↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/24

5/11(火)『奇人の夜散歩』

 昨日の今日でスイミーの取り巻きが三人も増えた。

 気に食わない事に青葉の彼氏までもやって来てしまった。

 それはちょっと失敗だったなとは思ったが、それはそれで仕方ない。

 それでも彼女に関わりを持てる人間が増えたのはそれはそれで良い事だ。

 彼女自身が今、置かれている現状を打破出来たのなら、俺の気持ちの平穏が戻ってきたのと同義だ。

 俺は気持ち良く、学校生活を送りたい。何事もなく、平穏に。だけれども、俺にはアイツがいる。アイツと契約してしまった今、それは無理な話なんじゃなかろうか?

 「斎藤、ちょっといいか」

 ホームルームが終わり、さっさと帰ってしまうおうと自分の席を立ったその直後だった。

 神宮寺に声を掛けられた。

 「あ?」

 「...そう凄むなよ」

 凄んでない。そう言ったとしても信じてもらえそうにないので諦めておく。

 「で、俺に何か用事か?」

 「まぁ......、そうなんだけど」

 「まさか、鬼の話でもするんじゃないだろうな」

 「......そのまさかだ

 もしかして、お前も鎖穴神社に行ったのか?

 じゃあ、あの侍に会ったんだよな」

 「まぁ...な。何一つ、教えてはもらえなかったけどな...

 ああ、そうだ。一つ忠告しておく

 鬼に出会したのなら、まともに戦うな。死にたくなければ、相手に本気で勝とうと思わない事だな

 気を抜けば確実に殺される」

 「......会ったのか?」

 「...相手は本気じゃなかった。だけど、アイツじゃ手も足も出なかった

 何もしてやれなかった

 詳しい話がしたいのなら、場所を変えろ。じゃないと周りから変な目で見られる」

 「そうだな...」

 そう言う訳で俺達は人が誰もいそうじゃない屋上へと移動した。

 「そっちが斎藤の」

 「あぁ」

 互いにこの場に悪魔(メイド)が顕現している。

 別に俺は偲を呼んだ訳じゃない。ただ、彼女が勝手に姿を現しただけだ。

 俺には相手への敵意はないつもりだ。だが、相手はどうなのか分からない。

 もしも戦闘になるうるのならばそれに対してこっちも応戦しなくてはならない。

 「ウチの馬鹿は気にしないでくれ」

 彼は溜め息を吐いて、そう言った。

 「馬鹿はご主人様ですよ!!こういう時ぐらいは備えていて間違いはない筈です

 見るからに相手は外ど...あいた」

 バシンと擬音が付きそうなチョップを自身のメイドに食らわせる。

 「後でお仕置きな」

 「えぇ!?」

 「悪いな、何かウチの身内がうるさくて」

 「むー...」

 彼のメイドはブスッとむくれてしまった。

 「そんな事より、詳しい話だろ

 正直、その詳しい話なんか知らない

 だけど、とある警官からそういう情報を教えてもらった」

 「警官...。もしかして、その警官もデビルホルダーだったり...しないか?」

 「.........知ってるのか?」

 「...まぁ、ちょっとな」

 「俺としてはそこら辺はどうでもいい

 それより、詳しい話の続きだ」

 今は話の腰を折って、無駄な時間を費やすのはよくない事だ。

 「鎖穴神社には七岩とか言われる物があるらしい。それに七体の鬼が封じられていて、その七岩の一つが破壊されてしまったらしい

 それが内側からか外側からは確認は出来ていない

 俺の話はあの警官から聞いた話をそのまんま言ってるだけだ。お前が信じるか信じないかはお前に任せる」

 「七岩...

 知らない。だけど、それで鬼が一体解放されて、戦ったんだよな......

