新たな時代への業火
遂に時代の転換点が訪れます。時代の大波に主人公はどう動いていくのでしょうか。
これ、まもなく本能寺なんじゃないか?
知らせを聞いた俺は頭をフル回転させて前世の歴史ドラマやゲームの知識を引き出した。
そうだ。家康も京近辺にいたはず。「神君伊賀越え」とかがあったような気がするぞ
『おい、お前こっちに居たままでいいのか?何をそんなに悩んでいるかは知らぬが』
その一言で周りの商人たちから不審がられていることに気づいた。
「ど、どうかなさいましたか?ご子息様。」
「あぁすまぬ。なんでも無い。よく伝えてくれた。内記、この者に少々の金を」
内記は何故だという顔をしたが、俺に逆らうわけにもいかないのか。渋々金を出し、
「しょ、承知しました。ほら、金だ。大義であったな。」
「皆、此度は話を聞かせてくれてありがたかった。また何かあったら頼む。」
そう言い残し店の外の道の通りに出てすぐに馬に乗る。
「内記、すぐに戻るぞ父上と話をしなくてはならない。」
「か、かしこまりました。」
二人で馬を飛ばしながら内記が聞いてくる。
「源次郎様、あの旅の商人からの話を聞いてから少し様子がおかしいですが何かあったのですか?」
ここで正直に話すわけにはいかないがとっさのごまかしも思いつかない。
「内記、他言無用だぞ。」
「は、はい。」
「信長が討たれるやも知れぬ。」
「な、なんと!」
『お前の予言のことが起こると言うのか!』
内記と源次郎の同時の反応。まず脳内で源次郎に即返事を返す。
(あぁ。もうすぐだ。間違いなく信長は本能寺という場所で明智光秀に討たれる。)
『討つ人間まで知っているのか。明智は信長の腹心だと聞くがそこまで当てれば本当に信じてやる。約束だしな。』
(転生してすぐにした約束を覚えていたのか。俺が転生して一ヶ月くらいか?)
『そうだな。一ヶ月見ていたが少なくとも悪気が無いということは分かった。これを当てるなら認める。』
(それはありがたいね。)
現実でも内記が聞いてくる。
「だ、誰が信長公を討つと仰せなのですか。」
ここで光秀というのはあまりにもだな。ならありそうな話をでっち上げるか。
「徳川殿だろう。武田が滅び、北条も恭順を示した。もう徳川が勢力を広げる場所が無いからな。それに今最も近くに居る力を持つ者だ。」
「ですが先の会見でもそうでしたが徳川殿は僅かな供廻りしか連れていなかったでは無いですか。あの人数では仮に寝込みを襲っても信長公を討てないでしょう。」
あー、それがあったな。いや、待てよ?
「信長は将軍を追放したり、多くの畿内勢力も駆逐している。恨みを持つものを抱えるかもしれん。」
どうだ。この考え。これには内記も納得するのでは...
そう思っていると深く考えたような表情でこう言われる。
「源次郎様、今のことを殿に申されるのはおやめなされ。あまりにも突飛過ぎまする。」
「内記は聞かなかったことにいたしますゆえ。」
だめなのか。内記でこれなら家の存亡を判断する父を説き伏せるにはもっとそれらしい理由が必要だな。
その後は言葉を交わすこと無く屋敷に着いた。
「源次郎様、くれぐれもご報告するのは領内の経済のことのみですぞ。」
「分かっている。心配するな。私も父上を困らせたくはない。」
納得したようなしていないような顔をして内記は下がっていった。
「父上、戻りました。」
「おぉ、早かったな。どうだった?商人町は。」
そう聞かれ、問題になっていたことをつらつらと話す。
「源次郎、他に何か言いたいことがあるのではないか?昨日の農村のときはもっと熱く話しているようだったが。」
やはり気づかれた。気づいてもらいたかったというのもあるのだが。
さてどう話したものか。
「父上、今真田家の動かせる兵力は如何ほどですか?」
「どうしたのだ。急に。」
「これからの話しに関わってくるのです。」
「そうなのか?まぁ隠すことでも無いしな。 約3000程じゃ。」
3000...これは少ない気がする。いやギリギリではあるのだろう。何と言っても軍備に真田家の金銭は多く使われていたのだから。
「で、話とは何じゃ。」
「織田に新たな動きがあります。信長公が京に入るご予定だと。」
「どこから仕入れたのだ。その情報は未だ儂が発している忍者衆からはそのような報告は上がっておらぬぞ。」
「商人町に行った際に京から来たという旅の商人からの噂話として聞きました。」
「噂では儂は動けぬぞ。」
「ですが、信長公の動きを読み切り、事前に用意をできれば我ら真田が大きな武功を挙げられるかと。」
「武功じゃと?ならばまた戦か。信長公はどこを攻めるというのだ。」
ここは想像だがなんとかなれ。
「上杉です。京から北陸に渡り柴田殿と共に武田のように上杉も滅ぼすのでは無いか?とのことで。もう少し軍備を備えるべきではないかと」
「上杉...確かに不識庵殿(上杉謙信のこと)が亡くなられてからも武田と結び粘ってはいたが最近は国内がまとまらずに押されていると聞く。」
深い思考の時間が終わり、父は言った。
「すまぬが源次郎。此度はお主の言うように動くことはできぬ。それほどの余裕が無いのは帳簿を見たお主も分かっているだろう。」
そうだ。俺の言っていることは借金をしてでも株を買えと言っているようなものなのだ。
「かしこまりました。お時間をいただきありがとうございます。」
そういって部屋を出た。
その後数日上の空で頼康との鍛練に励むことになるが、頼康に言われた。
「源次郎様、何を悩んでおいでですか?これでは鍛練の意味がありませぬ。」
「す、すまない。」
「今日はここまでです。これ以上は源次郎様の為になりませぬゆえ。」
昼過ぎに鍛練が終わり、俺はこの先のことを考えていた。真田家がどうすれば生き残るのか。力を大きく持てるのか。そんなことを考えていると日が沈んでいた。
―6月1日夕方 京
明智光秀「時は今、雨が下知る五月かな」
―6月2日未明
「敵は本能寺にあり」
明智光秀のその一言で明智軍約13000が信長の宿舎本能寺に襲いかかった。
僅かな供回りしかいなかった信長は奮戦及ばずに本能寺の業火に消えていった。
「信長様...これからあなた様とはまた違う新しい世が訪れます。」
業火を見ながら光秀はそう呟いた。
拙い文章かも知れませんが読んでいただきありがとうございます。何かありましたら感想などお待ちしています。作品制作の励みになります!




