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5月5日、ABA研究会部室 その1



『5月5日、ABA研究会部室 その1』



「こどもの日、だーい!」

 スバーンと部室のドアが開いて、折り紙のカブトを装着した光瑠が転がり込んできた。

「やあやあ我こそは三輪の国、深藪にその人ありとうたわれた夏野操が娘、夏野光瑠。いざ尋常に、勝負ー!」

 戦場(いくさば)の名乗りを上げると、ドアの近くにいた八雲に丸めた新聞紙で斬りかかっていく。

「とおー!ズバア!」

「え、え?えっと、無念なりいい……?」

「ここであったが百年目、かおりん、お覚悟ぉぶへっ!?」

「お前はもう子供じゃないぞ、現実をみろ」

「ふぅいまふぇん」

 香織に両頬をつままれた光瑠が止まり、部室を見回して疑問を口にした。

「ありゃ、みんなどしたの?」


 長机とホワイトボードが配置された部室内は、ミーティングの態勢になっている。以前に八雲が初めて訪れた時と同じ状況だ。前と違うのは、この場にまなびがいて、机に額をつけていることだった。

「今日はもう大会前日だからな、激しい運動は控えるようにしてくれ。開発の方もこれで詰めだ」

 御凪はピッとホワイトボードを指さして言った。そこにはなにやら図形や立体と、作業手順とおぼしき説明文が書いてある。

「ってかまなちゃん大丈夫か?めっちゃ疲れてないか?」

「ふっふっふ……」

 光瑠の呼びかけに、今まで机に伏せていたまなびがスクッと立ち上がる。怪しげな笑みでクイクイと眼鏡をあげているが、その目の下にはよく見るとクマが浮かんでいた。

「なんとか間に合わせたで光瑠ちゃん!これが、スイスイくん1号や!」

 ババーンと口で言いながら、机の上に置いたそれ(・・)を指し示す。例のハンドクリーナーと、その前に取り付けられたプラスチック製の黒いパーツ。接続部分には上向きに突き出たグリップと、トリガーのような出っ張りがあった。

「おお、これが!?っていうかまなちゃん、いつもとテンション違うぞ、本当に大丈夫か!?」

「大丈夫やで!」

 いつものまなびはもっと落ち着いている。光瑠もかくやというハイテンションで受け答えをする今の彼女は確かに異常だった。

「大丈夫じゃない、少し無理をさせすぎた。まなびは寝不足になるとこうなるんだ」

 ふっふっふ、と不気味に笑って眼鏡の奥を光らせたまま、まなびはグッと握り拳を作って顔の前に出している。しかしそれは、どことなく弱々しい。

「うちはまだまだいけるで!どこまでも!」

 こりゃやべえわ、とまなび以外の全員が認識したところで、御凪がその音頭をとった。

「と言うわけでだ、まなびには休んでもらって残りの作業は俺たちがやる。異存はないな?」

 それぞれに頷いて肯定の意思を示す三人を見て、それでもまなびは食い下がる。

「でも、でもな」

「大丈夫、任せとけってまなちゃん!」

「残りは俺たちでもできる。だからとりあえず休んで、最後のチェックだけやってくれ。何だったら寝ててもいいぞ」

「うぐぐ」

 まなびが反論しなくなったのを確認して、御凪は一年生の三人に向かって説明を始めた。


「さて、さっきも言ったように、これが最後の詰め(・・)だ。あと用意しなければならないのは、この部分」

 そう言って手に持った部品は、手のひらサイズの円筒形をしていた。

「吸引型の電動捕虫網として開発したこの“スイスイくん一号”は、先端部分をカートリッジ式にしてある。つまり、複数個用意して試合中に交換するんだ」

 机の上を改めて見回すと、350ミリリットル入りのペットボトル、目の細かい網のシート、その他ハサミや接着剤、テープなどが並んでいる。これらが材料、というわけだ。

「このジュースは俺のおごりだ。飲んで、洗って、作業を開始してくれ。作業手順はホワイトボードにある通り。では、始めてくれ」

 しばらくの間、心配そうに作業を見守っていたまなびは、次第にうとうとし始めて、いつの間にか眠っていた。御凪はその脇に畳んで置いてあったストールを広げてまなびの肩にかける。

「最低でも五個は用意しておきたいんだが、今できているのは見本の一つと、光瑠の一つか」

「ふふーん、あたしはこういうの得意ですから?もう一個作って差し上げてもよろしくってよ?」

「ああ、よろしくたのむ」

「任せろー。ごくごく」

 おいしそうに三本目のジュースを開ける光瑠を見ながら、香織は感心したように言う。

「ほんと器用だよね……」

「ここ、どうしても隙間が空いちゃって先に進めない……」

 んぐんぐ、とジュースを飲みながら二人の手元をのぞいた光瑠はアドバイスを送る。

「ぷはー。お二人さん、そこはぐるっとテープを一周巻いてから、余ったところにハサミをいれるんだよ」

「えっと、こう?」

「そう、それを四箇所ぐらい」

「うーん……あ、できた!」

 騒ぎながらも、互いに教え合って進んでいく作業。

 すやすやと眠るまなびの口端には、幸せそうな笑みがうっすらと浮かんでいた。


いつもお世話になっております。裸地栄太です。

何とは言いませんけど冬イベが始まりましたね、裸地も参戦予定です。もちろんこっちを優先しますよ?ぼちぼちです、ぼちぼち。

こういうのは作業の合間にできますから影響はない……はず。


さて、次回は13日の土曜日、23:59迄の更新となります。

ありがとうございました、またお越しくださいませ―。

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