 そんなに強いのか?」

 「相手が本気なら、俺はこうして話なんかしてねぇよ

 俺んとこの......こいつは速いだけで強くはない

 相手は完全に俺らを舐めていた。舐めた上で簡単に太刀筋を振り払われた

 速さだけじゃ、あの鬼には勝てない」

 「......」

 「もういいだろ。俺から話せる事はないぞ」

 もう話せる事はない。偲の特典(ちから)の事まで話す必要もなければ、こうして一緒にいる必要もない。

 「それじゃあ、最後にメアド交換してくれるか?」

 そんなこんなで俺?の携帯に初めてのメールアドレスが追加された。

 正直、別に嬉しくない。余計も余分も邪魔でしかない。

 そういう出来事があった帰り、このまま帰ったとしても、やる事はない。

 それにあの鬼がどこにいるのか分からない。駆除出来るのなら、今すぐにでもしてしまいたいが戦力が不足している上に居場所が分からなければどうにも出来ない。

 <偲、お前ならどうする?>

 <あー?>

 適当に偲へ声をかける。しかしながら、彼女からは疑問符の付いた『あー』しか返ってこなかった。

 「はぁ...、何でもねぇよ」

 そう言いながら桜並木通りを歩く。偲に返答を期待しても仕方ない。

 未だ事件は起きていない。いや、それに俺が出会していないだけかもしれない。

 だとしても、事件に出会さないというのなら、平穏で平和だという事だ。

 それでも自身の心情は平和だとは言い難かった。まだ、何も起きていないという事はこれから起きるかもしれないという裏返しなのだ。

 またも、アイツが巻き込まれてしまうのは許されないし、許さない。

 だけど、今は解決する目処が立たない。あの鬼はまだ何もしていないのだろう。

 そうであってほしいが、俺には解決する力はない。

 あの時みたいに切っ掛けがあれば、何とかなるかもしれないがただの学生が探偵の真似事なんて容易じゃない。

 鬼はあの白装束の女達に追われていた。それがどういう事なのか、どういう物なのかは俺にも分からない。

 ただそういうシステムになっているのだとしたら、捕縛して封じる為の存在として彼女達がいるのだとしたら彼だって容易には動けない。

 「はぁ......」

 前途多難。そう都合のいい話なんてない。そう思っていた方が身の為だ。大丈夫なんて言える保証は何一つない。

 ふと、手の中に何かがあるのに気が付いた。

 「紙...切れ?」

 それは手のひら大のメモ用紙のような物が折り畳まれた状態でそこにあった。

 <偲?>

 <あー>

 もしやと思って、偲に声を掛けた。

 すると、偲から返答らしき声が返ってきた。

 『ご主人様、溜め息ばかり吐いてると幸せが逃げますよ』

 そのメモ用紙に文字が浮かび上がる。どうやら、これは偲の仕業で間違いがないようだ。

 <そう言ってもなぁ>

 『それと行動するのなら、夜が一番ですよ』

 <夜?>

 『あのお侍さんが言ってたじゃないですか。夜はもののけの活動時間って』

 <......確かに言ってたけど、>

 確かにあの侍はそう言っていた。まるで俺らがそのもののけ、鬼に出会さないように忠告していたようでもあった。

 あの時はそこを通さないとの一点張りだった。あの神社の中に鬼達が眠っているのは確実だ。そして、侍はそれを守っている。

 <お前が言いたいのはそういう事か?>

 『夜の方が昨日の鬼に出会すかもしれない

 あれがそういう存在なら、昼間より夜の方が活発に行動出来るって事なんじゃないのか?

