それぞれの思惑(1)
本能寺の変が起き、多くの人間の人生が動いていきます。真田家は生きていけるのでしょうか。
父からの一言で皆が俺に視線を向ける。
えーっと、真田って本能寺の後はどう動いてたっけ?なんか昔見たドラマだと色んなところについては裏切ってを繰り返していたような気がするけど。昌幸は「表裏比興」とか言われてた気もする。
ただ、仮に北条が動いているなら北条に便乗し滝川の領地を切り取るか、恩を売ってこの後の織田家政権(秀吉になるから続かない?)にも少しなりとも影響力を持つか?だな。ならば
「一度、滝川様とお会いになるのがよろしいのではないでしょうか?」
時間はかかるかもだが、父の強硬策と兄の融和策はどちらも裏目になる可能性がある。まず他の視点からも現状を把握せねば。
「それでは北条に飲み込まれて終わりなのではないか?」
父からの疑問。真田の規模感では確かにそう考えるのは間違いはない。
「北条は滝川様を打ち倒すのに数を揃えるのだとしたら少し時間はかかるかと。それに滝川様が此方をどう扱うかで立ち回りを決めてもよいのでは?何かあったときに守ってくれる方はそう居りませんぞ。」
兄からの一言。
「まぁ、早馬を飛ばしすぐに話を聞くのであれば時間はなんとかなるか...」
父の納得により一度会議はまとまった。
まず滝川との話を進め、その後の動きで北条、上杉、徳川のいずれかに付く。既定路線は北条だろうか。
ー 滝川一益 厩橋城
「申し上げます。真田安房守殿から一度ぜひお会いしたいと早馬が。」
一益は考えた。ここで真田まで敵に回しては撤退すらままならない。ここは真田を北条の身代わりにしてでも伊勢に帰るべきだと判断した。
「分かった。すぐに会おう。」
ー翌日(天正10年6月10日)
「真田殿、よくぞいらしてくだされた。」
一益からの歓迎。父に同行せよと言われ、俺と兄の二人も面会に参加していた。
「左近将監殿、京での報せ聞き及ばれたかと思われます。そして北条が動いているとか報告も受けまして」
父の最後の言葉に一益の顔が固まる。
「そうだ。私は一戦交え撃退してから所領の伊勢に戻ろうと考えておる。」
その言葉を父はどれだけ信じたのだろうか。
「そうでしたか。ならば我ら真田も左近将監殿にお力添えいたしましょう。すぐさま北条を破り明智を討ち滅ぼし織田家に安寧をもたらしてくだされ。」
精一杯の賛辞を送っているように見える。ただ昨日までの父の態度を見るとどうにも信じられない。
「腹は決まり申した。我ら真田。所領に戻り軍備を整え戻ってまいります。」
一益の顔がほころんだ。安堵なのか、罠に引っかかった愚か者を見る嘲笑なのか...
俺には判断がつかなかった。
面会を終え親子三人で駆けていると
「源三郎、源次郎。左近将監の態度をどう見る。」
「どちらにも取れます。我らを身代わりにするのか共に戦うのか...」
兄も同じ考えだったようだ。
「私も兄上と同じ考えでございます。」
「ならば北条と滝川が戦ってから兵を差し向けるのが一番勝ち馬に乗れるな。」
父が微笑む。
『戦が起きたら変われ。今のお前じゃ力不足もいいところだ。』
(分かってるよ。そのために条件をつけたんだ。)
『ならいい。』
そうして所領に戻り兵の緊急徴兵と兵糧の確保、武器や軍編成などが父の指示のもと素早く進んでいった。
そんなとき時を見つけて父と二人きりで話すことになる。
「源次郎、お主あの言葉が現実になったな。まさかあの熱を乗り越え何か持ってきたか。」
流石にね。あまりにも不自然だもの。急に信長が死にます。って言ってその後割とすぐにその情報が入ってくるんだから。
『ここは俺が行く。お前の弁明は父には通じない。』
(お前が出ていって何かいい案があるのか?)
『これでも16年息子やってきたんだ。まぁ任せろ。』
(わ、分かったよ。戦じゃないけど変わろう。ちゃんと返せよ。)
『どの口でほざいておる。まぁ良い。早く変われ。』
そういえばどうやって変わるんだろう。変わろうと思いながら寝る感じで意識を飛ばせばいいのかな?
ープツン 意識を自分の意思で切れた。めっちゃ暗いな。でも視界はこれまでの身体とは変わらない。
「父上、確かに私はあの熱を乗り越えたとき一度だけ天啓を受けたのです。信長が死ぬ。近いうちに。真田を守れと。そのために必要な能力をお前に与える。と。」
うわ、なんだこれ、自分が喋っているのにそうじゃない感じ。
「源次郎、それはあやかしの類では無かったのか?」
この疑いにどう答えるんだ?俺は未来知識を今喋ってる源次郎本人にぶつけて結果で黙らせただけだしな
「私も最初は疑いました。しかしその天啓の条件や私に与えられた能力は真田家のためになると判断いたしました。」
「お主がそこまで言うなら信じよう。お前は儂の息子の源次郎で間違いないな。」
「はい。間違いなく。」
本物の親子の会話を聞いたような気がする。なんて思っていると意識が戻ってきた。
「源次郎、ここが正念場だ。お主の力も頼りにしておる。頼むぞ。」
「はっ。かしこまりました。」
そうして父からの疑いも一度晴らし、一丸となって生き残りに励むのだった。
拙い文章かも知れませんが読んでいただきありがとうございます。何かありましたら感想などお待ちしています。作品制作の励みになります!




