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終末後遺症  作者: Anzsake
あの日の約束が、終わらない物だと知らなかったから
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カリン:目的を見据えて

「そもそも、そんな共通言語なんですか?」


スミがリオに尋ねる。


「えぇ。そう初めに呼んだのが誰かは知りません。ただそう伝わっています」


「誰から?」


リオが人差し指を上げた。


「今、ここを漂う無数の粒子から」


スミが僕を見る。微かにある。というより、全く無い場所は無い。


「つまり?」


「この粒子達と交流をすることで、僕は遠く離れた所のお話を読む事が出来るんです」


「えぇ、知っていますよ」


「良かった。気味悪がられてしまう事が多いので」


「……そちらは海峡について、どの程度理解されているのですか?」


「開通する予定である事は知っていますが、それ以降の事は」


「あまり広い範囲は読み取れないのですか?」


「そうですね。お恥ずかしながら」


「いいえ、その力があることそのものが、我々とは違うのですから」


「あはは……ですが、こちらが海峡の虫を討伐する予定はありません」


机に水が運ばれてくる。リオが苦笑いをする。


「こちらの水です。放射線検査はしてありますので」


何かは分からないが気を使われている。そう言われると、何だか飲むのが怖くなるが、スミはそのまま手に取る。


「いただきます」


そう言って飲み干した。少しお辞儀をして僕も飲む。リオがにこやかに笑った。


「……ありがとうございます」


「討伐する予定が無いとのことでしたが、理由を伺っても?」


「えぇ、僕たちはただ、生まれ育ったこの土地で静かに暮らしたい。目的はたったそれだけなんです。あなた方の言う化け物は、僕たちの生活に影響を及ぼしません」


「穏健派、ですか?」


「えぇ、そう呼ばれていましたね。そういう意味では、海峡は僕たちにとって救いなんです」


「救い?あまり良い言葉選びでは無い気がしますが」


「まぁ、そう思われるかもしれません。ですがあれのおかげで、僕らは復権派と物理的に遮断され、放射能の噂により、不用意な賊は立ち入って来ない。楽園、とは言えませんが、あれと似たようなものだと、思いませんか?」


「噂……ということは、事実では無い、と?」


「沈んでしまった事は事実です。ですが、それが健康被害を出している事実はありません」


「まだ、4年前程しか経っていませんが」


リオは笑う。後ろに居た兵士が僕らに銃口を向けた。


「……あなたも、疑うのですか?」


「私が疑うのは、あなた方の管理能力です。静かに暮らしたいのであれば、自力での長期的な安全管理は必須のはず。そこを蔑ろにして、なにかあった時に頭を下げられる人間がどうか。 ……おっと、今のあなたに、決定権は無いと言っていましたね」


全てを理解している訳では無いけど、スミが危ない会話をしているのは十分理解できる。いざとなったら僕が殴ればいいとか、そんな事を考えていそうだ。


「その静かな楽園を維持しているのは、少なからずその鉄砲のおかげでは無いですか?確かにそれは強力だ。私達を殺すだけなら1秒でいい。だがこの国でそれをあと10年も使えるとは思わない方がいい。それは、適合者のあなたも理解しているはず」


リオが手を挙げると、銃口が降りた。


「……そうですね。行き過ぎた感情でした。あなたの意見は正しい。無礼をお許しください」


「少し、手を使っても?」


「えぇ」


「デビエゴ」


スミが腰に提げた機械と刀を机に置いた。それと一緒に、デビエゴもエアライフルを置く。


「今、この外で普及し始めている武装です。あの東京奪還にて使い果たした旧時代の武装に頼らない生き方を、我々は既に進めています」


リオが機械をじっと見る。


「凄いですね。これなら」


「ですが、海峡は文字通り水。電気を利用するこちらは分が悪い。故にあなた達と交渉に来ました。ここから本題です」


スミが姿勢を正す。


「私たちは、あなた方にこちらの技術を教える対価として、そちらで使用している火薬を一部譲って頂きたい。金銭が必要ならば、追加でお支払いしましょう」


リオは返事をしない。ただ静かにスミを見つめている。


「……金銭は要りません。その代わりにお願いがあります」


「はい。なんでしょうか」


「こちら側の海峡へ、今後一切干渉しない事です」


「えぇ、なんなら京都側にもお伝えしましょう。その為には海峡を渡る必要がありますが」


リオが笑い、頭を下げた。


「これより北は、元締めやそれに生かされている人々の住処です。今ここにある兵装しかお渡し出来ない事、先に謝罪します。それでもよろしければ、僕はあなたの提案に乗ってみたい。アルファ世代として、10年後の未来を信じていたい」


「私も同じです」


スミが手を差し出した。それをリオが握る。

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