 それとも夜に行動する事が多いっていう習性があるかもしれない

 俺には何も分からないけど、あのお侍さんの言動をそのまんま受け取るのなら』

 「そうなるのか?」

 『それに夜なら、俺も行動しやすい』

 <そんじゃあ、お前のその言い分、信用してみるか

 行動しないよりかはマシだしな>

◇◇◇◇

 僕は普通の人間だ。いつもそう言い聞かせて、外に出る。普通という定義がどういう物なのかなんて考えもせず、僕は僕のまま生きてきた。

 <ご主人様は夜が好きなのかしら>

 闇夜の空の下、僕はいつものように歩いていた。

 「そうだね。夜は好き...かな」

 夜は僕の行動時間だ。夜はいい。ふらついていても、誰にも文句を言われない。それに僕のように行き場の人がいっぱいいる。たまに挨拶をするけど、返してくれる人もいる。

 世界には二種類の人がいる。誰もが認識して見て聴いて触れれる人間と他の人には見えなくて確実にいるのにいない事になっている人間の二種類だ。

 僕はその前者より後者の人間の方が好きだ。余計な事も言わないし、何に関しても寛容だから。たまに要求される事もあるけれど、そういう人に出会したらいつも逃げて関わらないようにしている。

 <夜行性ね>

 「そうかな?」

 <自覚ないのかしら

 引きこもりでニートの癖に、夜になると外に出たがるような人間を揶揄されても悪くはないでしょ?>

 「はははっ......」

 苦笑い。彼女の舌には毒が仕込まれているのだろうか。

 だが僕はそんな彼女が好きだ。

 「そうだね。それは僕が悪いのかな」

 <そうよ。デートコースにしては、陰気な雰囲気を感じるんだけど?>

 「そうかな...?僕としては陰気とは思わないけど。それにまだこんなに賑やかだし」

 <どこをどう見て...、どう感じてそう思っているのかしら?>

 「うーん、全体的に見て感じて聴こえてくるけど?」

 <はぁ...、ご主人様ってもしかして天然?

 それともそれはわざとやっているのかしら?

 そういう事ならご主人様って、意外と酷い人間ね>

 「そうかな?

 うーん...、うん、そうかもしれない」

 <質が悪いわね>

 「結衣(ゆい)ちゃんだって、僕としては君が悪魔だなんて信じられないけど」

 結衣ちゃん曰く、自身は悪魔なのだとか。そう言われたとしても、僕からしたらコスプレをした女の子のようにしか見えないのだ。

 <ご主人様が異常なだけよ>

 「......普通だよ?」

 <あなたのどこが普通なのか教えてほしいわね

 まぁ、そんな事よりどこに向かっているのか、行き先ぐらいは教えてほしいわ>

 「滝山商店街だよ」

 現在、僕は桜並木通りを歩いている。向かう先は滝山商店街だ。

 理由としては何となくそこを歩きたい気分だから。

 滝山商店街。鬼上市の中心にある滝山町の都会部にある商店街だ。

 商店街とはいえ、流石に夜中になれば店は閉まる。

 現在の時刻は2:00頃。完全に太陽は沈み、人々は眠りに付いた時間帯だ。

 だというのに夜中になってもこの町は人がいなくならない。

 夜の皆はなんだか騒いでいて楽しそうだ。それに色々な人がいる。

 古びた格好の人もいれば、最近、普通の格好をした人もいる。たまに怖い顔した変な人もいるけど、その人には近寄らない。何をされるのか分からないし、何より近寄ったらいけないような雰囲気を醸し出している。

 滝山商店街に到着すると街灯が点いており、薄暗い中でも歩く事が出来る。

 商店街の足場はレンガ造りとなっており、街灯もそれに合わせてオシャレにしている。

 「よぉ...」

 そんな滝山商店街で人に話し掛けられた。

 「こんにちは」

 だから、僕は挨拶を返した。

 「こんにちは...ねぇ」

 その人は不思議な格好をした人ではあったがどこかで会ったような気がした。

 「もう夜だぞ。お前、変な奴だな」

 「それはあなたもじゃないですか?」

 だって、角を生やした人間なんて初めて会った。

 「そりゃそうだな。まぁ、今回は見逃してやる

 お前のおかげで俺は久々に外に出れたしな」

 「僕のおかげ?

