兄との出会い
兄である源三郎との邂逅です。昌幸を継ぐことになる兄との会話がこれからの未来を少しずつ変えていきます。
源次郎との脳内会話を済ませた翌朝、頼康から今日は稽古がないと告げられた。
「今日は何かあるのか?」
「殿の御用で、家中の者たちが忙しくしておられる。源次郎様も、あまり出歩かれぬよう」
そう言い残し、頼康は足早に去っていった。
気になって屋敷の中を歩いてみると、普段とは明らかに様子が違っていた。廊下では家臣たちが書状を手に行き交い、部屋の中からは相談する声が聞こえてくる。庭先では馬の鞍や荷物が点検され、武具を運ぶ者たちの姿もあった。
誰もが忙しそうで、声をかけてもすぐに別の用事へ向かってしまう。
どうやら、ただ事ではないらしい。
そんなことを考えながら歩いていると、一人の男に呼び止められた。
「源次郎! お前、何も聞かされていないのか?」
俺とそう年の変わらない青年だった。俺を呼び捨てにできるということは……もしかして兄か?
確かめるため、俺は心の中で源次郎に尋ねた。
(なあ、源次郎。目の前にいるのは誰だ?)
『何を隠そう、兄上だ。兄上に何かしてみろ。絶対に許さんぞ』
(何もしないって。心配するなよ)
……これまでで一番怖いんだが。
「兄上! そうなんです。何も聞かされていなくて」
俺は目の前の青年に答えた。
「実は俺も聞かされていないんだ。恐らく、俺たち兄弟以外は事情を知っていて、何か動いているのだと思う」
長男にも伝えていない重要な話か。
戦なら、出陣するのか、どこかへ逃れるのか、何かしらの方針があるはずだ。今、真田家では何が起きているのだろう。
「父上は、なぜ長男である俺にも伝えてくださらぬのだ。織田に臣従するときだってそうだ。俺も真田の一人だというのに、何も知らされぬままでは、いざというときに何の役にも立てぬではないか!」
現代でいえば、思春期真っ盛り。家の大事なことから蚊帳の外に置かれるのは、相当悔しいだろう。
「源次郎も悔しいとは思わぬか? 周りの者たちは、我らと同じくらいの年齢でも、すでに元服を済ませているというのに」
元服……大人になった証の儀式みたいなものか。本で、十三歳から十七歳くらいで済ませると読んだ気がする。
「父上も、我らのことを大事に思ってくださっているのではないでしょうか。家が安定すれば、おのずと話も進むかと」
励ましになっているかは分からない。そもそも、俺の想像でしかないのだが。
「源次郎……俺は早く父上の力になりたいのだ。今回も何かあるのなら、力になってみせたのに!」
ああ、自分も家の役に立ちたいんだな。
俺も何が起きているのか気になるし、ここは一つ、行動してもらおう。
「兄上、父上に聞きに行きましょう。何を準備しているのか! 父上が見つからなければ、それぞれの側近にでも聞けばいいでしょう」
ナイス提案、自分。
こういうときは、何か行動させてやるのが一番だ。何もできないままでは、気持ちばかりが焦ってしまう。
「そうだな。こちらから聞きに行くべきかもしれぬ。だが、俺と約束だ。くれぐれも邪魔はしないようにな」
なるほど。長男として、弟への注意も忘れないわけか。
だが、この積極性は大事にしたい。自分から動こうとする人間は、きっとこれからも頼りになる。
そうして二人で屋敷を歩いていると襖の奥から声が聞こえてきた
「上様が参られるのだ。豪勢にやらなくては」
上様?誰を指しているのかわからないが横の兄を見ると顔が青ざめていた。
拙い文章かも知れませんが読んでいただきありがとうございます。何かありましたら感想などお待ちしています。作品制作の励みになります!




