安心の素
木枠のベッドが身動きに合わせてギシと鳴った。
「……温かいものを入れてくるから」
まだ動けないでいるレミーの耳元で伝え、頷くのを確認してから、身体を離す。
ベッドから降りて部屋の端の小さな台所で湯を沸かしている間にカップを用意した。
レミー用に置いてあるココアの箱から匙で三杯、あと砂糖を少し入れて、沸いた湯でよく溶かす。
その上で少し水を差し、飲みやすい温度に調整した。
カップを持って戻ると、少し落ち着いたレミーが身体を起こしてベッドの端に座っていた。
ココアを渡すと両手で受け取り、カップを少し傾けて口をつけた。
熱すぎないことに気付くと、ゆっくりと啜り始める。
その間に小袖の合わせを直し、帯を結び直した。
しばしカップの中身を見つめていたレミーが、ふと口を開いた。
「……その話の感じだと、アマレットとモルトの幹部の仲はすごくいいんだね」
「そうだ。幹部は全員アマレットを次期領主として認め、現状の幹部だけで運営する状況をあくまで仮としている。アマレットも幹部を信頼している」
「じゃあ、大丈夫なんだな……」
自分に言い聞かせるように言葉にし、もう一度ココアを啜った。
最後に襟元を整え、自分の分が終わるとレミーの立襟のボタンを留め、タイを結び直す。
「落ち着いたか」
「うん。ありがと、ゼロ」
いつものように首筋と頬に触れて様子を確かめる。
これでひとまずは安心できた。
「無理はせずに」
マリーの会議が終わる頃なので部屋を出ようとしたところ、レミーが軽く俯いたまま服の裾を弱く引いた。
落ち着いたとは言っているが、まだ不安が残っているのだろう。
「……じきに夕刻だ。また、夜に」
柔らかい巻き毛を撫でて額に口付けを落とすと、少し納得した様子で裾を離した。




