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終末後遺症  作者: Anzsake
あの日の約束が、終わらない物だと知らなかったから
46/79

カリン:線で繋ぐ

ホルンを見送ってすぐ、後ろのスミが手を叩く。


「さて、我々も動きましょ」


ハチが面倒くさそうに応える。


「なにすんの?」


「物資確保の為、トラックで北に」


「何取るの?」


「人数分のマスク、船用の浮き、その他諸々」


そういえばと思い質問する。


「北の海峡から攻めたりしないんですか?」


「しませんね」


「孤島を挟むより、1回の海峡越えの方が楽では?」


キョウヤとスミに、1度だけ地図を見せてもらった。


『あくまでも情報を基にしている。実際に見てない』


そう前置きで出された地図に、手書きで塗られたそれは、南が二股になっていて、北は1本だった。


「まぁ、それはそうなんですけどね」


スミさんは敬語のまま、分からないジェスチャーをする。でも実際は分かっていそうな顔だ。


「具体的な確証は無いですが、原子力発電所が沈んでいます。そのせいで色々と」


原子力発電所。この前1晩泊まった建物にも、確かそんな名前の看板があった。

ハチが顔をあげる。


「あー……そんなやばいの?あれ」


「私もそこまで詳しくは無いので。だからこそ恐れられてるというか」


「ゼット世代のくせに?」


「はい」


スミさんは悪びれもなく言う。


「てか、それなら化け物も居ないのでは?」


「陸鰭は確認済です」


「クソ」


「僕らだけですか?」


「私とあなた2人、それにミズキさんで4人。あと2人位ですかね。それ以外は名古屋に向かってもらいます」


「先に?なんで?」


「ルート確保ですね」


スミが背中を向けて歩き出す。


「出発は20分後にしましょう。最低限自分の装備だけ整えてここに」


ハチと顔を見合う。


「なーんか、難しい」


「まぁ、うん」


別に普通。いや普通では無いけど、普通に会話は出来る。ただ、顔と言葉使いがあってない。目の前にいるのに遠いような、そんな感じがする。


「準備するかぁ。ミズキ呼んでくる」


「あ、うん」


特に用意する物も無く、ただ待つ。すぐに来たメンバーの2人と合流する。


「リーダーもですか?」


「うん。よろしく」


「また暴れんでくださいよ?」


「頑張るよ」


背の高い、派手なオレンジのベストにエアライフルを装備しているデビエゴ。

幾つも工具を装備しているツナギ服を着ている、トラックの持ち主のユスケ。


「……ところで、本当に僕がリーダーでいいの?」


特に考えることもせずユスケが言う。


「いいんじゃないかな?」


「これなのに?」


マフラーを動かす。デビエゴが肩をすくめる。


「まぁ、そんな事を言い出したら、あの2人だってな」


「2人?キョウヤとスミの事?」


「変な武装して、変なこと言う奴らだぜ?」


ユスケが笑う。


「ま、楽しそうだからいいけど」


「いいんだ」


「あーいう奴らにはわかんねぇかもだけど。俺みたいなのはこの世界で、喪った以上に多くの新しい楽しさを得ている」


デビエゴの言葉にユスケが乗る。


「正直、楽しくて誰かの役に立てるなら何でもいいかな」


そこにハチとミズキが来る。ユスケが2人に手を振る。


「おっすミズキちゃん。ミズキちゃんも?」


「あ…はい。よろしくお願いします」


「任せな」


デビエゴが僕を見る。


「ホルンは?」


「別の用事でキョウヤとフェタと出掛けたよ」


ユスケが顔を出す。


「まじ?じゃあミズキちゃん紅一点じゃん」


そこにハチ。


「あ?なんだそれ」


「女の子一人ってこと。綺麗な1輪の赤い花って意味さ」


「赤要素何処だよ」


「女の子と言えば赤だろ?」


「知らねぇよ」


「お待たせしました」


スミの声に振り返る。ハチが唖然とする。

手に持っているのは無骨なハンマーだ。それに紐を通して背中に背負う。腰うしろにはキョウヤと同じ機械があり、横には少し短めの刀が提げてある。

真っ黒なヘルメットをもう片方の手に持っていて、重そうに揺れている。


「ユスケ、運転お願いします」


「OK。そのイカれ武装で傷付けないでくれよ」


「すげぇ!刀だ!!なんか近未来っぽい!」


ハチが喜ぶ。スミがハンマーを見せて笑う。


「私のメインはこっちです」


「もっったいね!」


黒くなだらかな質感の鞘に、鍔の無いシンプルな柄。見覚えがあった。記憶の中と照らし合わせようとして、ぼんやりと一致するのが気持ち悪い。


「……赤熱化カーボンブレード」


恐る恐る、箱の中を覗くように口に出す。スミは反応しなかった。


「……どうかされました?」


「……いや、なんでもない」


トラックに乗る。僕は助手席で、運転がユスケ。繋がってる後部座席に他の4人が乗る。


「じゃ、行きますか。リーダーこれ」


ユスケが大きな本を広げて僕に渡す。地図だ。色々ペンで描かれている。


「……何をすれば?」


「あぁ、持っててください。それだけでいいです。寝ててもいいですよ」


掛け声の代わりにエンジンが鳴る。ゆっくりと走り出したトラックの車窓から、抜ける景色を見つめる。

今の僕には、スミのあの武器で頭がいっぱいだ。全く同じ、では無いかもしれない。でもあれは、4年前にユウトが持っていた武器と同じだ。


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