第十九話 約束の場所
その夜。
三人は同じ夢を見た。
初めてだった。
完全に同じ夢。
同じ場所。
同じ景色。
同じ時間。
白い世界。
何もない。
上もない。
下もない。
ただ光だけがある。
その中心に、
一本の木が立っていた。
大樹。
どこまでも高い。
枝は世界の果てまで伸びている。
葉は星のように輝いている。
ユウは立ち尽くした。
「ここ……」
知っている。
初めて見るのに。
知っている。
リクも同じだった。
ミナも。
三人とも。
帰ってきた。
そんな感覚があった。
そして。
木の根元に、
誰かが座っていた。
K。
今度は隠れていない。
逃げてもいない。
ただ座っている。
昔からそこにいたように。
Kは笑った。
「久しぶり」
三人とも動けなかった。
何千年。
何万年。
どれほどの時間が流れたのか。
分からない。
だが。
やっと会えた。
そんな気持ちだけがあった。
「K……」
ユウが呟く。
Kは首を傾げた。
「その名前も懐かしいな」
その言葉に、
ミナが反応する。
「違うの?」
Kは少し考える。
そして笑った。
「Kは君たちが付けた名前だよ」
世界が静まる。
「本当の名前は?」
リクが聞く。
Kは首を振った。
「ない」
三人が黙る。
「最初からなかった」
Kは木を見上げた。
「だから消えられた」
その言葉の意味が分からない。
だが。
重要なことだけは分かる。
Kは嘘をついていない。
「ずっと待ってたのか」
ユウが聞く。
Kは笑う。
そして。
初めて否定した。
「違う」
静かな声。
優しい声。
「信じてた」
その一言が、
三人の胸に落ちる。
待つと信じるは違う。
待つのは不安だ。
信じるのは委ねることだ。
Kは立ち上がる。
大樹に手を触れる。
その瞬間。
無数の世界が現れた。
空中に。
光の粒として。
一つ一つが世界。
一つ一つが未来。
選ばれた世界。
選ばれなかった世界。
全部。
Kはそれを見る。
愛おしそうに。
本当に愛おしそうに。
「見える?」
三人は頷く。
見える。
今まで見えなかったものが。
消えたと思っていたものが。
全部。
そこにある。
消えていない。
Kは微笑む。
「だから言っただろ」
一拍。
「消えてないって」
その瞬間。
ユウの中で何かが繋がった。
ようやく分かった。
何度も迷いながら、
何度も立ち止まりながら、
自分が辿り着いた答え。
決めない。
残す。
揺れる。
それは思想ではなかった。
記憶だった。
もっと古い。
もっと根源的な。
約束だった。
Kはユウを見る。
真っ直ぐ。
そして。
初めて問いかける。
「じゃあ聞く」
世界が静まる。
大樹も。
光も。
時間も。
すべてが止まる。
Kは笑った。
最初に出会った時と同じ笑顔で。
「今の君は」
一拍。
「何を残したい?」
その問い。
それこそが。
約束の核心だった。
そして。
三人は気づく。
これは再会ではない。
試験でもない。
思い出すための旅でもない。
最初から。
この問いに、
もう一度答えるために来たのだと。




