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第1,015話 「叶わぬ恋に落ちて⑦」

愛読者の皆様!


『魔法女子学園の助っ人教師』第4巻の発売が決定致しました!

詳細は決まり次第お報せ致します。


書籍版をまだお読みではない方は、第1巻~3巻を宜しくお願い致します。

皆様が応援して下されば、更にまた『次』へと進む事が出来ます。

※店頭にない場合は恐縮ですが、書店様にお問合せ下さい。

 ルウの目の前で……


 美しい南の国の妖精(ニンフ)の少女がふたり、歓喜の涙を流しながら、固く抱き合っていた。

 ひとりは深き緑の森に生まれたアルセイス、木霊エーコーのエレナ、もうひとりは、深き清き泉に生まれた、ナーイアスのリゼッタである。


 数千年の長きに渡り、ふたりの南の国の妖精(ニンフ)は、滅んだ女神の呪いを掛けられていた。

 エレナは、故郷から遠く離れた北国の谷で、たったひとり異界へ幽閉され……

 リゼッタは誰も訪れぬこれまた異界の神殿で、元の美しい姿とは似ても似つかぬ、おぞましい異形の姿に変えられていたのだ。


 やがて、リゼッタがエレナから離れると……

 泣き腫らして、真っ赤になった目をルウへ向けた。


「ルウ様……」


『リゼッタ、念話で話そうか』


 いまだ憎悪に狂った、女神の魂の残滓が支配するこの神殿では、ルウ達の一挙手一投足が見られていると言って良い。

 余計な事を聞かれない為に、念話を用いるのは当然の措置である。

 加えて、リゼッタが知りうる神殿の情報を全て、ルウへ教えて欲しいという要望だろう。


 勘が良いのか、リゼッタはルウの意図を、一瞬にして読み取った。


『は、はい!』


『…………』


 片や、エレナは黙って見守っていた。

 とらわれていたリゼッタが、一体ルウに何を言いたいのか、願っているのか……

 良く……分かるのだ。


『宜しければ、お聞かせ下さい。ルウ様は、ラミアを救うおつもりですか?』


『ああ、その為に来た。だが、リゼッタ、まずお前を救う事が出来て良かった』


『は、はい! 本当に助けて頂き、ありがとうございます。ですが……』


『何か、心配事か?』


『はい! この神殿に守護者はまだおります。私が化身させられていたスフィンクスなど、比べ物にならない、怖ろしい不死の怪物が居るのです』


 リゼッタの言葉を聞き、ルウは頷く。


『ああ、分かる。この神殿へ入ってから、ずっと気配を感じていたさ。凄まじい毒と瘴気もな……』


『…………』


『では、リゼッタ。聞こう、お前の言う守護者とはヒュドラか?』


『は、はい! その通りです。もしかして、ご存知だったのですか?』


『ああ、奴の発する魔力波オーラでな……とんでもない猛毒持ちであり、且つ、剣で首を斬っても、斬っても、どんどん再生して増える怪物だろう? きりがないほど』


 怪物ヒュドラは……

 女神の怨念から生まれた、巨大な蛇の怪物である。

 固い鱗に覆われた体躯から生える9つの首を持つ。

 そしてルウの言う通り、体液は勿論、吐く息も猛毒なのだ。

 更にヒュドラが厄介なのは、持つ毒の解毒が不可と言われているからである。


 ルウが、ヒュドラを熟知していると知ったリゼッタは、改めて恐ろしさを言い放つ。


『そこまでご存知ならば、詳しい説明は要りますまい。仰る通り、あの怪物は身体の全てが猛毒で出来ておりますよね。人間は勿論、私達ニンフだってひとたまりもありません。あいつは、近づく者を全て腐らせてしまうのです』


『そうだな……』


『その上、ヒュドラは完全なる不死の怪物です』


『不死? 確か、英雄と呼ばれた半神半人の勇者が倒したと聞いたが……』


『いいえ! いにしえの英雄が、首を切り落とした傷口を焼いて倒したというのは偽りです。単に仮死状態となっただけで死んではいなかったのです』


『ほう! じゃあ傷口を焼いて再生を防ぐ手は駄目か?』


『はい! それに女神は英雄が戦った時よりも、ヒュドラを遥かにビルドアップしました。生半可な火の魔法など無効化してしまうのです』


『ははっ、火の魔法が効かないか、それは厄介だな』


『もう! 笑い事ではありません! ラミアが幽閉された部屋へ行くには、ヒュドラを倒すしかありません。それに、もし運よくヒュドラを倒し、ラミアに会えたとしても、彼女を救えるかどうか……』


『…………』


 リゼッタの話がラミアへ及ぶと、ルウは黙り込んだ。

 少々、考えを巡らせているらしい。


『何故ならば、怪物となったラミアは……おのれの未来は勿論、この世界全てに絶望してしまっています……いっそ自分を殺せと言うでしょう……』


『むうう、それじゃあ、ラミアの説得は難しそうだ、困ったなぁ……』


 先程の、穏やかな笑顔から一変!

 眉間に皺を寄せて悩むルウの中で、怪物ヒュドラは全くアウトオブ眼中のようだ。


 ルウの言葉を聞き、カッとなったのか、リゼッタの眉が吊り上がる。 


『ルウ様! ラミアの説得より、まずヒュドラを! あの不死身の怪物をどう倒すかが先でしょう?』


 唾が飛びそうになるくらい、リゼッタは興奮してしまった。

 あまりにも、ルウが能天気に見えるらしい。


 当の、ルウはといえば、


『おお、ごめんな。リゼッタは俺の事を心配してくれているんだろう?』


『そうですよ! でもエレナは私なんかより、もっと心配しています! ほら! 見て下さい 泣きそうになってます!』


『え? 私が?』


 いきなり自分に振られて、エレナは目を丸くした。

 リゼッタは言うが、エレナは泣き顔などしていない。

 実は……リゼッタが、ルウに反省して貰う為の……嘘である。


 しかし単なる嘘ではない。

 リゼッタはすぐ、エレナの気持ちを見抜いていたのだから。


『そうよ! だって、貴女は!』


『は?』


『助けて頂いたルウ様が、凄く好きなんでしょう?』


「は、はい~っ!?」


 静まり返った神殿の大広間に、思わず出たエレナの『肉声』が盛大に響いていたのであった。

いつもお読み頂きありがとうございます!

東導の別作品もお願いします。


☆『帰る故郷はスローライフな異世界!レベル99のふるさと勇者』


『アンテナショップとお祭り編』連載中!


https://ncode.syosetu.com/n4411ea/


※殺伐とした都会に疲れ、幼い頃に離れた故郷へ帰ろうとした青年ケンは謎の死を遂げる。15歳の少年として未知の異世界へ転生したケンは、出会った美しい少女達と辺境の田舎村で心の拠り所を探し続ける。


※『魔法女子学園の助っ人教師』とは微妙に違う、

ヴァレンタイン王国における、のんびりスローライフな田舎ワールドです。


☆『真☆信長に学べ! 俺の異世界生き残りライフ』


https://ncode.syosetu.com/n4165cd/


※歴史オタクの気弱な中二病少年が異世界転生して、信長に?

※長らくお待たせしました。

連載再開です。

活動報告でお伝えした通り、大幅加筆修正しまして、第1話から差し替えとなっております。

前作がベースとなってはいますが、内容もある程度変わっております。

申し訳ありませんが、ご了解下さい。


両作品とも、本日6月1日朝に『更新』予定です。

何卒宜しくお願い致します。

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