カリン:合図
テントの外の机に、スミが再度装備を置く。周りの人達が興味深くそれを見ている。
刀と機械を繋ぐケーブルを離し、機械を持つ。
「これはただの電池式バッテリーです。触ってもいいですよ」
そう言って緑の服を着てる1人に渡す。ひょいと持ち上げて細部をまじまじと見ている。
「エアライフルとの互換性もありますが、こっちはこっちで別物です」
そう言いながらスミがライフルを持ち上げる。ボルトを上げてコッキングし、ペレットを中に入れる。僕の知っている物と構造は同じだけど、デザインや細部は別物だ。
「基本的な構造は火薬式と大差ありませんが、現在まだ、こちらはボルトアクションのみが普及しています」
スミが構える。銃口からみんな逃げる。少し離れた所にある木に発砲した。小さな音と共に、木の幹に小さな穴が空く。貫通はしない。
「人を殺すには十分ですので、お気をつけて」
そう言ってエアライフルに繋いであるボンベを抜いて、再び渡す。
「バッテリーって、武器以外にも使えんの?」
ハチがスミに聞く。
「えぇ。使えますよ。電池があれば」
「それか?」
スミのベルトに付いている物をハチが指さす。スミがそれを取り出す。たまに落ちてる既製品を使ってはいるが、普通の電池では無いようだ。
「専用の電池です。充電が可能なので再利用出来ます」
「それ、本当に量産出来んの?」
「理論上は」
「なんじゃそりゃ」
「金型が存在する訳では無いので、これが同じ技術で作った似た物を誰かが持っていたとしても、互換性は無いでしょう。あくまで楽園や京都から伝わっている設計図を基に作った、我々オリジナルなので」
「刀は?」
「危ないので、ここでは余り……」
緑の服を着た男が慌てて走ってきた。フルタと言ったはずだ。息を切らしているのを抑えながら言う。
「む、虫……すげぇ数だ」
「何処から!」
「西の方、こっちに飛んでくる!!」
ザワつく。スミがこちらを見る。僕に指示を出せと、そう目で訴えかけてくる。
リーダーだから?それとも僕が、楽園から来たから?
「まずは火元の確認!全部消して!!各テントに武装した人を1人以上配置してやり過ごして!!」
言ったあとで、僕が仕切っていいのか?と思ったが、勢いのある返事の後、それぞれが散らばった。
「さて……我々はどうしましょうか」
「そりゃあ、各テントに別れて」
「ですが、火薬はこちらにとって商品です。可能な限り、彼らが引き金を引くのは避けたい」
デビエゴとユスケが頷く。ハチがキョロキョロする。
「え。何」
「ま、予行演習ってやつですかね」
「ここで死んでいては、陸鰭は殺せませんし」
「マジで言ってる?」
「ハチ、お前はテントで指でも咥えるか?」
「……はっ!んな訳!」
「ミズキちゃんは隠れてていいからな」
「え……はい……」
不安だ。何が1番不安といえば、全員が本気らしいところだ。ハチも。
「えっと……なら僕らは、テントの外でできる限り虫を落とす。でいい?」
それにユスケが驚いた仕草をする。
「えぇ!でも、リーダーがやれって言うなら!」
わざとらしい。
「頼むよ」
「もちろん!ただの虫なら余裕!」
「問題は数だし、僕らに広範囲迎撃は使えない。一体ずつ、出来る限りだ。テントにもちゃんと自衛がある事を信じてやろう」
「おう!」
「了解」
「へい」
「よ、よっしゃ!修行の成果!!」
各々が武装をセットする。ハチの装備はエアライフルとマチェットだ。
「ハチ、基本のおさらいしよう」
ハチが指を折る。
「あぁ、常に前に動く。殺すより当たらない。重心は低く保つ。だな?」
「うん。気をつけてね。一応ちゃんと死ぬから」
「お、おう」
青空に浮かぶ点が見えてきた。少なくとも30は要る。100は無い。大丈夫。許容範囲内だ。マフラーの位置を直す。使わない。使わない。
「来るよ。ハチ。狙って」
姿が見えてきた。少し大きめの図体に細長い脚。透明な翅。少し太い前脚。
ハチとデビエゴが構える。デビエゴの発射音と共に虫が1匹落ちた。それが合図だ。




