ソウジロウ:逆光
倒れた柱を溶断する火花が散る。半分に割ったそれを、男たちが担いで運んでいく。食事の匂いが漂って来て、数人が足を止めた。
「休憩を取る前に、ここの区画を終わらせるんだ」
「はい!」
手元の帳簿に記した図式の一角に斜線を引く。ここはもう時期片付く。
首に掛けたタオルで汗を拭う。片付け途中の割れた窓から、虫が暴れて家具の倒れた倉庫の屋内を覗く。サボっている奴らを睨みつける。
「ヒッ」
「窓の破片が残っているな。これら全て、まだ使える物なのか?」
「い、いえそれは」
「昼までに破片は全て片付けろ。上の階も全てだ」
「はい!!」
この区画には何も書かず、更に周って幼稚園に戻る。
「ソウジローおかえりー」
「おう、ただいま」
「ソウジローおなかすいた」
「お、俺もなんだ。今日は何だろうな?」
靴を脱いで屋内に入る。左に曲がってドアを開ける。いつものようにリオが座ってぼーっとしている。
「お帰りなさいませ」
「また見てるのか」
適合者特有の、どこかの過去を知る力。リオは1人の時にそれを使うが、予言じみた事は言わない。
「あはは……お茶、淹れますか?」
「気にすんな。水でいい」
ポットからぬるい水をコップに注いでリオの隣に座る。バインダーを目の前の机に投げるように置く。
「お勤めご苦労さまです。領主様」
「あぁ」
「ごめんなさい。僕も参加出来たら良かったのですが」
「脚は?」
リオが左脚のズボンを上げる。靴を履いた金属製の簡素な義足が足首辺りから付いているが、また錆が増えた。
「最近、偶に変な音がなります」
「……そうか」
少し弄る。関節も硬い。ヒマワリさん達に譲って貰ったもので、作り方こそ教わったが、そんな製鉄技術は持ち合わせていない。木でも作れると言っていたが、今は余裕がない。
リオと目が合う。不安そうにするリオの頭を撫でて笑ってやる。
扉が開いた。つばの広いカウボーイみたいな帽子を脱ぎながら、キョウヤが部屋に入ってくる。
「あちぃー」
「ここはお前の自由部屋では無いぞ」
そう言いつつ、コップに水を注いで出してやる。復興がこれだけ早いのは、間違いなくこいつのおかげだ。全体の指示や流れを作るのは、それまでの俺には出来なかっただろう。
キョウヤは水を飲んで渋い顔をする。
「ぬるいなぁ」
「常温なんだ。菌は大丈夫だ。すまないな」
「いえいえ」
ノックと共に、給仕をしてくれる女性が入ってくる。3人分の食事を持ってきてくれた。キョウヤが頼んだのか。
並べられた質素な本膳料理に手を合わせる。キョウヤも自然に行って食べ始めた。
「復興の進捗は?」
キョウヤが食べながら聞いてくる。
「全体で見れば4割だな」
「結構早いじゃん」
「お前のおかげだよ」
窓から陽射しが入る。外で給仕と休憩の団欒が聞こえる。本当は混ざりに行く予定だったが、キョウヤが来たので今日はここで食べるとしよう。
「そっちの遠征からは、何か連絡はあったのか?」
「まだだね。どう?気は変わった?」
原発問題。もちろん十分理解している。だがまだ、京都を迎合する気にはなれない。正直こいつらですら、今少し揺らいでいる。
「お前たちでは対処できないのか?」
「デビエゴ次第かなぁ。あとは、今がどういう状況かによる」
「そうか、だが大丈夫だ。俺たちで何とかする」
キョウヤの手が一瞬止まり俺を見る。すぐに箸で料理を食べ出す。
一足先にキョウヤが食べ終えて、また両手を合わせる。盆を少し横にずらして水を飲んだ。
キョウヤが手頃サイズの黒いラジオを取り出した。周波数を合わせると、女性の声でニュースが流れる。胞子濃度や西の話が中心だ。
「……京都か?」
「面白い話をしていてね。またするかもって思って」
キョウヤがニヤリと笑う。
[続いて、敦賀周辺の海峡に沈んだとされる原子力発電所についてです。先日の海岸調査にて、軽度の放射能が検知され、機関は休止されていた紀伊孤島への海峡制圧を再始動しました。この放射能による健康被害は現在確認されていませんが、付近への不用意な接近は避けてください]
京都が動いたと言ったのか。最悪だ。キョウヤに向き直る。
「……なんで、紀伊孤島からこちらに来るんだ」
「位置の問題だね。海峡の陸鰭ももちろん、京都側の北の陸路には終末種なる化け物が居て対処出来ないんだってさ。ニュース聞いてないの?」
「俺は、どうすればいい!?助けてくれ!」
思わず立ち上がる。キョウヤが真顔で俺を見上げる。
「……そんなに嫌いなの?」
「そもそも、俺たちは海峡に沈む前はもっと西に居た、それをアイツらに追い出されたんだ!持ち寄った資材でやっと立ち直したのに、また壊されるなんて御免だ!」
「落ち着けよ、飯残ってるだろ?」
「……」
落ちるように座る。脚で床を殴る。「人間同士協力しましょう」と言いつつ、奴らがやったのは建物の解体ばかりだ。俺らが育てた紫陽花も殆ど消された。次また同じ事が起きたら、また紫陽花が消えてしまう。
「ま、何とかしないとね」
キョウヤが姿勢を正し、ポケットを探る。
「本当か!?」
「もちろん。俺も、俺のやるべき事をしないといけない。恭弥がそう言うから」
そう言ってキョウヤはリボルバーを取り出した。うちらの渡した物じゃない。そんなものど




