初めての共同作業?
頼康との軍議駒をすることになった主人公、始まる直前に脳内の源次郎から声が聞こえます。
転生初日以降、大人しかった元の身体の持ち主――源次郎が、突然語りかけてきた。
今はそれどころではないのだが。
『このままでは、身体を取り戻したときに不都合がある。何もできぬ者だと思われてしまうからな。今回は協力してやる』
こいつ、算術などは役に立たないと思っているタイプか。
そんなことを考えていると、頼康に声をかけられた。
「源次郎様? 準備は整っておりますぞ。さあ、お早く」
「あ、ああ。すまない」
力を貸してくれるというならありがたい。戦略ゲームならそれなりにやってきたが、現実の戦場とは勝手が違う。
頼康に促され、盤面を眺める。
軍議駒は将棋に似ているが、歩兵や騎兵、弓兵などの部隊があり、それぞれ兵力が定められている。兵が尽きれば駒は盤面から退場し、敵の駒を取っても自軍には加えられない。
なるほど、戦場を再現したボードゲームか。
俺はまず、守りを固めることにした。
遠距離攻撃が強すぎないか、これ?
弓兵で敵を削り、歩兵で守れば損害を抑えられる。相手が攻めてくるほど、こちらが有利になるはずだ。
そう考え一手目を打とうとした瞬間、頭の中に源次郎の声が響いた。
『甘い! 歩兵で敵の陣を崩し、騎馬で蹴散らすのだ。兵站で劣るこちらが勝つには、それしかない』
兵站?
改めて盤面を見ると、敵には兵糧や補給を担う部隊が多い。こちらは明らかに少なかった。
なるほど。長期戦になれば、こちらが先に息切れするわけか。
『敵が守りを固めているなら、正面から付き合う必要はない。歩兵を前に出せ。敵を引き込むのだ』
いや、そう簡単に言われても。
歩兵を前に出せば、こちらも損害を受ける。ゲームだと分かっていても躊躇してしまう。
それでも俺は、言われたとおりに駒を進めた。
「おお……」
頼康が感心したような声を漏らす。
「此度の戦、源次郎様には目的がお分かりのようですな」
いや、俺が分かっているわけではないんだけど。
その後も、源次郎の指示は続いた。
『敵を引き込め。横から討つのだ』
『今だ。騎兵を動かせ!』
言われるたびに盤面を見直す。どの部隊を動かし、どこで敵を受け止め、どこに誘い込むのか。目の前の一手だけでなく、その先まで考えなければならないらしい。
……これを実際の戦場でやるのか。
やがて、敵の陣形が崩れたところに騎兵が突入し、勝負が決した。対局開始から二十分ほどが経っていた。
「源次郎様、お見事です。それでは、本日はこれまでといたしましょう」
ようやく終わった。
頼康が盤面を片づける横で、俺は大きく息を吐いた。
最後まで、ほとんど源次郎の策が当たっていた。俺がやったことといえば、言われたとおりに駒を動かしたくらいだ。
それにしても、こいつはすごい。
盤面を見ただけで敵の狙いを読み、兵力の差を考え、攻めるべき時を判断する。俺には、どれだけ時間をかけても同じことができるとは思えなかった。
戦場で俺は生きていけないかもしれない。
そう考えた俺は、一つの決心をした。
――まずは、こいつと話し合ってみよう。
拙い文章かも知れませんが読んでいただきありがとうございます。何かありましたら感想などお待ちしています




