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終末後遺症  作者: Anzsake
あの日の約束が、終わらない物だと知らなかったから
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カリン:不可視の涙

死体の数は確認出来る範囲で21。既に燃やしているからもっと多い。僕はここのコミュニティに初めてちゃんと入ったから分からないけれど、刃物による刺し傷や弾痕から、キョウヤが殺ったのは分かる。


「なんだよこれ……」


ハチが検査キットを落とした。ガラスが割れて微かに薄桃色の着いた水が溢れる。

色がついた事で、キョウヤに渡された機械で連絡を入れるはずが繋がらず、そのまま戻ってきてこれだ。


「俺が殺した。これで原発問題はスムーズに進む」


「ふざけてんのかお前……」


ハチが静かにキレる。キョウヤは顔色を変えない。


「ふざけてないし狂ってもない。俺は次世代が生きていける事を最優先に考えている。大丈夫。殺したのは一部の抵抗した大人だけだよ」


実際、死体は成人男性ばかりだ。広場の火の中に、焼け残った靴が見えた。それが落ちて火から離れる。真っ黒な足首が靴の中に残っている。


「弔う資格なんてないだろ……」


ハチが小さくこぼす。横のフェタが口を抑えて固まる。ミズキは目を見開いて立ち尽くす。


「リオは残念だった。きっと人より見えるから耐えられなかったんだろうね。ミズキは大丈夫?」


キョウヤの問にミズキは応えない。代わりに僕が前に出る。


「殺しておいて、火葬のつもり?」


「まぁそれもあるけど、そのうち来る京都の人間が、こんな有様じゃ作業は出来ないだろ?」


「思想の対立?」


「まぁ、そうだね。でもそれだけじゃない。俺の私怨もある。スミもホルンも撃たれて、俺の信念に反する奴が、自分たちだけ被害者みたいな顔して」


そう言いながら持ち上げた死体の顔と目が合う。キョウヤの手を掴む。


「殺さなかった人間は?」


「さぁ?」


「報復は考えなかったの?」


「それは甘んじて受け入れるよ。陸鰭を討伐し、原発問題が解決したらね」


「今ここで、僕がキョウヤを殺しても抵抗しないと」


「しないよ。でも君たちの目的に反するし、第一カリンに、ここの人たちに思い入れなんて無いだろ?」


「無いね」


「俺もない」


キョウヤの腰にマフラーを巻き付けて、瓦礫の方に投げ飛ばす。受け身を取って落ちるキョウヤが、そのまま座り込むようにして動かず僕を見る。


「後はやっとく。あんたはさっさと陸鰭の方に行きなよ」


「……はは、悪いね」


ハチが僕の方に来て肩を掴んだ。


「いいのかよ、あいつ放置で」


「なんで?」


「こんなに人を殺したんだぞ!?」


「それなら、僕も変わらないでしょ?」


ハチが何も言えず黙った。奴隷を使ってたコミュニティで、僕は人を殺したし、それよりも前からずっと、殺人はした。


父親も殺した。ツユクサも殺した。悪い事をしたとは思ってないし、師匠はそれを咎めなかった。


ホルンが倒れている死体を抱えて持ってくる。近くに落ちていたシャベルを取ってハチに渡す。


「どこか、埋められる場所を探してきて」


―――


最悪な匂いの炎に木をくべる。人を燃やす為に火の番をする。何時間経ったか、昼は夜になり、炎の中の黒が見えなくなった頃、木を入れるのをやめた。

炎が勝手に消えてから炭の中から骨を取り出す。どれが誰のかなんて分からない。キョウヤはずっと同じところで座り込んでいた。


フェタもしゃがんでふせている。ミズキがやっと動きだした。ハチの手伝いに行く。


骨を纏めて、ハチ達が掘った穴に入れる。その頃には次の朝だった。


土を被せる。ホルンとハチが手を合わせる。僕にこの人達に手を合わせる資格があるのかよく分からないけれど、とりあえずやる。


師匠は手を合わせてたか、思い出そうとするけど曖昧だ。曖昧って事はやってなかったのかな。


火も消えた町の跡を見つめる。横のホルンが僕の服の裾を掴んだ。


ずっと伏せているフェタのところに行く。ハチがフェタの頭を揺らす。


「行こうぜ」


「……なんなの、あんたら」


「俺も分からねぇよ。なんだか変な映画を見てる感じっていうか」


「人が死んでるのに、そんな飄々としてられるもんなの?」


ハチと目が合う。ホルンもミズキも真顔のまま目を合わせる。


「なんて言うか。他人が死ぬ事ってなんか、もう当たり前っていうか」


フェタが顔をあげる。口を固く結んで、何か言おうとしているのを堪えている。泣いてない。フェタもハチも、みんな泣いてない。


誰の思想だとか、誰が死んだとか、そんな話はこの世界に溢れかえっている。結局フェタも、小さく息を吐いて立ち上がる。


「……悲しむべきなんて考える方が、間違ってるのかな?」


答えは出ない。ハチが立ちながら少しだけ俯いて、また顔をあげる。


「知らねぇよ。行こうぜ」


結局最後まで座り込んだままキョウヤを見る。じっとこちらを見ていた。目が合った時、また笑った。相変わらず悪そうな笑顔だ。でも多分、本人はあれが普通なんだろうな。


戦車の方に歩く。もう来ることは無いんだろうな。原発とか思想とか、僕は分からないから、ゼットだって言う彼らに任せてしまおう。


欠伸をした。


■福井コミュニティ

終末1年 集った人が敦賀にコミュニティを作る。

終末2年 元の居住である敦賀を追い出される。

終末3年 ヒマワリ旅団と接触。

終末5年 東京奪還の噂。

終末6年 海峡化により京都と断絶。

終末6年 軍の駐屯基地より武装を入手、鎖国を行う。

終末7年 原子力発電所が海峡に沈んでいる事を知る。

終末10年 スミとの接触、会談の後、原子力発電所に付いての対策を進める。

終末10年 嵐の直撃に遭遇する。

終末10年 キョウヤにより約30人の殺害、住民の逃亡により壊滅。

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