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終末後遺症  作者: Anzsake
あの日の約束が、終わらない物だと知らなかったから
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キョウヤ:デッドネーム

英雄ベゴニアなら、ソウジロウも主人公なら、今のも避けたんだろうか。まぁ気にしても仕方ないか。ソファでリオが固まっている。外の声が止んだ。ソファから立ち上がる。


「ソウジロウはすげぇよな。この規模のコミュニティをゼロからちゃんと回すのは俺には無理だ」


ドアまで歩いてリオの退路を塞ぐ。リボルバーを回す。


「でもな。ここは発展途上の中世じゃなく終末なんだよ。俺たちゼットが残しまくった後始末が山ほどある。それを無視して明日ばかり見てられないんだよ」


リオが思い切り立ち上がって逃げようとした。ペキリと音が鳴って左足首が折れた。義足なのは歩き方で一発で分かる。


「ただ受け入れるか、退いてくれるだけで良かったんだ。でもお前はあろう事か、次世代のホルンも、話し合いに来たスミも撃ったな。おっと、撃ったのは違う人か」


血を流し、目を半開きにして倒れるソウジロウの顔を見るようにしゃがむ。どこまで聞いてるんだろうな。


リオが顎をガタガタ言わせ、揺らぐ黄色の瞳で俺を見ている。


『俺たちは、これから産まれてくる人が幸せに生きれるようにしていかなきゃいけないんだ』


「安心しろよ、俺はアルファは殺さないからよ」


ドアを開ける時、背中から小さく「殺してやる」と聞こえた。ドアを閉めて近くの棚を動かす。少し棚が揺れるが、あの脚では倒すのは無理そうだ。後で退かしてあげよう。


階段を降りながら帽子をかぶり、リボルバーのリロードをする。バッテリーシリンダーに電池を装填し、ムチを伸ばして柄の先に鎌の刃を装着する。

外に出る。子供を抱きしめる女、飯を置いて俺を見る男、近接武器を持つ男。


「たった今、ソウジロウ君を殺害しました。近い未来ここに

京都から、原発対策部門が来るので、立ち退き又は受け入れをお願いします」


数秒の沈黙の後、ヤジが飛んでくる。OK聞く気はない。息を吸う。


「尚、抵抗するような事がある場合、放射能を世に振りまく害獣と見なし、殺処分とします」


虫喰いは嫌いだ。人みたいな見た目に抵抗があるし、恭弥を殺した。だからって恨んじゃいない。


数人の女が子供を連れて下がっていく。いいぞ。壁のように立ち尽くす男の中に、1人知ってる顔を見かけた。怯えたそいつが小さく喉を鳴らす。

ホルンを撃った奴だ。感情に振り回されるな。こちらからは仕掛けない。


後ろで硝子が割れた。リオだ。振り向いた瞬間、前方から銃を構える音がした。

例のあいつだった。発砲した弾丸は俺に当たらなかった。勿体ない。嬉しい。


踏み込んでそいつに急接近し、鎌を振り下ろす。頭に突き刺さって噴水みたいに血が漏れる。


『俺たちゼット世代がきちんとしてないと、この子にも悪影響だろ?だからもう、下世話な話は辞めよう』


あースッキリした。


殴りかかってきた男の拳をひらりと躱し、鎌を突き立てる。頭の中でBGMが流れる。なんて名前のクラシックだったか。メロディが優雅で、まるで我慢していたトイレで解放したような。そんな気分で人を殺した。


『あの化け物に対抗できるような装備を作る。それで俺達がみんなを守るんだ』


鎌を横に振りかぶる。人の首の骨が引っかかってちぎれる。鼻歌を鳴らす。荒い呼吸で鼻歌がブレる。


『なんかごめんな。俺のわがままに付き合わせちゃって。でも、お前が居てくれて助かるよ、⬛︎⬛︎』


結局あいつは、自慢の装備を虫喰いに振るえなかった。何処までもお人好しで、利他的で、そして弱い。

 

あの頃は違ったはずだ。パンデミックよりも前のお前は、俺たち3人で馬鹿して笑いあってたのに、鷲見恭弥は変わってしまった。


それがかっこよくて、憧れで、本当に大嫌いだった。だから俺はこの名前を使う。この名前を残す。偽善者にもなれなかった元の名前なんて、なんの価値も無い。


何処からか火が広がった。給仕が消化せず逃げたか。何処までも怠惰な連中だ。

 

逃げる女を守るように男が立つ。別に俺は虐殺者じゃない。女子供は狙わない。

信頼と貨幣で回すこの終末も、結局暴力は有効打になりうる。


あぁでも、もう地元の伊勢には帰れないな。恭弥の名前で信頼を潰した。俺の名前も、ずっと前に死んだ。京都が紀伊孤島を使う事だって飲み込んだ。

ただ俺は、あいつの理想を叶えてやりたいだけだから。


突っ立ってるガキと目が合う。ハチに花を渡した女の子だ。鎌で紫陽花の花弁を切って拾う。

 

「持っていきな。また咲かせてやれよ」


ガキの前に花を投げる。震えながら拾って走り去っていく。

何人殺したかな。数えてないし、数えたくもない。ゲームでやってた以上に、パンデミックで見た以上に、あっさりしてて臭くて、クソみたいな気分だ。


幼稚園の中に子供は居ない。リオを閉じ込めた部屋の棚が横に退かされている。


中にはスミが居た。リオは泡を吹いて倒れている。


「死んでる」


「そうか」


「恭弥が見たらなんて言うかな?⬛︎⬛︎」


スミは笑うでもなく、睨むでもなく、ただ淡々と言う。


『そんな怖い顔するなって、ほら、お前がわらってるの、俺は好きだぜ?』


そう言って、爽やかに笑うあいつを思い出す。いつもみたいに、スミに笑ってみせる。


「ん?あぁ、キョウヤは俺だよ。⬛︎⬛︎⬛︎」

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