 僕、何かしましたっけ?」

 「...覚えてないのなら、別にいい。今日は礼を言いに来ただけだ

 それと夜遊びは程々にしておけよ。辻斬りに出会さない事なんてないかもしれないが...、出会すかもしれねぇしな」

 そう言うと男はカッカッカッと悪いながら、背中を向けてどこかへと姿を消してしまった。

 すると気が付けば先程までいなかった筈の人の姿が現した。まるで彼がいたから姿を消していたかのように。

 <因みに後始末とかどうするつもり?>

 と訳の分からない問いを彼女は僕に投げ掛けた。

 「後始末って、何の?」

 <分かってないのなら、別にいいわ

 これはご主人様が仕出かした事だから、悪いのはご主人様よ>

 「僕が悪いのか?」

 <ええ、とても悪いわ。知らず知らずに悪党になってるもの、ご主人様って>

 腑に落ちないが、身に覚えないがない僕はいつも通りに散歩をし、いつも通りに結衣ちゃんと言葉を交わした。この夜はいつも通りの夜になる筈だった。

 あの角を生やした人物が去った後の事だった。

 「あー...」

 左目に眼帯をした少女が現れた。服装は結衣ちゃんとほぼ一緒で、ここら辺では見掛けない少女であり、雰囲気が何となく僕の横にいる彼女と一緒の物を感じた。

 その少女は僕を見て、足を止めている。見つめられている。

 「ご主人様は下がって

 彼女は私と同類よ。もしも、ご主人様が死にたいって言うんだったら止めないけど?」

 「ううん、大丈夫だよ。この子からは悪い気配は......感じない」

 「そうかしら?ただご主人様が鈍いだけじゃなくて?」

 「相変わらず、刺々しいね。結衣ちゃん」

 そんな会話をしている最中に目の前の彼女の手元にスケッチブックが出現した。

 『あなた方は悪い人ですか?』

 そのスケッチブックにそう文字が浮かび上がる。

 「ええ、そうね。私のご主人様は夜に女を連れ出すぐらいのすっごく悪い人よ」

 そのスケッチブックの言葉を否定する前に結衣ちゃんに先に言われてしまった。

 その言葉は誰が聞いても分かるように悪意を感じれるような物だった。

 『そこのあなたはともかく、あなたのご主人様はそういう風には見えないけど?』

 「そうね。外見はお人好しそうな面だけど、もしかしたら下半身は凶悪かもしれないじゃない」

 「結衣ちゃん、僕のイチモツ見た事あるの?」

 『成る程...、確かに人は見掛けに寄らないっていうしな』

 「そこ、勝手に納得しない」

 とりあえず、ツッコミを入れておく。変な所を納得されても困るのは僕だ。

 『それで俺の知ってる気配がここに残ってるけど、知っている事があるのなら教えてほしい

 教えてもらえないのなら、別にいい。こっちには戦う気はない。無駄な争いとか面倒なだけ』

 「何が知りたいのかな?」

 『鬼を見なかった?』

 「鬼......か。見なかったよ」

 『そうか。ご協力、ありがとうございます。失礼します』

 彼女はスケッチブックを手元から消失させると手元には刀が出現していた。

 そして、一瞬にして間を詰められ、首もとに刃が迫った次の瞬間にそこには彼女はいなかった。

 正確には彼女は右横へと転んでいる。

 それはまるで何らかの強制的な力による物のように感じたはしたがそれが何だったのか僕には分からない。

 しかしながら、彼女は起き上がるが彼女はへばりつくように踏ん張ってこちらを睨む。

 「諦めなさい。あなたじゃ、無理よ」

 結衣ちゃんは彼女に向かってそう言う。

 「行くわよ。ご主人様

 これはご主人様が悪いのだから、その代償はちゃんと支払わなくちゃいけないわよ」

 そう言って、彼女は僕の手を掴む。

 僕達は逃げるようにして、しかしながら、ゆっくりと歩くようにしてこの場を去った。

 「結衣ちゃん、彼女は何者なんだい?」

 「悪魔よ。まぁ、正規の悪魔じゃないけど

 そんな事より、真面目にこの問題を解決したらどう?

 じゃないといつか、ご主人様、殺されちゃうわよ」

 そう彼女は不真面目そうにそう言った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。