俺はお前、お前は俺
脳内で改めて話をしようとする主人公。源次郎はまだまだ拒絶を示しますが、僅かな興味が浮かんできます。
鍛錬を終え、寝床に入った俺は、目を閉じて強く念じてみた。
――源次郎と話がしたい。
そうして意識は闇に落ちた。
『おい。呼んだにもかかわらず、何故お前から話をせぬ』
声に意識を引き戻される。
目の前には、最初のときと同じ暗闇。そして、そこに浮かぶ若い武士。
鏡があれば、きっと俺と瓜二つの顔をしているのだろう。
「今、こっちに意識が来たんだよ。さっきのこともあって、お前と話がしたいと思ってな」
疑われているのは分かっている。だが、ここは正直に話すしかない。
『何について話すというのだ。身体を明け渡す気にでもなったか?』
「それも、あながち間違いじゃない」
そう答えると、源次郎は困惑したような表情を浮かべた。
「改めて思ったんだ。俺には軍事的なことは向いていない。それに、お前はすごい。だから、身体を一時的に渡してもいいと思ったんだ」
『一時的だと? そんなことはさせぬ。一度取り戻したら、もう二度と手放さぬぞ』
まあ、そうなるよね。
だが、こちらにも譲れない事情がある。使えるカードは、早いうちに切っておこう。
「お前にだけは話しておく。俺は未来から来た人間なんだ」
……言ってしまった。
さて、どうなる。
『嘘も休み休み言え。少しでもお前を信用しかけた私が愚かであった』
「嘘じゃないさ」
『ならば、これから起こることを一つ予言してみせよ』
これから起こること、か。
正確な日付までは覚えていない。だが、この時代の大事件なら一つだけ知っている。
「織田信長は、まもなく死ぬ。家臣の裏切りによってな」
源次郎が固まった。
信じられない、とでも言いたげな顔で俺を見つめている。
『そのようなことがあるはずがない。織田は天下統一まであと一歩だと、父上も仰っていた。そんな織田の実質的な当主が、家臣の裏切りで死ぬだと?』
当然の反応だろう。
少し前に織田家に臣従した真田家の次男ですら、こうなのだ。長年仕えてきた家臣たちが、信長の死を予想できるはずもない。
……やはり、歴史を変えるというのは簡単じゃないな。
『そのような話、当たるはずがない。……いいだろう。仮に当たったなら、お前の条件を聞いてやる』
とりあえず、一歩前進か。
いや、待て。
本能寺の変って、何月に起こるんだっけ?
今は雪が解けて間もないと言っていたから、四月くらいだろうか。
「まもなく」の範囲がどこまで許されるか。それ次第で、俺のこれからも大きく変わりそうだ。
拙い文章かも知れませんが読んでいただきありがとうございます。何かありましたら感想などお待ちしています




