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一人の二人

「決まったらしいぞ。こないだの中学生による父親殺害事件、犯人の処遇」


署の非常階段で肩身狭くタバコを吸っていた村井に、同じくタバコを吸いに来た同僚の田島が声をかけた。


「こないだの双子……? あ、母親が息子二人に父親を殺させたってやつか」

「そう。妊娠が判明したと同時に捨てられた女が、十数年を経て、子どもを使って復讐した、あれだ」


チラ見した感じ、子どもたちもけっこう陰鬱だったよな、でもやっぱ自供したのか、などと思いながら村井がタバコを口に持っていったら、田島がさらに言葉を続ける。


「とりあえず片方を名前があるってことにして、諸々手続き進めるってよ」

「『名前があるってことにする』?」

「二人で一人。片割れがやったことは自分がやったこと。すべてを二人で共有する」

「?」


思わず村井のタバコの灰が落ちそうになる。



父親だという男を二人で殺した。

双子二人の言っていることに矛盾も食い違いもない。というか、二人とも供述がまったく同じなのである。

しかし鑑識の結果、直接の死因は紛れもなく一人の人間の手によるもの。

それなのに、二人の人間が、自分がやったと主張する。



「何言ってんだかよく分からんが、母親の話をつなげてみると、どうも二人をそういうふうに育てたらしくてな。そもそも、出生届からして一人分だけだったそうだ」

「え、それって……」


田島は自分の携帯灰皿を差し出しながら、これまでに判明した母子三人の生活をかいつまんで話し始めた。




母親は双子の息子に、ひとつの同じ名前を付けた。

外に出るときや、家に来た親戚に会わせるときなどは、必ずどちらか片方。

もちろん、三人そろって外に出ることはなかった。

学校も交代で通わせ、学校での出来事は必ず二人で共有させた。

片方が風邪を引けば、もう片方も決して外に出さない。片方がケガをして包帯を巻けば、もう片方にも包帯を巻いた。

ペンの持ち方や筆跡、食べ方の癖、ちょっとした無意識の仕草なども、小さいころから徹底的に二人同じにさせた。

片割れのやったことは自分もやったこととする。幼いころからそう教育した。

すべては、身ごもった子が双子だと知ったときから始められた。

片方が犯行に及んでいる間にもう片方がアリバイを作れる。

二人の人間によって一人の人間を形成させる――かつて愛した男に復讐するための、まさに執念である。

ただ誤算だったのは、綿密な計画のはずが、あっという間に警察が家にやってきたことか。双子の片方を隠す時間もなかった。




夕陽が当たる非常階段に二人の刑事の影が落ちる。

その影に沈黙が落ちる。

その沈黙を、田島が破った。


「とりあえず名前があれば身元の確認もできるし、その後の手続きも進めやすい。上の判断だ」

「でも、それだとどっちにしたって、片方は絶対に……」



名前があってもなくても、双子のこれからの人生には、似たような影が落ちている。

(イメージとしては「相棒」。外でタバコ吸ってるけど)

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