混乱の渦中に
今回は真田家というより全国の大きな勢力の諸将の反応などを重要視しています。そのためこれまでの話とは異なるテイストになります。
信長が明智光秀に討たれてから数日
「織田信長死す。跡継ぎの信忠も二条城にて死す。」
この知らせが各家の忍びや商人などによって全国へと駆け巡った。
その知らせを受けた諸将はそれぞれの反応を示した。
ー 羽柴秀吉 陣中
「上様が討たれただと?もう儂は生きてゆけぬ」
「これで殿のご運が開けましたな。」
軍師として陣中に居た黒田官兵衛との密談を経て秀吉は後に言われる「中国大返し」を行うのである。
ー 柴田勝家 北ノ庄城
「上様が討たれた?明智許すまじ。すぐさま軍をまとめよ。」
「お待ちを親父殿、まだ上杉と接敵しておりますゆえすぐさま京に向かうのは無理でございます。」
前田利家との話をしている中で佐久間盛政が発言する。
「親父殿、上杉の牽制はこの鬼玄蕃に任せてくれ。心置き無く上様の敵討ちを。」
「すまぬな。盛政、すぐに準備じゃ。」
この動きも素早かったが、殿の用意などに手間取り史実通り敵討ちに向かうことには追いつかなかった。
ー 徳川家康 堺
「信長様が討たれた?そんな馬鹿な。このまま儂も明智に討たれるぐらいなら自害を...」
「お待ちなされ殿。ここは生きて敵を討つのです。厭離穢土欣求浄土をお果たしにできるのは殿のみでござる。」
本多忠勝の説得や服部半蔵の忍者衆、家康の伊賀への仕置きの寛大さなどが重なり伊賀を越え、三河にたどり着いたのである。
ー 北条氏政 小田原城
「信長が死んだか。ならば織田に従う理由はない。氏直(氏政の息子。北条家当主)、すぐさま滝川を攻めよ。」
「はい。父上。承知いたしました。」
北条はすぐさま軍を整え上野(現在の群馬県あたり)にて東の抑えを任されていた滝川一益に襲いかかった
ー 滝川一益 厩橋城
「上様が亡くなられた?これはまずい。すぐさま撤退の準備だ。所領の伊勢に帰る。甲斐の河尻殿や信濃の森殿にも急使を飛ばせ。」
「申し上げます。北条方に動きがあるようです。」
家臣からの報告を受け、一益は憔悴した。
ー 上杉景勝 春日山城
「信長が死んだか。九死に一生を得たな。兼続。」
「そうですな。今のうちに反抗勢力の新発田を討っておかねばこの先の甲斐信濃の混乱に追いつけませぬ。」
信濃の掌握と新発田重家の討伐の両正面作戦に取り組み始めた。
ー 真田昌幸 岩櫃城
「な、なにぃ。信長が討たれただと?源次郎が言っていたことがあっていたというのか...」
昌幸は現実を受け止めること、そして息子の予言じみたことに恐怖を覚えた。
「殿、家臣たちにも報せがいったようで一度殿のご判断を仰ぎたいと。」
頼康の一言で真田家では会議が開かれることになった。
ー 真田源次郎 岩櫃城
「源次郎、お前聞いたか?」
慌てた様子で兄の源三郎が部屋に飛び込んでくる。
「どうしたのですか?兄上。」
「どうしたもこうしたもない。あの信長が家臣の明智光秀に討たれたそうだ。」
その言葉を聞き、俺は心臓がキュッとなった。
本当に起きた。本能寺の変が...
『ま、まさか本当に起きるとはな。そなたは本当に未来の知識を持っているというのか』
本物の源次郎もやはり驚いているようであった。
(だから最初から言っていただろう。)
『ならば次に何が起こるのかも分かるのだろう?』
あ、それはね。ほぼわからんのよな。
(俺はあくまで歴史の専門家ではないから詳しいことはわからん。大枠しか覚えてないのだ。)
これも正直に言うしか無い。俺を頼りにされても困るしな。
『そうか。だが約束だ。適材適所といったか。軍事関連ならば俺が出る。この身体を俺とお前で共有しこの真田家を守るのだ。』
(任せろ。俺も全力を尽くす。)
『あ、頼康との鍛錬は変わらずお前が出ろよ。常に変われるとも限らぬ。お主も戦えるようになれ。』
(おい、それじゃあ源次郎は勉学のときには変わってくれるのか?)
返事が返っては来なかった...
「おい、源次郎。あまりのことで混乱しているのかもしれんが早く来い。父上や家臣たちが集まり真田家のこれからについて話し合いをするそうだ。」
全体の話し合いか。これ、父から頼りにされるかも知れないけどもうほぼ分からないのになぁ。
どう話そうかと考えながら兄に連れられ、話し合いの部屋に通された。
「おぉ、来たか源次郎。それでは皆も揃ったことだしこれからのことを決めるぞ。」
皆が硬い表情で頷く。
「信長が死んだことでまたもや真田家は主を失った。儂のこれからの目的は旧武田家の所領を治める大名になることだ。その後、天下を取ったものに従い、真田の家を残す。」
「皆、このことに異存ないか?」
反論は無かった。皆不安で父の言うことに従うことが真田を守る道だと信じて疑わない。
「ならば儂に一つ提案がある。この後すぐに沼田の叔父上と共に滝川左近将監を攻める。」
...は?滝川を攻めるとか正気かよ。織田が衰退すると読んですぐさま上司だったものに刃を向ける。
父のこの判断力には舌を巻く。だが、
「本当に滝川を攻めねばならぬのでしょうか。滝川殿は確か伊勢にも所領があったはずでは。」
兄からの一言。
「だからじゃ。源三郎。元々の領地に左近将監が逃げ帰るのであればその背を討ったり、空になる城を手に入れられるであろう。」
「しかし、それは不義理では無いですか?ならば撤退を支援しその後に城を譲り受ければよいのでは。」
兄の言い分も分かる。しかしその後の一報で話の流れが変わる。
「急報でございます。北条が滝川方に戦を仕掛けたと。」
「な、何だと。ここまで北条が早く動けるとは目論見が崩れた。」
父が慌てる。周りの家臣たちも少し浮き足たった。
「げ、源次郎。お主はどうするべきだと思う。」
...期待のこもったような視線。別にこれからのことなんて分からないのにぃ。
拙い文章かも知れませんが読んでいただきありがとうございます。何かありましたら感想などお待ちしています。作品制作の励みになります!




