それぞれの思惑(3)
真田家はどうやって生き残っていくのでしょうか。それぞれの思惑はまだまだ複雑に絡み合っていきます。
ー 6月20日 名胡桃城内 真田源次郎
そうして夜も明けた6月20日、滝川一益一行は名胡桃城を出て伊勢へ向かった。
「さて、左近将監は居なくなったが、これからどうしたものか。すぐに真田は吹き飛びかねない」
父を筆頭に真田家はまたもや会議を開いていた。
「まずは北条に臣従するほかないでしょう。目下の巨大な敵ですぞ。」
叔父の信尹が口を開く。
「だめじゃだめじゃ。北条なんぞに沼田をくれてやる気は無いぞ。」
大叔父の頼綱が反対する。
外務を担う人間と現場の人間の意見の相違。どちらにも正しい言い分がある。
「信尹と矢沢の爺様の言う事、双方分かる。」
父がまとめる。話を長く続ける余裕は無いということだろう。
「兄上、まずは北条と交渉してはいかがでしょう。沼田を取られなければ矢沢の爺様も納得されるのでは」
「信尹、甘いぞ。あの北条は昔からそうじゃ。所領をかすめ取るのが上手いのよ。それでいて困ったら小田原に籠りおる。信玄公のときも....」
「爺様、まず話し合うのみでござる。」
「誰が行くのじゃ。命を取られるやも知れぬぞ。」
そう。叔父の策の危険な点は交渉相手が明らかな敵であるということだった。
「滝川のときとは違うのだ。」
長く戦場に身をおいていた頼綱の経験であった。
「それはもちろん、この信尹が行き申す。」
叔父の決意も相当のようだ。
長い沈黙の後
「.....決めた。信尹、交渉を頼む。最悪、沼田名胡桃以外は北条にくれてやっていい。2つは長く真田の領地だったからな。上野に影響力を残す点でも確保しておきたい。一旦の臣従の話を進めてくれ。」
決まった。だが一旦?
「これから上杉も徳川も動く。真田が生き残るには身の振り方を考えていかなくては。」
北条に付き続けるわけではないのだからそこまで考えて交渉しろということか。
そして会議が終わり人払いをされた。父と同じ部屋に二人きり。これは...
「源次郎、そなたの天啓はどこまで未来を写しておるのだ。」
来た。本能寺を当てた自分への確認とも取れる問い。
先程の一旦というのは自分の答えによっては撤回することもあると考えていたのかも知れない。
「以前も申したように天啓では信長が間もなく死ぬということのみが伝えられました。」
これ以降で役に立ちそうな歴史といえば秀吉の天下になること。そして家康の天下になること。
「そうか。そなたの天啓をすべて信じるわけでは無いが一考の余地があるかと思ったのだが...」
「何かまた分かったらとりあえず儂に伝えてくれ。源次郎。」
「かしこまりました。この源次郎真田の為力を尽くします。」
何としてでも長生きしてやる。そのためには僅かな歴史の知識と現代知識をフル稼働させなくては...
ー同日夜
『おい、この先どうなるんだ。』
眠りにつく直前、源次郎から問われる。
(詳しくは分からない。ただこの後の天下は秀吉が取る。)
『秀吉?聞いたこと無い名前だ。信長の家臣の誰かか?』
(そうだと思う。信長を討った明智をすぐさま討ったと未来では伝わっている。)
『そうか。ならば折を見て真田も臣従先を変えねばならぬかも知れぬな。』
俺は一人ではない。戦国の世を生きてきた源次郎が居るのだ。
まだ不安なことがあるがなんとかしていこう。そう決意し眠りについた。
ー翌日
朝食を摂り、交渉に向かう叔父を見送りに行った。
「それでは兄上行って参ります。何としてでもこの真田を残しまする。」
「頼んだぞ。信尹。」
この信頼関係をみていた兄からの一言。
「源次郎、俺達ももっと役に立てるように頑張るぞ。」
「はい。兄上。」
ー 上野箕輪城 北条氏政、氏直
「申し上げます。真田方から使者が参るようでございます。」
「真田からの使者?そんなもの首をはねてそのまま攻めかかりましょう。父上。真田は滝川を庇ったのです。」
若く血気盛んな当主、氏直の一言
「焦るな、氏直。まだ関東も静まっておらぬ。ここは一度話を聞き真田を利用するのだ。」
「言っただろう?汁は食べる分だけかけると。昔から安房守は知っている。あれは味方でいるうちならあれほど頼りになるものも居ないぞ...」
ー同日昼過ぎ箕輪城 真田信尹 北条氏政、氏直
「真田安房守が弟、真田信尹参りました。」
「おぉ、よくぞ来てくれた。して何用かな?」
「我ら真田、北条様の傘下に入りたくご報告に参りました次第でございます。」
「そうかそうか。真田が協力してくれるならこれほど心強いことはない。」
氏政とは対象的に氏直は不機嫌なままだった。
「おい、真田の。我らの傘下に入るのだったら上野の真田の所領全域をこちらに引き渡せ。」
そう言い切った。あくまで北条が上なのだから従えと言わんばかりな強気だった。
「何卒ご容赦を。我らは織田傘下にありその縁で滝川殿についたのみ。それに所領を失うというのは...」
「それならこのまま攻めかかるだけだ。我ら北条を甘く見るな。」
有無を言わせぬような氏直の詰問。信尹は口を開いた。
ー同刻名胡桃城 真田昌幸、源三郎、源次郎
俺の提案で改めて親子三人での帳簿確認を進めていると
「急報でございます。滝川様から早馬が参りました。」
「すぐに使者に会う。源三郎、源次郎お前達も一緒に来い。」
なんだって城を出た翌日に馬が来るんだよ。何が起こっているんだ?
拙い文章かも知れませんが読んでいただきありがとうございます。何かありましたら感想などお待ちしています。作品制作の励みになります!
明日は祝日ですが変わらずに14時半に投稿いたします。




