀身を振るう範囲攻撃である【王龍域】の力だ。
アリアも同等の実力を持つ下位吸血鬼を倒したようで、俺よりもさらに多く一般兵を殺している。ここは魔王軍が攻めてきた北西門に近いとはいえ、ここまでこの数が侵入されるということで商国兵は割と無能なのかもしれない。
そこで、より高い実力を持つ、悪魔族の男が現れた。
先ほどの兵が無能というのは取り消そう、コイツが規格外なだけかもしれない。戦闘力で明らかに俺を、延いてはアリアすらも凌駕している。四天王とは言わないが、魔王軍の上位10人程度には入っていてもおかしくない。
「勇者と神国の王女か。ここで討ち取れば魔王軍はかなり有利に傾くな。おい左崎」
と、悪魔族の男が一般兵に向けて呼びかける。一般兵の名前を覚えているとは大した記憶力だが、何か特別なことでもあったのだろうか。
「は、はい!」
「ブラッド様を呼んで来い。勇者と神国の王女を討ち取るチャンスです、と」
すると、左崎と呼ばれた一般兵は俺とアリアの斬撃が届かない、悪魔族の男の背後を通り神速で逃げ出した。
「さて、勇者。神国の王女。戦いを始めようじゃないか」
突然のピンチ。合図などの取り決めが一切ない以上、仲間の助けは期待できない。勝てる可能性の方が低い。
「王龍剣術【王龍牙】」
最初に一撃を繰り出したのはアリア。
「光の矢」
俺は最近覚えたての光魔術、光の矢に超多量の魔力を込めて悪魔の頭を狙うように放つ。アリアが低い位置に斬りかかったので、両方を防ぐのは難しいはず。
「王龍剣術【王龍突】」
アリアは肉に食い込んだ剣を即座に抜き、王龍剣術で技の発生が最速である【王龍突】を発動させる。
アリアが正面から突くことを予測し、あらかじめ後ろに回っておいた俺は【王龍斬】を発動させ、2方面から同時に斬りかかる。
俺は自分のエクスカリバーを振り抜き――振り抜けずに剣に引き込まれる。思い切り体勢を崩した俺に向け、悪魔の闇魔術が打ち込まれる。
気が付くと、足元には陽菜と諒哉の死体があった。衝撃で足を折って跪いてしまった俺に、どこからともなく飛んできた無数の剣が突き刺さりかける。そこにアリアが割り込み、剣が刺されたまま俺の腕に倒れ込む。
俺の心は硝子細工よりも儚く砕けた。
アリアが悪魔に押されながら、何とか耐えている。防戦一方でボロボロになっている。俺はそれを無心に眺めることしかしない。
そこで、一度砕けた心が立て直す。
先ほどの光景、恐らく闇魔術によって見せられた白昼夢のようなものなのだろう。ショックを与え、しばらくの間戦闘を不能にするための魔術。
俺は落としていたエクスカリバーを手に取る。それと同時に、アリアが遠くに吹き飛ばされ、さっき食事をしていた店の壁にぶつかり、頭から血を流して力なく横たわる。
無意識に、エクスカリバーを握る俺の右手に力と魔力が籠る。
上がったレベルにより増えた魔力が大量に注ぎ込まれ、エクスカリバーが変質する。
それは、神によって齎された、神の扱う武具、神器。
俺の頭の中に、エクスカリバーを神器からさらに覚醒させる言葉が思い浮かぶ。
「神によって授けられし剣よ、全てを越え、煌めく力を俺に貸せ」
周りから見たらどう見ても厨二病。というか、自身でも厨二病だと分かるが、初回の覚醒には必要な言葉だ。
「【神越煌剣エクスカリバー】:始まりの覚醒エクスカリバー」
俺は神器を覚醒させ、悪魔に斬りかかる。悪魔は鎌を取り出し応戦するが、エクスカリバーによって強化された俺の身体能力が無理矢理斬りかかることを可能にさせる。
「始まりの覚醒では特殊能力は使えないけど、それでもお前くらいなら倒せる」
勝負にならない剣戟、という訳でもない。悪魔も俺に攻撃を加えているし、俺が悪魔に与えているダメージも大きなものではない。
だが、俄然俺が有利。エクスカリバーによって押し上げられたスペックには、いくら魔王軍のトップ10とは言えども不利な戦いを強いられる。エクスカリバーの覚醒はそれほどまでに強力。
そして、俺の一撃がついに悪魔に致命傷レベルの損傷を与える。
「俺の勝ちだ――【極彩色の王龍】【王龍斬】」




