第12話~六人組~
(ん?)
三人並んで歩いていたとき前からガラの悪い六人の高校生たちがこちらに向かってきた。気付いたのは修だけで隣の二人は気付く様子も無く、何か話している。
(あいつら昨日の……)
六人組の内の三人は昨日百合奈を助ける為に倒した奴ら(外見はそこまで覚えていなかったが)だった。
楽しく話している二人をよそに、修は少し嫌な予感をしながらも顔を横に沈めた。
だんだん距離は縮まって行き、目の前に迫った所で向こうから通せんぼするかのように修達三人を止めた。
「よぉ、昨日はよくもぶん殴ってくれたな!」
「おい! お前らこんな奴にやられたのかよっ」
「うるせー! 昨日は油断してただけだ」
(はぁ、やっぱりか)
正直一人なら無視してでも帰ったのだが、今の状況ではそれも無理だとすぐに悟った。
「あ、あなた達は昨日のっ!?」
「そうなの百合奈?」
百合奈も昨日の奴らだと分かったようで六人組を睨みつけた。駅まではすぐそこなのだが、この状況をどうにかしなければならない。
その上、修の学校の奴らに会いたくないという考えで、ショッピングモールの裏口から出ていただけに、人の気配がまったく無い。普通の人ならばそのまま袋叩きにされてしまうのも時間の問題だろう。
そう、普通の人ならば……。
「昨日の可愛い子じゃん」
「隣の子も結構いけるぜ?」
「なんなのあんた達は!」
不良たちは百合奈と美希を品定めするかのようにジロジロと見回した後、今度は修の方に向いた。
「この女の前に先にお前に礼をしとかなくちゃなぁ」
握り拳を作りながら修に矛先を向ける。今にも飛び掛りそうな勢いだ。
「しょうがない、少し下がっててくれ」
ため息混じりに修は二人にジェスチャーをしながら向こうへ行くように促した。下手に人質や巻き添えを喰らうといけないと思ったからだ。
「何を言っているんだ君は!? いくら神谷君でもこの人数じゃ……」
美希の言うことをまったく聞き入れようともせず六人相手に無防備で立ち合っている。見ている二人としては不安でいっぱいだ。
「いい度胸じゃねーか!」
その瞬間前にいた二人が修に襲い掛かった。そこらの高校生ならまずやられているだろう。ましてやこの人数、あまりにも不利だ。
が、さっきも言ったように普通なら、の話だ。
修に拳が当たる直前、それは一瞬の出来事だった。殴りかかって来た男二人は修の左右に倒されていて苦しそうに腹を押さえている。
単に二人の鳩尾にパンチと蹴りを入れただけなのだが、本人以外の者にはどうなったかまったく分かっていない。
「い、今どうなったの?」
「……」
百合奈と美希は驚く、というよりも呆気にとられていた。見た目は普通、成績も普通、そんな少年が今目の前で不良を倒したことに。
「くっ!?」
「この人数だ! 袋にしちまえばっ」
その光景に後の四人は動揺しつつも、四人同時で修に向かっていった。もちろんこの時点で不良たちは修に負けるなどこれっぽっちも思ってはいなかった。こんな普通の奴に負けるはずはない、と。
しかし、それは見事に覆された。不良たちは修に一撃も当てることなく、全員がやられてしまった。
修の見事な体捌きと的確に相手の急所を捉えた攻撃は、喧嘩慣れしている程度の不良にとって敵わなかった。それほどまで修は強かった。
「もう俺らの目の前に現れるなよ」
倒れている六人組にその言葉を吐き捨てるように言うと、小さくため息をついた。
終始その様子を見ていた百合奈と美希はしばらくの間、言葉が出なかった。
百合奈は隣にいる美希が気になったので少しそちらの方へ向くと、視線に気付いたのか美希も百合奈の方を向いて目が合った。
「あれが普通普通って言ってる男子に見える百合奈?」
「……見えないよね」
二人は苦笑いしながら修の所に歩み寄っていった。
「いやー さっき聞いていたのよりもすごかったね。まさか六人組をあっさり瞬殺するとは」
感心したように可愛くウインクする美希。確かに可愛いのだが美希がやると裏がありそうで怖いものだ。
「また助けてもらっちゃったね。ありがとう」
百合奈がその抜群の容姿を生かした笑顔で修の前に現れる。
「(こりゃ、学年中の男子が言い寄るのも無理は無いな……) ああ、ってか今回は俺のことが目当てだったみたいだからな」
「それにしてもあんなに強いのによく目立ってこなかったね」
美希が不思議そうに疑問を投げかけてくる。
「まぁ、今までは絡まれても逃げるか、よっぽどのことが無い限り喧嘩はしなかったからな。こんなに絡まれるのは俺としてはごめんだ」
その返答を聞いて何か言おうとしたが美希はやれやれ、と言った感じで首を横に振った。その様子を横目で見て修はふんっと鼻を鳴らした。
「あー それにしても今日は疲れた。もう帰る!」
修は背伸びをしながら歩き出し、愚痴をこぼした。そしてその隣で百合奈がやさしく微笑んでいた。




