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真田家を強くしなくては(1)

信長との面会を終え、まもなく本能寺が起こると感じる主人公。短い時間でも真田家を強くしようと動き出します。


信長の面会を終え、俺達は帰路に着いた。織田家における真田家の立ち位置も安定したと父も兄も感じているようで時々笑顔をこぼしていたが俺には目下の課題があった。


(本能寺はまもなく起こる。少なくとも今年中には。)


『それをお前は知っているなら何か真田家にとって役立つことをしておけ。まぁ私はそんなこと信じていないがな。』


あ、この呟きは聞こえちゃうのね。実際頭の中にいる幸村にどこまで俺の思考はバレてるんだろう。


___夜 真田屋敷


父は上機嫌で宴を開いた。それほど父は今の立ち位置に不安を感じていたと帰りに考えていたことが確信に変わった。


「いやぁ。なんとかなった。最後まで抵抗した旧武田家臣の中では珍しくお咎めなしであった状態を続けられたのだからな。もう天下は動かぬだろう。織田の天下だ。その中で生き残っていかなくては。」


そう父が語り、周りにいる兄や重臣たちも頷く。改めて当時の人にとっての本能寺の衝撃度が分かった気がする。


本能寺の詳しい時期は分からないが準備は早いことに越したことはない。一つ提案してみるか。


「父上、一つよろしいでしょうか。」


皆の視線が集まる。だが、少しの期待を含めた視線のように感じた。下駄のきっかけを作ったからかな?


「うむ。よいぞ、申せ。」


「なら、失礼して。まず誰が何をするのか?というのは真田家は分けていらっしゃいますか?」


その言葉に皆が頷く。


「まず沼田方面の軍事と統治は矢沢の叔父上(矢沢頼綱\真田昌幸の父幸隆の弟)にお任せしている。」


「そしてこの小県近辺は軍事を頼康に、そして内政を綱家(河原綱家)に任せている。もちろん全てを儂が管理はしているがな。」


なんてことだ。これは現代に落とし込めば本社の社長と部長二人、そして支社の社長が決まっているだけではないか。これでは情報の伝達や、業務の遂行に時間がかかる。それならば提案すべきは...


「私が提案するのは仕事を細分化して誰が動いているかを決めることです。」


そう言うと皆からは信じられない。無謀だ。そう言われた。しかし、父だけは黙っていた。


「源次郎、そう言うからには成し遂げなくてはならない理由と方法があるのだろうな?」


これは確認だ。前世で嫌というほど経験したこの感覚。信用はしているが信頼をしていないときの言葉。


信頼を勝ち取るために前世では大量の資料を用意したが、今は資料はない。言葉のみでの勝負だ。


「まず、理由からお話します。家臣たちはまず頼康や綱家、沼田の方面では矢沢の爺様にお伝えし、それらを父上に上げ、判断を仰いでから仕事に取り掛からなければなりませぬ。そのことにどれほどの時間を要してしまうのか。待つ中での変化など問題は山積みです。」


「それはそなたの言うとおりだがどこまで判断を委ねられるものを増やすかということまで決めねばならぬぞ。」


責任の所在ということだろう。家の存亡に関わるのだから当然だ。


「まずは大枠を決めてしまいしょう。これまでの大役は変えずにその中でいくつか部署を作るのです。」


「まず軍事側は兵糧管理の部署、兵士訓練の部署、徴兵の部署、そして装備の部署に分けそれぞれに長を決めたうえで総責任者として頼康を置けばよいのでは無いでしょうか。」


『お前の言う事は多少私も理解できるが、恐らく父上はこれをお認めにはならぬぞ。』


(え?なんでだよ。)


『恐らく父上がお話になる。それを聞いてから改めて考えてみよ。』


なにかまずいことあるか?きちんと理由も示したし分ける内容まで決めたというのに


「源次郎、お主の考えは確かに正しいのやもしれぬ。だがそれはできぬのだ。」


「それは何故です?」


その原因が分かれば対処のしようがある。


「人材不足だ。」


あぁ。人材、人材かぁ。確かに屋敷内でせわしなく家臣たちは動いていたけど何度か同じ顔を見た気もする。 どこかに人材は転がっていないものか。 


ん?武田は少し前に滅んだんだろ?なら


「旧武田家臣団はどうなのですか?皆が父上のように織田に臣従してもとの領地を保てていたというわけではないでしょう。声をかければ来てくれる方もいるのでは。」


父もそこそこの地位にいたはずだ。でないとあそこまで面会で持ち上げられないはず。


「うーむ。来てくれる者はおると思うがな。まず禄を払えぬのだ。今の家臣を養うので精一杯ということじゃな。それに他にも少々問題がな...」


げ、そもそもの経済からヤバいのかよ。てか他の問題ってなんだよ。


『我らの領地は決して豊かな土地ではない。父上はこれまで武功で応え、その恩賞を持って家臣たちに報いてきたのだ。武田家中では真田は新参者でもともと持っていた沼田に加えて小県を与えられた家で古参の者共から父上は少々反感を買っていた。』


(そんなことがあったのか)


『新府での人質のときに古参家臣の息子とやらに真田を馬鹿にされたときは思わず殴ってしまったぞ』


(...源次郎、お前そんな荒くれ者だったん?)まさかの事実判明。まぁ武芸大好き人間だったなら喧嘩っ早いのも納得はできるけども なんて考えていると


「源次郎、そなたの案は悪くはない。国が安定すればいずれ採用しようと思うぞ。」


父からの承認。とりあえず改革の一歩目を進めれたってことでいいのかな。じゃあとりあえず経済をなんとかしよう。父や源次郎による人間関係には一度目を瞑ることにする。


「父上、ならばもう一つお許しいただきたいことが。」


「なんだ?申せ。」


「真田家の帳簿を見せていただきたいのです。この家に何が足りないのか、何があるのか知るためには見るしかないものかと。」


そう述べているときにも周りの家臣たちは信じられないようなものを見るように此方を見つめる。


「源次郎様、鍛錬のときから思っておりましたが本当に熱がお下がりになってから人が変わったようですな。帳簿を見たいと申されるなど」


頼康に言われてしまった。正解ですよ。うん。混乱するので言うつもりは無いけどね。


「確かに馬の提案の時も以前の源次郎なら「早い馬を贈れば喜ぶでしょう。」とか言いそうだったのにな」


兄からも追撃。さっきの話もそうだけどどれだけ武辺者だったんだ。


「まぁ。そのことは良いわ。帳簿じゃな。良いぞ、好きなだけ見るが良い。何かあったら伝えてくれ。」


「ハッ。かしこまりました。」


この一言が明日の俺を地獄に追い込むことになる。


この作品から投稿を毎日14時半に一話にしていきます。

初めての投稿で拙い文章かも知れませんが読んでいただきありがとうございます。何かありましたら感想などお待ちしています。批判、直すべきところなどどんどんお願いします!作品制作の励みになります!

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