第17話~夏休みで何が悪いっ!?~
終業式――― 現在、修たちは体育館にいる。体育館はたくさんの生徒で埋め尽くされていてかなりの熱気だ。暑さに加えて外から聞こえてくる蝉の鳴き声が耳に響く。
「えー それでは皆さん休みの間も勉学を怠らず、有意義な夏休みにしましょう」
四十台とは思えないほどの若さの男性、学園長が最後に締めくくり、壇上を去っていくと体育館の中が少しざわついた。
「うはぁ、長かった」
修はシャツをパタパタさせながらもう一方の手で後ろに手をついた。周りを見渡すとほとんどの生徒が暑さにやられてだるそうにしていた。
教師の指示を待っていると、三年の生徒から順番に出て行くようアナウンスが流れ、体育館の暑苦しい空気は少しずつましになっていった。
教室に戻った後は、担任の話を聞いて終わりである。それぞれ部活動のある者は残って、それ以外の生徒はほとんど帰宅だ。もちろん修は帰宅である。
まだまだ蒸し暑さの残る体育館を後にして修はクラスメートと共に教室へと戻った。
「修よ、夏休みの予定はどうなっている」
教室に入って席に着くなりメガネの生徒――― 坂口勇輝がたずねてきた。すると周りに拓人や龍斗もやってきた。
「特には決めてないな」
修がつまらなさそうに返事すると、勇輝はメガネに手をかけ、フッと笑った。
「なら、やらないか?」
「「何て事言いやがる!」」
修と拓人が同時につっこむ。
「オタク界では一般的なジョークだぞ。なぁ龍斗」
「そうだべ、そうだべ」
いきなりのフリにも対応する龍斗。ただの天然だが、それなりに役立つことはあるらしい。
「お前はキャラと口調を定めろ」
修がうんざりした感じで龍斗に目をやる。
「オーノー!ワタシニホンゴ、ワカリマセン!」
「殺」
「じょ、ジョークだよう!」
修が拳に力を入れたため、それに反応した龍斗が瞬時に元に戻った。
「まぁ無駄話はこれくらいにして」
「「「自分から言っておいて無駄話にしやがった!」」」
今度は三人同時に驚いた。
「夏休みのことなんだが、8月のはじめにキャンプに行こうと思う」
「キャンプ?」
拓人が聞き返すと勇輝が、そうだ、と言って話を進めた。
「俺の別荘を使って二泊三日だ。ちなみに海が近いから海水浴も出来る」
「そういえばお前の家、金持ちだったな……」
特に予定も無いのでキャンプに行くのはかまわない。
「まぁどうせ暇だし行くか」
修が二人の方を向くと、拓人と龍斗も頷いてキャンプに行くことになった。
「決まりだな」
勇輝がもう一度メガネに手をやるとフッと笑っていた。
★☆★☆★
「んじゃ今学期のホームルームは終わりだー 夏休みだからってやらかすなよー」
担任の小高先生がホームルームの終わりを告げると出席簿をもって教室からゆったりした足取りで出て行った。
「っしゃ修! 今日はこのままゲーセンにでも行こうジャマイカ!」
修が帰る準備をしていると、ふざけた感じで龍斗が声をかけてきた。
「めんどくさい」
「即答かYO!?」
修は真顔でそう答えた。
「お前とゲーセン行っても俺に金を使わせるだけだからな」
「そこを何とかさ~」
「マジできもいからやめろ」
わざとらしく目を潤ませながら修に抱きついて胸に頬擦りをする龍斗。修にはBLの趣味はないのでこんなことをされてもただ気持ち悪いだけだ。
修が引き離そうと格闘しているとき、教室のドアの開く音がして生徒たちが、ざわつき始めた。修はこの騒ぎにまだ気付いていなかった。
夏休み前日のためか、放課後や夏休みの予定について話している生徒たちが教室にはまだ残っている。そのせいで騒ぎは大きくなっていった。
「神谷君はいるかい?」
その発言でクラスの視線が、今も格闘している修へと向けられた。
透き通るような凛とした声の主は黒髪ロングヘアーの如月美希である。
修は彼女に名前を呼ばれたおかげで事の重大さを思い知った。
「副会長か。どうしたんだ?」
先に返事をしたのは勇輝だ。生徒会の関係でよく顔合わせするのだろう。
「副会長はやめてくれと言っているだろう。今は―――っと、それより神谷君はいるかな?」
「あそこで放心状態になってる奴だ」
勇輝が指差した方向にはまさに石のように固まっている修がいた。
(なんでこんな時にきやがる! しかも名前まで言いやがって何のようだ?)
夏休みに入る前から嫌な予感がするのであった。
めっさ期間があいてしまった泣




