↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺、第1王子なのにモブだった。だから「言葉」で勝つことにした  作者: チュチュ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
28/28

エピローグ


数年後。


朝の光が、寝室の窓から差し込んでいた。


ユリアンは、机に向かい、今日の演説の原稿を、最後まで読み終えたところだった。国王として立ってから、もう何度目になるか分からない、恒例の演説だった。


「どうだ?」


原稿を差し出すと、隣に立つレオンは、それを一通り読み、少し眉を寄せた。


「長いです」


「そこ?」


思わず、聞き返した。もっと、内容について何か言われるかと思っていた。


「あと、格好をつけすぎです。ここの、"我々が共に歩む道を"のくだりとか」


「……悪いか」


「国王にもう少し、敬意はないのか」


そう返すと、レオンは、涼しい顔で言い返した。


「敬意があるからこそ、正直に申し上げているのです」


軽口を交わしながら、ユリアンは、小さく笑った。何年経っても、この男の遠慮のなさは、変わらない。


かつて、命令にすら背いたあの男が、今は、隣で、当たり前のように、原稿に目を通してくれている。その事実が、ユリアンにとっては、何よりの安心だった。


「じゃあ、少し削るか」


「そうしてください。演説は、長ければいいというものでは、ありません」


「分かってる。お前に、一番、教わったことだ」


原稿に手を入れ終えると、ユリアンは、身支度を整えた。窓の外には、王城前広場に集まり始めた人々の姿が、小さく見えていた。


扉に手をかけたところで、ユリアンは、一度、足を止めた。


振り返ると、レオンが、いつものように、静かな目で、こちらを見ていた。


「レオン」


「はい」


「見てて、くれ」


かつて、鍛錬場で、不安を抱えたまま告げた言葉と、同じ言葉だった。だが、その響きは、あの頃とは、まるで違っていた。


あの日は、縋るような願いだった。


今は――ただ、隣にいてくれる人への、当たり前の言葉だった。


レオンは、しばらく、ユリアンを見つめたあと、静かに、微笑んだ。


「ええ。ずっと」


その一言を背に、ユリアンは、扉を開けた。


朝の光が、まっすぐに、二人を照らしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。