第1,015話 「叶わぬ恋に落ちて⑦」
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ルウの目の前で……
美しい南の国の妖精の少女がふたり、歓喜の涙を流しながら、固く抱き合っていた。
ひとりは深き緑の森に生まれたアルセイス、木霊のエレナ、もうひとりは、深き清き泉に生まれた、ナーイアスのリゼッタである。
数千年の長きに渡り、ふたりの南の国の妖精は、滅んだ女神の呪いを掛けられていた。
エレナは、故郷から遠く離れた北国の谷で、たったひとり異界へ幽閉され……
リゼッタは誰も訪れぬこれまた異界の神殿で、元の美しい姿とは似ても似つかぬ、おぞましい異形の姿に変えられていたのだ。
やがて、リゼッタがエレナから離れると……
泣き腫らして、真っ赤になった目をルウへ向けた。
「ルウ様……」
『リゼッタ、念話で話そうか』
いまだ憎悪に狂った、女神の魂の残滓が支配するこの神殿では、ルウ達の一挙手一投足が見られていると言って良い。
余計な事を聞かれない為に、念話を用いるのは当然の措置である。
加えて、リゼッタが知りうる神殿の情報を全て、ルウへ教えて欲しいという要望だろう。
勘が良いのか、リゼッタはルウの意図を、一瞬にして読み取った。
『は、はい!』
『…………』
片や、エレナは黙って見守っていた。
囚われていたリゼッタが、一体ルウに何を言いたいのか、願っているのか……
良く……分かるのだ。
『宜しければ、お聞かせ下さい。ルウ様は、ラミアを救うおつもりですか?』
『ああ、その為に来た。だが、リゼッタ、まずお前を救う事が出来て良かった』
『は、はい! 本当に助けて頂き、ありがとうございます。ですが……』
『何か、心配事か?』
『はい! この神殿に守護者はまだおります。私が化身させられていたスフィンクスなど、比べ物にならない、怖ろしい不死の怪物が居るのです』
リゼッタの言葉を聞き、ルウは頷く。
『ああ、分かる。この神殿へ入ってから、ずっと気配を感じていたさ。凄まじい毒と瘴気もな……』
『…………』
『では、リゼッタ。聞こう、お前の言う守護者とはヒュドラか?』
『は、はい! その通りです。もしかして、ご存知だったのですか?』
『ああ、奴の発する魔力波でな……とんでもない猛毒持ちであり、且つ、剣で首を斬っても、斬っても、どんどん再生して増える怪物だろう? きりがないほど』
怪物ヒュドラは……
女神の怨念から生まれた、巨大な蛇の怪物である。
固い鱗に覆われた体躯から生える9つの首を持つ。
そしてルウの言う通り、体液は勿論、吐く息も猛毒なのだ。
更にヒュドラが厄介なのは、持つ毒の解毒が不可と言われているからである。
ルウが、ヒュドラを熟知していると知ったリゼッタは、改めて恐ろしさを言い放つ。
『そこまでご存知ならば、詳しい説明は要りますまい。仰る通り、あの怪物は身体の全てが猛毒で出来ておりますよね。人間は勿論、私達ニンフだってひとたまりもありません。あいつは、近づく者を全て腐らせてしまうのです』
『そうだな……』
『その上、ヒュドラは完全なる不死の怪物です』
『不死? 確か、英雄と呼ばれた半神半人の勇者が倒したと聞いたが……』
『いいえ! 古の英雄が、首を切り落とした傷口を焼いて倒したというのは偽りです。単に仮死状態となっただけで死んではいなかったのです』
『ほう! じゃあ傷口を焼いて再生を防ぐ手は駄目か?』
『はい! それに女神は英雄が戦った時よりも、ヒュドラを遥かにビルドアップしました。生半可な火の魔法など無効化してしまうのです』
『ははっ、火の魔法が効かないか、それは厄介だな』
『もう! 笑い事ではありません! ラミアが幽閉された部屋へ行くには、ヒュドラを倒すしかありません。それに、もし運よくヒュドラを倒し、ラミアに会えたとしても、彼女を救えるかどうか……』
『…………』
リゼッタの話がラミアへ及ぶと、ルウは黙り込んだ。
少々、考えを巡らせているらしい。
『何故ならば、怪物となったラミアは……己の未来は勿論、この世界全てに絶望してしまっています……いっそ自分を殺せと言うでしょう……』
『むうう、それじゃあ、ラミアの説得は難しそうだ、困ったなぁ……』
先程の、穏やかな笑顔から一変!
眉間に皺を寄せて悩むルウの中で、怪物ヒュドラは全くアウトオブ眼中のようだ。
ルウの言葉を聞き、カッとなったのか、リゼッタの眉が吊り上がる。
『ルウ様! ラミアの説得より、まずヒュドラを! あの不死身の怪物をどう倒すかが先でしょう?』
唾が飛びそうになるくらい、リゼッタは興奮してしまった。
あまりにも、ルウが能天気に見えるらしい。
当の、ルウはといえば、
『おお、ごめんな。リゼッタは俺の事を心配してくれているんだろう?』
『そうですよ! でもエレナは私なんかより、もっと心配しています! ほら! 見て下さい 泣きそうになってます!』
『え? 私が?』
いきなり自分に振られて、エレナは目を丸くした。
リゼッタは言うが、エレナは泣き顔などしていない。
実は……リゼッタが、ルウに反省して貰う為の……嘘である。
しかし単なる嘘ではない。
リゼッタはすぐ、エレナの気持ちを見抜いていたのだから。
『そうよ! だって、貴女は!』
『は?』
『助けて頂いたルウ様が、凄く好きなんでしょう?』
「は、はい~っ!?」
静まり返った神殿の大広間に、思わず出たエレナの『肉声』が盛大に響いていたのであった。
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※歴史オタクの気弱な中二病少年が異世界転生して、信長に?
※長らくお待たせしました。
連載再開です。
活動報告でお伝えした通り、大幅加筆修正しまして、第1話から差し替えとなっております。
前作がベースとなってはいますが、内容もある程度変わっております。
申し訳ありませんが、ご了解下さい。
両作品とも、本日6月1日朝に『更新』予定です。
何卒宜しくお願い致します。




