第11話~これが普通?~
「「我流?」」
美少女二人がそろって首を傾げた。
「ああ、って言っても俺が死んだ親父に教わっただけだ。俺の親父、かなり喧嘩が強くてなこのへんじゃ敵無しだったらしい」
「そ、そうなんだ(お父さん、亡くなってたんだ……)」
何事も無いかのようにサラサラと話す修を見て百合奈はどこか悲しくなった。それと同時に彼はなんて強い人間だろうと思った。
「ふ~んなるほどねぇ。でもなんでそんなこと教わったんだい?」
「……普通を得る為だな」
「へ?」
修は少し迷った後素直に思っていたことを相手に伝わるようにそう答えたのだが、二人にはまったく意味が分からない。
「いや、まったく意味が分からないんだけど?」
「って言われてもなぁ……とりあえず俺は普通の生活がしたいんだ」
半ば無茶苦茶な言い分だが修にとってはこれも願望である。
「え、でもそれと何か関係があるの?」
今度は百合奈が難しい顔をしながら修に質問した。
「えっとだな、もし壮大な願望があったらそれを叶える為には何が必要だと思う?」
「う~ん、お金とかかな」
「あと、権力なんかも必要だね」
百合奈と美希が顔を見合わせながら交互に答えた。
「んー まぁ当たってると言えば当たってるかな」
修は頭を掻きながら答えた。正直こんなことは修自身、誰にも話さないことである。
「要は力だよ。俺は普通を手に入れる為にまずは力が必要だと思ってな、ほら何事も力が物を言うだろ?」
修は当たり前かのように話した。当然これを聞いた二人の反応は言わずとも分かるだろう。
「もしかして神谷君は普通がほしかったから力をつけた、と?」
「ああ、その通りだ」
修のその返答を聞いた美希はガクッとなった。当然のことである。
「でも神谷君、君の行動はすでに普通じゃないと思うんだけど……」
その通りだ。普通ならば助ける為とはいえ不良にわざわざ一人で立ち向かったり、尚且つ瞬殺したりはしないだろう。だが、修の考えは違っていた。
「いや、どこがだよ。別に困っている奴がいたら助けるのが普通じゃないのか?」
真顔で話す修に美希は苦笑いを浮かべた。
「確かにそれは良い事だけど世間から見れば普通じゃないよ君の行動は。せめて警備員の人に言うとかだね」
「うん、私も助けてもらえると思ってなかったな」
二人そろってコクコクと頷く。そんな二人を見て修は今まで自分がしてきたことは普通じゃなかったのか、と頭を抱えて唸っていた。
(俺の今までの行動はそんなにもおかしかったのかっ……)
「んー まぁでもあたしの可愛い可愛い親友を守ってくれたのには違いないしねぇ。礼は言っておくよ、ありがとうね」
「か、可愛いってなんなのっ」
美希は可愛らしくウィンクしながら修にお礼を言った。そんな美希に百合奈は顔を少し赤くして反論していた。
「いや、普通に可愛いと思うぞ」
「っ!?」
修がボソッと素直な感想を述べると百合奈の顔はさらに赤くなり、声とは思えない声を出した後に下に俯いてしまった。
どうやら修の言葉は今の百合奈にとって顔を赤くするのには十分なものだったようだ。
「あー 神谷君、さっきも言ったけどそれは誤解を招くからね」
「ん?」
呆れ顔で百合奈の方を指さしてそう言った。察しの通り鈍感な修には分かるはずも無いことだ。
特に話は進むことも無く、いつの間にか日常的な会話になっていた。そうしてそろそろ時間も遅くなり帰る事にしたのだが、方向が一緒ということもあって一緒に帰る事になった。
ショッピングモールを出てすぐの所、駅へ向かう途中である。
「まぁ神谷君と会った事は学校で言いふらしたりしないから安心して」
「私も言わないからね」
「ああ、そうしてもらえると助かる」
修は二人に今日のことは誰にも言わないように、と約束をした。
(俺って……だんだん普通とかけ離れてきてないか?)
若干引っかかりそうになりながらもそう思った時にはもう遅かった。
そしてもう一方では、
「……あいつだ!」
修たち三人を見る数人の人影がいた。




