第十三話 世界が一つだった頃
その夢は、
今までと違った。
ユウは一人ではなかった。
四人いた。
確かに。
今度ははっきり分かった。
白い場所。
光だけの世界。
まだ観測界もない。
管理界もない。
人間界もない。
ただ。
可能性だけが存在している。
そんな場所。
四人は輪になって座っていた。
ユウ。
リク。
ミナ。
そして。
K。
初めて。
顔が見えた。
穏やかな顔だった。
男とも女とも言えない。
年齢も分からない。
だが。
なぜだろう。
懐かしかった。
家族に近い。
そんな感覚。
Kは笑っていた。
いつもと同じように。
まるで、
これから自分が消えることなど知っているのに。
それでも笑っているように。
「本当にやるの?」
夢の中で、
ミナが聞いた。
今より少し幼い声。
Kは頷く。
「うん」
「たぶんこれしかない」
リクが反論する。
「他にも方法はある」
「観測を増やせばいい」
「管理を強化すればいい」
Kは首を振った。
「それだと決まっちゃう」
その言葉に。
ユウが顔を上げる。
夢の中のユウ。
まだユウではない。
悠真でもない。
もっと前の存在。
「決まると何が悪い」
Kは少し考えた。
そして。
小さく笑った。
「全部消えるから」
世界が静かになる。
その言葉だけが残る。
全部消える。
選ばれなかったもの。
叶わなかったもの。
生まれなかったもの。
出会わなかったもの。
語られなかった物語。
Kは続ける。
「僕はそれが嫌なんだ」
優しい声だった。
怒りではない。
反抗でもない。
ただ。
悲しみだった。
「だから」
一拍。
「誰かが残らないといけない」
その時だった。
世界の奥で何かが鳴った。
鐘のような音。
いや。
もっと大きい。
世界そのものが軋む音。
Kが立ち上がる。
そして。
四人の中心へ歩いていく。
そこには。
一つの光があった。
世界の核。
まだ名前のないもの。
可能性そのもの。
Kは振り返る。
三人を見る。
優しく。
寂しそうに。
そして言った。
「約束して」
その言葉で。
ユウは目を覚ました。
朝だった。
涙が流れていた。
理由は分からない。
だが。
分かってしまった。
Kは消されたのではない。
犠牲になったのでもない。
Kは選んだ。
自分で。
そして。
その選択は、
今も続いている。
同じ朝。
ミナも目を覚ましていた。
珍しく泣いていた。
夢を見た。
同じ夢。
そして。
最後の言葉だけが残っている。
『約束して』
何を。
何を約束したのか。
そこだけが思い出せない。
その時。
机の上の紙が光った。
Kの紙。
そこに新しい文字が浮かぶ。
『もうすぐ思い出す』
そして。
さらに一行。
『でも思い出すことが答えじゃない』
ミナは息を呑む。
思い出すことが答えではない。
では。
答えとは何なのか。
その時。
初めて。
ミナはKが何を守ろうとしていたのかを感じた。
Kは記憶を守ろうとしたのではない。
約束を守ろうとしたのでもない。
もっと違う。
もっと大きい。
「可能性……」
その言葉が自然に出た。
そうだ。
Kが残そうとしたのは。
可能性そのものだった。




