傍付きができました
体も問題なく動くようになり、指南役で傍付きの矢沢頼康とともに鍛錬に励むことになります。
父との面会から一週間ほどがたち、俺には嫌いな人間ができた。
父上から遣わされたという、矢沢頼康という男だ。父上の従兄弟にあたるらしく、俺の傍付きになったらしい。
「源次郎様、今日も鍛錬いたしますぞ!」
……まだ病み上がりだというのに、毎日朝から晩まで武芸に学問。もう嫌になる。
学校より余裕でキツい。先生方って鬼だと思っていたけど、優しかったんだな。鬼教師とか言ってごめんね。
「一旦、休憩しないか?」
特に武芸がキツい。体は動くのだが、刀の扱い方などさっぱり分からない。ひたすら木刀で打ち込んでは、頼康に打ち返される毎日だ。
「何をおっしゃいます。以前は武芸の稽古となれば、喜んで打ち込みに来られたではありませんか。いくら記憶を失ったとはいえ、体は覚えているかと思いましたが」
無茶を言うな。俺は本来の体の持ち主じゃないんだぞ。
「まあ、無理はさせぬよう殿から言われております。では、座学に移りましょうか」
よし、これは得意分野だ。
正直、十六歳とされている人間が学ぶ内容としては、読み書きや計算の基礎など、俺にとって簡単なものが多い。図形や理科がないのは残念だが、武芸に比べれば天国である。
「では、本日は兵法を学びましょう。これまでと違い、座学には興味がおありのようですし」
……は?
兵法なんて知らねえよ。そんなもの、現代の学校じゃ習わない。しかも漢文か。読みにくいことこの上ない。
「ええと……疾きこと風のごとく、徐かなること林のごとく、侵掠すること火のごとく……」
ん? なんか聞いたことがあるぞ、これ。
「おお、やはり書物は読めるようになったのですな。本日は『孫子』の一節を通じ、旧主・武田家の兵法について学んでいただきますぞ。ささ、続きを読んでくだされ」
うん、知らないところを読むのは無理ゲーだ。
現代ならレ点や返り点が振られているのに、そんなものはない。風林火山は、昔、会社の標語になっていたことがあるから何となく分かる。だが、それ以外はさっぱりだ。
苦戦しながら何とか読み進めていたが、ついに声が止まった。
「流石にお疲れですかな。それでは、軍議駒でも使って、本日のおさらいといたしましょう」
いや、読むだけで精一杯だったんだけど。これ、どうやって兵法に活かせばいいんだ?
そう思った瞬間、軽い頭痛が俺を襲った。
「痛っ」
『全く、何をしている。黙って見ていれば、軟弱者もいいところだ』
……こんな状態で、お前まで出てこないでくれよ。
拙い文章かも知れませんが読んでいただきありがとうございます。何かありましたら感想などお待ちしています




