第16話~フラグを立てて何が悪いっ!~
週明けの月曜日、どうしても月曜日は皆だるい気分で授業を受けている。周りを見渡しても勉強に身が入っていない人たちが大勢いる。週明けの月曜日などこんなものだ。
勉強に身が入っていない生徒たちに対して教科担任の先生たちも「月曜日だからしんどいだろうけど頑張りましょう」と言うくらいなのだから、先生たちにとっても憂鬱な日なのだろう。
「さぁて、メシだメシ!」
四時間目が終了すると同時に生徒たちは濁流のような勢いで教室から出て行った。購買の争奪戦に勝つには時間との勝負で五分も遅れていくと残っているのは、味噌クリームパンやおでんパンといったどれも胃に悪そうな物ばかりだ。
修はわざわざ購買に行って無駄な争いごとはせずに食堂で適当に食べようと思っていた。
「おーい今日はお前も食堂か?」
ちょうど食堂に向かおうかと思っていた所に勇輝、拓人、龍斗の三人が修の席にやってきた。どうやら三人も食堂らしい。
「そうだ。じゃ食堂に行くか」
修が頷きながらそう言うと勇輝たち三人は了解、と答えてそのまま食堂に行くことになった
……のだが、教室の入り口付近まで来たところでその目的もなくなった。
ガラッ!
勢いよくドアが開いたかと思うとその目の前に頬を少し紅潮させた七海が現れた。よく見ると少し息遣いも荒い。勢いよくドアを開けたせいか、教室に残っていたクラスメートの視線が皆、教室の前の入り口に向けられた。
「お、おい夏川さんだ!」
「今日も可愛いなぁ」
「ホントに!」
男子達はいつものように七海の姿に見とれている。ただ修……いや、修たちだけは嫌な予感しかしない。
と、ここで教室の入り口で深呼吸をしている七海をよそに修たち四人の中で脳内コミュニケーションが始まる。
(修、お前またなにかやらかしたのか?)
(またってなんだ……いやでも心当たりはこれっぽっちも無い)
(とはいえ修はよくやらかすもんなぁ)
(拓人、お前にだけは言われたくないぞ)
(なんだとっ)
(それより~ 俺、腹が減ったね!)
(……それより勇輝と拓人あれはどう思う?)
(俺のことはガン無視!?)
(んーああなっているのは少なからずお前のせいでもあるんじゃないのか?)
ほら、と指をさしながら修に促す。するといつの間のにか七海がすぐ近くまで来ていて勇輝以外の三人は少し驚いた。
「……修」
「な、なんだ?」
いきなり名前を、しかも低いトーン(本当は声がこもっているからだが)でかけられたので声が少し高くなってしまった。
そんなやり取りを見ていたクラスメートたちは「神谷君また七海ちゃんに何かしたの……?」「まぁ神谷君だもんねー」と口々に言っている。男子にいたっては殺意の視線で修のことを見ている。
(また俺の普通の生活がっ)
今にも教室から飛び出したいと言う気分を抑えながら七海の様子を伺う。後ろの三人もこれからどうなるのかと思いながら修を見ていた。
「い、今からその……わたっ私と、いい一緒に来なさい!」
「え、それってどういう―――」
ことだ、と言おうとしたのだが顔を真っ赤にした七海に強引に腕をつかまれてそのまま教室から連行されてしまった。しかもものすごいスピードで。
勇輝たち三人はもちろんクラスメートたちもぽかんとしていた。ただ、勇輝だけは何か察したようで、ふっ、と笑っていた。
「あれはどうなってるんだ」
「まぁまぁ拓人よ、修の事は放っておいて俺たちは俺たちで食べようじゃないか。龍斗もああなっている事だし」
目線の方向には先程無視されたせいかそれとも空腹のためか、しゃがんでため息をつく龍斗の姿があった。
「そうだなー まぁ修だしな大丈夫かな。よしならさっさと食堂いくぞ」
そういいながら拓人が龍斗の頭をはたいた。こうして三人は食堂へと向かった。
一方修の方はと言うと
「おい七海! どこに連れて行くつもりだ!」
尚も引っ張られていると言うよりも引きずられている修。廊下で生徒とすれ違うたびに痛いほどの視線が修に突き刺さっていた。
「いいからついて来なさいっ」
「……着いて行くと言うより一方的に引きずり回されているんだけどな」
「なにか言った?」
「い、いえ何も」
修の腕をつかむ手に力がこめられたのでとりあえずそう言っておいた。それが一番の選択だ。そんな修の言葉を聞いて七海が小さくため息をついた。
「ったく……修が食べたいなんていうから……」
ボソボソと独り言のように言っていたが、ため息をついていた修には当然聞こえていない。
それから程なくして目的の場所らしき所に着いた。重い鉄の扉を開けその向こうに広がるのは見晴らしのいい場所だ。
「屋上? まぁ来る途中で薄々気付いてはいたけども……なんでだ?」
修の問いかけに女の子らしく咳払いをしてから二つの弁当箱を取り出した。
「あ、アンタが食べたいって言ってたでしょ? だから作ってきてやったのよっ!」
「お前、覚えていたのか」
「なんで言った本人が覚えてないのよ」
呆れた声で七海が言った。
「ははは、まぁ、でもそうかさんきゅな!」
「ふ、ふん!」
弁当の中身は色鮮やかで、修の方は大きめの弁当だった。もちろん味付けも良くて修はかなり満足した様子で昼食を終えた。
こうして今日の修の昼休みは終えたのであった。




