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もし普通(仮)の高校生が異世界で魔法を極めたら  作者: ぎるばあと
第二章 異世界漫遊編
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1.エルフの里

 「どうしてここに人間が?」


 目の前のエルフが驚きを隠せない様子で俺とアンナを睨む。

 

 正直なところ状況は最悪といえる。

 俺はまだ魔力が枯渇した状態であり、HPもかなり心許ない。

 アンナは大きく消耗していないものの、相手の力が未知数であることから、戦力に成りうるかはわからない。


 (抵抗は下策だな)


 俺はこの場を穏便に過ごすため、正直に状況を説明することにした。

 

 「にわかには信じられないな」

 

 目の前のエルフはそういって疑惑の眼を俺へと向ける。


 「だろうな。で、どうするんだ?俺は特に抵抗する気がないが」

 「ふむ、私が判断を下すには荷が勝ちすぎる。とりあえず私たちについて来てもらおうか」

 「私たち?」


 俺がそう疑問を呈すと、どこからもなくエルフの集団が姿を見せ、俺達を取り囲んだのだった。


 (参ったな、どうやら俺の気配察知は彼らに適用されないようだ)


 改めて自分たちの置かれた状況の悪さに閉口し、俺とアンナは大人しく彼らに随順するのだった。


 彼らに付き従い、森を歩く。

 穏やかな風にその身を揺らされ、擦れる音を鳴らす深緑の葉。

 時折聞こえる小鳥の囀りと川のせせらぎが、麗らかな雰囲気を醸し出している。

 

 また曇天の空が広がる魔族領は基本的に日照不足であり、昼間であっても薄暗い。

 にも関わらずこの森では、木々が自ら発光しているかのような生命感溢れる光で満たされていたのだった。


 「おい、着いたぞ」


 俺がぼんやりと辺りを見ながら歩いていると、俺の隣を歩いていたエルフの青年が声を掛けてきた。

 どうやら目的地に到着したようだ。


 木製の平屋が立ち並び、畑や井戸といった日本の農家のような風景がそこにはあった。

 どうやらここがエルフの集落なのだろう。

 入り口には柵や城壁の類は無く、見張りのエルフが二人立っているだけだった。


 俺達はそのまま直接、集落でも一際大きな家屋へと入り、応接室らしき部屋へと案内される。

 そこには皺が目立ち、かなりの長寿であることが推測されるエルフの老人が静かに座していたのだった。


 「久しぶりの客人ですな。ようこそエルフの里へ。私は長老のモーネでございます」

 「俺はリュウジです。よろしくお願いします」


 俺に続けてアンナも挨拶をする。

 一通り挨拶が終わり、事情を説明したところで長老が口を開く。


 「事情はわかりました。あなた方を客人として歓迎いたしましょう」

 「長老っ、正気ですか!このような部外者は即刻排除すべきでしょう?」

 

 どうやらエルフとは排他的な民族のようだ。

 長老の決定に対し、一人の青年が異議を唱える。


 「ふむ、言葉足らずでしたかな。アレン、あなたもこの集落の結界の力はご存知でしょう?邪なるものは大精霊様の怒りに触れ、直ちに命を落とすはず。この者達がここに存在しているという事実が、この者達の身の潔白を証明しているのです」

 「ですが……」


 アレンと呼ばれたエルフの青年はまだ納得がいかないような様子であった。

 

 しかしそんな恐ろしい結界が張ってあるのか……。

 なるべく邪な考えは抱かないようにしよう――

 俺は密かに決意するのであった。


 「困りましたな。里としても久しぶりの客人です。出来ればおもてなししたいところですが、どうやら私以外は歓迎しておらぬようですな」


 長老の言葉に俯く他のエルフ達。

 どうやらどのエルフもアレンという青年と同じく、外部のものを受け入れることに難色を示しているようだった。


 場に重苦しい雰囲気が流れる。

 しかしそんな雰囲気をぶち壊すかのように、突如勢いよく応接室のドアが開かれたのだった。


 「長老ー!外から人が来たって本当!?」


 開かれたドアから弾丸のような速度で部屋に突っ込んできた小柄なエルフ。

 その華奢な体格とは対照的な大きな瞳をキラキラと輝かせ、大きな声で長老へと呼びかけたのだった。


 「これ、フィーナ。客人の前ですぞ。静かにしなさい」

 「はーい」


 フィーナと呼ばれた少女は少し顔を膨らませてむくれた顔をする。

 そして横にいる俺達に気が付いたのだろう。

 俺達の周囲をグルグルと回ってふんふんと頷きながら、俺達を観察するのであった。


 「なーんだ、意外と普通だね!」

 「フィーナ!全くこの子は……リュウジ殿、アンナ殿失礼いたしました。この子には後でお灸を据えておきますので」

 「い、いや。俺は別に構いませんよ。何かされた訳ではありませんので」

 「おおー。お兄さんいい人だね!フィーナお友達になれそう!」

 

 アイムハッピーという様子で小躍りする少女。

 それを見た長老は深いため息をつき、そして何か思いついたように顔を上げる。


 「おお、そうじゃ。フィーナは今年丁度15歳になるのじゃったな?」

 「うん、そうだよ。どうかした?」


 フィーナの年齢を確認した長老が、改めて俺の方へ向き直る。


 「リュウジ殿、アンナ殿。一つ頼まれごとを聞いていただけないでしょうか。エルフは15歳になったら一人前のエルフと認められるために、大精霊様から加護を授かる儀をを受けねばなりません。その儀が大精霊様のいらっしゃる洞で行われるのですが、そこへフィーナと一緒にいっていただけないでしょうか?」


 更に長老の説明は続く。

 

 儀式は一人で受けるのが通例である。

 しかし儀式が行われる洞には魔物が出現し、それなりに危険を伴う工程となっている。


 更にはフィーナは単独戦闘向きではないスキル構成らしく、性格もかなり危なっかしい。

 そこでフィーナに関しては例外的にエルフの若者をサポートとして付けようかと協議していたところに、タイミングよく俺達が現れたとのことだった。


 神聖なる洞へ行って無事に帰ってきたならば、改めて俺達の潔白の証明になり、更には里の少女を助けた客人として、拒否を示すものもいなくなるだろう。

 そしてフィーナも無事に儀式を終えることが出来て一石二鳥。


 とまあこんな感じで長老に説得され、俺達はフィーナ護衛の任務を受諾するのであった。 

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