真田家を強くしなくては(2)
真田家を強くするためにまずは経済を発展させようとする主人公。問題が山積みの真田領を回ることになります。
翌朝、帳簿を確認しに向かった。 その時にも
「源次郎様はお変わりになられた。」
だの
「また源次郎様が何かされるようだぞ。」
なんていう呟きが聞こえた。脳内では本物の源次郎がこのまま身体を取り戻すことに少しの不安を感じ始めたようだ。
『おい。色々やってくれたおかげで皆からの評価が本来の私と異なるものになってしまったではないか。』
(これでも役に立つため、生き残っていくために知恵を絞っているだけなんだけどな)
そう言いながら帳簿を開く。
そこには真田領内の収入と、真田家の支出が細かに書かれていた。膨大の量を確認している中で脳内の源次郎も苦言を呈した。
『何だ。この文字数は頭が痛いぞ』
(お前、ただこちらの目を通して見てるだけだろ。)こっちは更に問題点探してるんだよ
『こんなものを見ても何になるというのだ。ただ記録を眺めていても何も変わらぬ。』
(そうじゃない。何が足りないのか。はっきりさせなくては何も手を打てないから)
だが問題はやはり山積みだ。兵糧収入の少なさと、経済の伸び悩み。特産品の少なさ...
「目下の課題は農村だなぁ。普通に生活するのもやっとじゃないか?」
そういえば普段の食事も麦だったりが多い気もする。武士は白米食べてたイメージだったけど
「どうだ。源次郎。なにか分かったか?」
声がして振り向くと父が居た。
「父上、まずは農村の立て直しが急務だと考えました。」
「農村な。儂も常日頃考えていたがこれは信玄公の頃から変わらぬ課題なのよ。」
真田領はだいたい現代の長野県あたりと栃木県の一部だからなぁ。現代でもそう農作(米)が進んでいるという訳では無かった気もする
そういえば
「父上、農村では肥料なるものを使っているのですか?」
肥料があれば少しでも収穫がマシになるか?
「肥料というのは動物の糞尿のことか?それなら使っていたこともあると聞くが逆に収穫が落ちたぞ。」
え?収穫落ちるの?なんか糞尿使ってたイメージあるけど。何か使い方があるのか?
「父上、ありがとうございます。一度農村を見に行こうと思います。」
実際に見てみないことには話は進まない。
「そうか。頼康を共に連れて行かせるわけにはいかぬからな。 内記(高橋内記)を付ける。」
「かしこまりました。内記とともに領内を見てきます。」
そう言われ準備を済まして城門を待っていると他の家臣よりは少し若い男が向かってきた。
「源次郎様、本日はよろしくお願いします。」
「うむ、内記頼むぞ。」
二人で城下を出て農村に向かうと農作業に取り組む民たちからの視線が向く。
「お侍様じゃ。」「まだお二人ともお若いぞ。」「何かあってこちらにおいでなすったのか。」
農民からしたら急に武士が来るのはそれは恐怖の対象か。
「皆のもの控えよ。ここにおわすのはご城主真田安房守様の御子息源次郎様である。」
内記の一言で皆が平服する。だがそんなことはどうでもいい。
「皆のもの、顔を上げてくれ。此度は農村の現状を把握するために参った。何も気遣いは無用だ。」
皆が顔を上げ困惑した表情を浮かべながら仕事に戻った。
作業具ややはり肥料などの使用はしていないようだ。
「源次郎様、どうです?肥料について民たちに聞きますか?」
内記が小声で問う。
「そうだな。 皆少し良いか!」
近くで作業している民が振り向き答える。
「な、なんでございましょうか。」
「肥になるものを使ったことはあるか?」
今は稲を植える直後の土作りの状態のことが見て取れた。
「ございます。しかし逆に収穫量が落ちましてございます。」
だが使うに至ったのは何か理由があるはずだが...
「何か使ったわけでもあるのか?」
「他国からの伝聞でごぜぇます。動物や人間の糞尿を使うのが良いと」
伝聞なら詳しい内容が伝わってきていなくてもおかしくはない。
「なるほど、それで糞尿などはどこかに溜めてあったりするのか?」
「い、いえ、臭いもありますので糞尿は出たら土に混ぜていました。今は河に流しております。」
.....それはアカンよなぁ。 てか河に流すのはもっとヤバい。まぁこれは一度抑えておいて
「そうか、私もそこまで深い知見があるわけでは無いのだが一つ聞いたことがある。」
「肥になるものを使うのは今、土を作っている段階だと聞く。」
「それに糞尿を河に流すと飲水が汚れ体調を崩すとも」
驚いた顔をされた。
「し、しかし使わない時期に糞尿をおいておくのは我らも厳しいものがあるのですが...」
トイレも下水も無い時代だもんな。でも俺は決めるぞ
「まずひとつ決める。少しの土地でいい。今の時期に糞尿を混ぜよ。そして糞尿は河に流すな」
「そ、それで収穫が少なくなったときには...」
「私が責任を取ろう。」
「かたじけのうございます。糞尿を河に流すのを禁じられてしまえば我らは臭いに耐えねばなりませぬ。」
えーっと。どうすれば使わない時期にも糞尿を処理できるかなぁ。
「うーむ……」
俺は腕を組んだ。
(確かに、流すなと言うだけでは何の解決にもならない。では、どうする?)
人間は毎日食べ、毎日排泄する。肥料に使わない時期にも糞尿は出るのだから、どこかに保管する必要がある。
しかし、ただ一か所に集めればよいというものでもない。臭いもあるし、雨が降れば流れ出す。飲み水に混じれば病気の原因にもなる。
(肥溜め……いや、ただ穴を掘ればいいという話でもないか)
『おい、先ほどから何を唸っているのだ。何か策があるのではないのか?』
(あるならとっくにやってるよ!)
心の中で源次郎に言い返し、俺は農民たちに向き直った。
「ならば、こうしてはどうだろう。人の住む場所から少し離れたところに、糞尿を集める場所を設けるのだ。雨水が入り込まず、川へ流れ出さぬようにする」
「集める場所、でございますか?」
「うむ。田畑に使う時期が来たら、そこから運び出す。もっとも、どれほど置けばよいのか、どのように使えばよいのかは、試してみなければ分からぬ」
『ずいぶんと頼りない策だな』
俺の言葉に、農民たちは深々と頭を下げた。
しかし、俺の頭の中にはまだ問題が残っていた。
(糞尿を集める場所を作るとして、誰が管理する? 誰が運ぶ? その手間はどうする?)
一つの問題を解決しようとすれば、また別の問題が生まれる。
現代の会社でさえ、制度を変えるには人手も金も必要だった。ましてや、ここは戦国時代。領民に命じるだけで全てがうまくいくわけではない。
「内記、城に戻ったら父上に相談したいことができた」
「はっ。肥料のことでございましょうか?」
「それもある。だが、領内の仕組みそのものを変えねばならぬかもしれぬ」
俺は農村を振り返った。
真田家を強くする。思ったより簡単では無いかも...
投稿が遅れすいません。
拙い文章かも知れませんが読んでいただきありがとうございます。何かありましたら感想などお待ちしています。作品制作の励みになります!




