第1,014話 「叶わぬ恋に落ちて⑥」
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木霊のエレナ、呪われしスフィンクスの視線がぶつかり合う。
お互いに、いっぱいの涙に満たされた美しい瞳から、「切ない!」という激しい思いを籠めて……
一方、ルウはスフィンクスへ、淡々と告げる。
「では……俺の問いに対し、正解を答えて貰おう」
「正解……」
スフィンクスは、ルウの言葉を復唱し、口籠った。
改めて、ルウを「じっ」と見つめる。
ルウは穏やかな表情を変えず、言葉を戻す。
「お前が答えれば、俺も同じ事をしよう……」
「同じ事……」
「言わなくとも、お前には分かっている筈。古より、スフィンクスは謎掛けを解いた者の命を助ける……それが……約束だろう?」
スフィンクスは頷くと、巨大な翼を軽く羽ばたかせた。
そして、
「はい、仰る通りです。そのような取り決めとなっております………確か貴方様のお名前は……」
「ルウで良い……」
「かしこまりました。ではルウ様……ならば、申し上げます。ルウ様は確かこう仰いました。……海に生まれ、泉に生まれ、山に生まれ、森に生まれ、木に生まれ、谷間に生まれる者は誰だと?」
「そうだ」
「ならば、分かります……答えは……ニンフです」
スフィンクスは、微笑みながら答えた。
ルウも嬉しそうに微笑み、頷く。
「正解だ」
ルウの出した、謎掛けの『正答』はニンフであった。
ニンフは、様々な自然から生まれる妖精なのである。
妻のひとり、水の妖精のアリスと同じだ。
笑顔のルウは、更に言う。
「俺の謎掛けを解いたお前は、これで呪縛も解かれた……最早、おぞましいスフィンクスなどではない」
「…………」
「大丈夫! 醜い女神の呪いから解放され、美しいニンフに戻ったのだ」
今度はルウの言葉に対し、スフィンクスは首を横に振った。
はっきりした、否定の答えである。
「あ、ありがたいお言葉ですが…………戻ってなどいません!」
「戻っていない…………」
「はい! 私はもう! ち、違います。違うのです! み、見て下さい、ルウ様! おぞましい姿を! こ、このように……み、醜く! 変えられてしまいました……」
だが、今度はルウが首を横に振った。
「いや、お前のその身体は仮初だ。元の心を完全に取り戻せば、俺はお前との約束を守る事が出来る」
「私が心を取り戻せば? や、約束を? お守りに?」
「ああ、お前次第さ。……先程言っただろう? 助けると!」
「お前を助ける!」そう言い切ったルウの姿が……眩く輝き始める。
白光はやがて、ルウの全身を黄金色に染めて行く。
スフィンクスはあまりの神々しさに圧倒され、息を呑む。
目の前のルウからは、あの女神など全く問題にならない、巨大な魔力波を感じるのだ。
「ルウ様!」
思わず呼び掛けたスフィンクスに対し、光体となったルウの声が響き渡る。
「お前自身の、真の名を思い出せ! そしてはっきりと俺に向かって言い放て!」
力強いルウの声に励まされるように、スフィンクスは凛とした声で言い放つ。
「はい! 私は南の国の妖精! 深き清き泉に生まれし、ナーイアスのリゼッタでございます!」
「よし! 良くぞ言った、リゼッタ! お前の名、しかと聞いた!」
「はいっ!」
ルウの放つ光はますます強くなって行く。
同時に、朗々と言霊が詠唱されて行く。
「汝、解き放たれよ、スフィンクス。元のあるべき姿へ! 清冽な泉の妖精ナーイアスになりて! 我の前に真の姿を見せよ!」
ルウの詠唱が、終わった瞬間!
白光が「どっ」と部屋いっぱいに満ちる。
「ああああああっ!!!」「きゃう!」
何も見えず真っ白になった大広間に、
スフィンクス、否、ナーイアスのリゼッタ、そしてアルセイスのエレナ……
ふたりのニンフの悲鳴が、同時に響いたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
白光は暫しの間、大広間を満たし、やがて引いて行った……
目を凝らしたエレナは……
ようやく周囲が見えて来た。
ぼんやりと、ふたつの人影が見える。
ひとりは長身瘦躯で、ルウだとすぐ分かった。
そしてもうひとりは……
自分より少し背が高い、女性らしく、華奢なシルエットである。
「ルウ様!」
エレナがルウを呼ぶと、長身瘦躯のシルエットが大きく手を振り、そしてもうひとりのシルエットが深々とお辞儀をした。
やがて、白光は完全に収まった。
ふたりの姿は、エレナに対し完全にさらされた。
ひとりは、当然ルウ。
そして、もうひとりは……
「あ、貴女が!?」
エレナの目の前には……
黒く長い髪を後ろで束ねた、漆黒の瞳の女性が立っている。
またも奇跡が起きた。
自分の時と同じように……
ルウの強力な解呪魔法が、女神の忌まわしい呪いを打ち破ったのだ。
「はい! 私が、リゼッタでございます! エレナさん!」
「ああ! 良かったぁ!」
安堵したエレナは、喜びのあまり顔をくしゃくしゃにし……
またも大粒の涙を浮かべると……リゼッタに、「ひし!」と抱きついていたのであった。
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※歴史オタクの気弱な中二病少年が異世界転生して、信長に?
※長らくお待たせしました。
連載再開です。
活動報告でお伝えした通り、大幅加筆修正しまして、第1話から差し替えとなっております。
前作がベースとなってはいますが、内容もある程度変わっております。
申し訳ありませんが、ご了解下さい。
両作品とも、本日5月28日朝に『更新』予定です。
何卒宜しくお願い致します。




