ホルン:裁判
キョウヤが私の左頬を縫う。めっちゃ痛い。暴れない代わりに右手で左手を強く掴む。その後外側にジェルを塗った。スースーするし、口の中は血の味がする。
横にスミが座ってる。こっちも怪我人だった。いや、話は聞いていたけど。
部屋の隅にソウジロウが立って壁にもたれている。私の処置が終わったのを見計らって背中を浮かせた。
「話の続きは出来そうか?」
私の代わりにキョウヤが答える。
「俺がしようか。ホルンに口を動かせって言うのは酷だろ?」
「……そうだな」
ソウジロウがドアを開ける。私を撃った男がドアの前で突っ立ってる。それをソウジロウが部屋の中に引きずり込む。
数秒の沈黙。外での作業音が聴こえる。ゆっくりと、男が私を指さした。
「こいつ、こいつがおかしいんだ」
キョウヤが返答する。
「……どんな?」
「バケモノの後ろをゆっくり歩いて、でかい鉄を振り回すなんて、普通じゃないだろ!?それに、ダイキが目の前で死んだ後なのに、変な冗談言ってきやがったんだ!!」
半泣きになって男が喚く。キョウヤが私を見る。何も間違ってないから縦に頷く。
「あぁ、全て正しい」
ソウジロウが肩で息をする。近くにある椅子に座る。男がさらに激しく言う。
「あのバケモノも、お前達の仕業なんだ!!」
キョウヤと目を合わせる。首を横に振る。
「いいや、それは無関係だ」
「本当にそうだと言えるか?」
ソウジロウがキョウヤを睨む。
「あのバケモノ見て、ホルンがカリンと言ったのは聞いたぞ。名前か?」
「バケモノ呼ばわりは撤回して貰おうか。あれも俺らの大事な仲間だ」
ソウジロウが目を細める。
「つまり、やはりお前らが呼んだ。今嘘をついたという事か?」
「訂正させて貰おう。仲間なのは間違いない。だが俺達が呼んだ訳ではない。訳あって別行動をしている」
「その訳は?」
「資材調達だ。俺たちは忙しいからね。常にひとつの事で動いて無いんだよ」
「それにしちゃ随分歪な容姿をさせているんだな。お前の趣味か?」
「彼はリオと同じだ。良く見えてしまう時があるからね」
「同じ?俺は視力には自信があるが、とてもリオと同じ生き物の腕には見えなかったぞ?」
スミが手を挙げる。
「話が盛り上がるのは構いませんが、今やるべきことを中断してまでやる事は選んでください」
それにソウジロウが返す。
「お前たちにとっては見慣れた身内かもしれないが、俺たちにとっては、いつ牙を剥くかも分からないバケモノだ。あんな歪なものを、平然とこの土地に受け入れられるわけがないだろ」
キョウヤが背もたれに体重を預ける。
「で、そのバケモノで何人負傷したよ?」
「ゼロだ。だから良いという考えにはならないぞ」
それを聞いて、キョウヤは笑った。それを見て私も笑っていた事に気づく。
「……おい」
ソウジロウを無視して、キョウヤが立ち上がる。
「さて、ホルン達には1度回収作業をお願いしたい。復興には色々必要な物が多いからね」
「……おい、話を」
「悪いのはホルンだ。そうだろ?ホルン」
もうそれでいいや。頷く。
「お前、それでいいと」
「そんなものは後だ。お前もここが消えるのは嫌だろ」
ソウジロウが舌打ちをする。
―――
部屋の外に出る。フェタとミズキが廊下に立っていた。
「……終わった?」
「うん」
フェタが左手を振りかぶる。思わず受け止めてしまった。
「え?」
フェタが私の腹を殴る。何故かフェタが痛がる。
「……最低だよ。ホルン」
「フェタ。私は大丈夫、だから」
後ろのミズキがフェタを止めようとする。フェタはそれを振りほどく。
「あんなの許したらダメ!なんで急にミズキにキスしたの?」
「適合者とキスすると、虫喰いに狙われにくくなるから」
フェタが唖然としてため息をつく。
「じゃあ、私とカリンがキスしても、あんたはその顔をするの!?」
「は?殺すよ?」
「それがおかしいって言ってんの!分かる!?」
ミズキを見る。ミズキは目を合わせてアワアワとした後、ピシッと立つ。
「大丈夫、です!」
「……とにかく、ホルンの今回の行動はおかしいの!いい?次あんな事ミズキにしようものなら、私がカリンとキスして、あんたに分からせるからね」
「……ごめん」
「私に謝るんじゃなくて!」
ミズキの方を向くと、ミズキが手を前で振る。
「ごめ」
「あー!」
ミズキは何故か耳を塞いで声を張り上げる。頭を下げようとしたらその両肩を抑えられる。こんなに拒否するミズキは初めて見た。
「謝らないで、ください……」
「……わかった」
「ほら行くよ。仕事するんでしょ」
フェタって、大人なんだなぁ。とかそんな事を思う。モジモジしているミズキが私の手を握った。
「あの……ごめんなさい」
「え、何?」
「見ちゃいました」
あぁ、そっか。私の過去か。冷静に考えて、ミズキが見れるっていうののはどういう理屈なんだろう。フェタは知ってるのかな。




