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冬の国の物語  作者: 茅ノ森ちまき
第一部第一章 大体いつものこと
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雪原の届け先

「レミー、機嫌いいね? いいことでもあった?」

「うん! みんな元気になったから!」

 隣で仕事をするマリーに元気よく返事をして、レミーは報告書に署名する。

 インクが滲まないくらいに乾かしてから、丁寧に細長く折りたたんだ。

「鳥舎行ってくるね!」

「あ、ついでにこれも」

 マリーが同じように細長く畳んだ報告書を渡してくるので受け取り、鳥舎に向かった。

「ゼロの鳥、まだこっちにいるよね?」

「ええ、まだいますよ」

 鳥舎の係に案内され、レミーは止まり木にいた鳥に近づいた。

 飛信用の鳥は、ハナハトと呼ばれる雪の中も長く飛べる寒さに強い鳩だ。

 訓練することで決まった場所や人との間を往復して飛べるようになっていて、重要な通信手段になっている。

 しかしながら、止まり木に止まっていると白くて丸くて可愛らしい。

 もふもふの胸元にある通信筒を開け、二通の報告書を差し込んだ。

 最後に鳥に餌をやり、空に離す。

「よろしくね!」

 鳥は澄み渡る朝の空に羽ばたいた。

 見渡す限りの雪原。

 そして雪をかぶった森林。

 万年雪の積もり続ける大地を、まっすぐに。

 やがて、前に人の手から放たれた場所へと辿り着く。

 しかし、そこにはすでに誰もいなかった。

 その場所の上を何度か旋回すると、徐々に範囲を広げながら飛び始めた。

 しばらくして、人の足で一日ほど離れた雪原に、厚い外套を着込み、頭から首元、足の先に至るまで防寒具で覆った人影があった。

 フードの端から黒髪が僅かに覗いており、手には使い込まれた、歩くだけにしては太めの一本の杖を持ち、肩には小型の猛禽を乗せている。

 鳥が人の上をぐるぐると旋回していると、猛禽が気づいたように人間の肩から低く飛んで離れた。

 それに気付いた彼も足を止め、空を見上げる。

 猛禽が離れたことで鳥が近づくと、革手袋をつけた腕を差し出し、鳥は迷わずそこに降り立った。

 差し出された餌を鳥が飲み込むと、彼は通信筒から手紙を取り出した。

「……概ねは問題ないな」

 しかし二枚目を読むと、動きがしばし止まり、その後に笑ったのか、肩が少し揺れた。

「……やりすぎだ、レミー」

 予め書いてあった手紙を折りたたんで通信筒に入れ、鳥を空に離した。

「あと二日ほどか」

 それまで離れていた小型の猛禽が彼の肩に戻り、彼は再び雪原を歩き出した。



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