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終末後遺症  作者: Anzsake
君のエピローグで、世界を終わらせてくれなかったから
42/79

ホルン:帰郷

4年前、回収員というコミュニティ公的組織のあったそこは、鉄道を引いて東京へ定期遠征に行った。

そこで虫喰いと呼ぶ人型の怪物と接触。それ以降現れる異常な生物を次々と対処し、東京から虫と胞子と虫喰いを追い出した。

その最前線にいた英雄がベゴニアさんであり、彼やカリンや私が住んでいたコミュニティ。それがあの大きな山、富士の西側にある。


そもそもなんで虫が出てきたのか?そんな事私だって知らない。虫喰いも、胞子も、ゾンビも。ただ命を脅かす物だったから戦った。死体を何体も積み上げて焼いた。


夕暮れに照らされる富士は、離れてみているとそこまで大きく見えなかった。


「本当に日没に着く?」


「ま、多少日が暮れても大丈夫でしょ」


「本当に、誰も住んでないね」


森ばかりとはいえ、時折ある町も、人は居なかった。見慣れているはずだ。たった10年で世代は変わらない。


「さて、あとはホルンの土地勘次第だ」


そうだとは思った。本当に場所を知っているなら、キョウヤなら私が居なくても行っただろう。


「はいはい」


私は別に、この地域の出身じゃない。ほんの少しだけ西から来たから、あのコミュニティの行き方は何となく覚えている。


道中を歩く虫を轢き殺す。それをキョウヤが振り返って見つめる。


「……なるほど」


「なにかありましたか?」


フェタが分からないと言う顔をする。


「胞子濃度さ。虫が普通に歩いているなら、まぁ低くないんだろうね」


「京都には濃度計とか無いの?」


「あるけど、私は持ってない」


「観測可能なのに、それが何なのか殆ど分からない謎の胞子……」


フェタはそう呟きながら、少しだけ口角を上げる。何か面白い事があるんだろうか。


「もう着くはず」


無人の市街地を走る。ここもコミュニティの1部みたいな所で、やはり人が物を漁り尽くした跡がある。

少し進んだ郊外の鉄道に、場違いな資材置き場と、明らかに寄せ集めで造られた駅。そこに戦車を止めた。


「ここが……」


すっかり草が伸びて、足場も不明瞭なボロボロの町。そこら中錆びていて、ここ一帯だけ瓦礫まみれだ。


「もう夜なりそうだけど、どうするの?」


「……どうしようかな。寝れそうな建物でも探そうか」


「あるといいね」


「君の住んでた家は無事か?」


「ううん。崩れてる。あ、でも」


そう言って降りる。まだ間に合うだろうか。まだ、そこにあるだろうか。

後ろからふたりが着いてくる。記憶の中の道と照らし合わせて、赤の中を歩く。


他の家とは少し離れた広場、昔畑だった場所を抜けて、瓦礫の山の前に立った。


「ここか?」


「うん」


瓦礫を退かしていく。何故かふたりもやり出す。たとえ崩れていても分かる。覚えている。ここら辺に居間があって、ここら辺に暖炉があった。そしてあの日、ここで泣いた。

よく見る一軒家とは違う、古臭い造りだった。でもそれは、彼女の趣味だったから。


「……ヒッ」


フェタが小さな悲鳴を上げて座り込んでいる。キョウヤとそちらに行く。瓦礫の下から骨が出てきた。

それを拾い上げる。


「……人?」


「そうだな。腿辺りの骨かな」


「……うん、これくらいだった気がする」


その瞬間、一段と暗くなった。空から太陽が消えた。辛うじて近くの物は見えるけど、これ以上は探せない。


「また明日にしよう」


「別にいい。これだけで十分」


暗がりを歩く。使えそうな建物を発見して足を止める。カリンが住んでた家だ。そっか。壊れてなかったんだ。


4人くらいが雑魚寝できる程度の大きさの事務室みたいな建物。中は畳んだ布団と、ベタベタと貼ってあるメモには手書きのメモが沢山ある。回収員で働く際の事が、一言ずつ書いてあった。


キョウヤがランプを付ける。ぼんやりとした燈の中、3人が囲んで座る。


「随分と大きな骨だな」


「あの人、大きかったから」


「君の親か?」


「血の繋がりは無いけど、パンデミックからずっといっしょで、母親同然みたいな人だった」


「……ここは、何故こんな有様に?」


「虫の群れにぶつかって、火災になった」


それ以上の言葉は無かった。燈の中、帽子を被ったままのキョウヤの顔は閉じた口だけが見えた。

そのまま、キョウヤが立ち上がる。


「……歩行音だ」


耳を澄ませる。草の揺れる音の中に、半規則的な土を踏む音がする。近寄ってはいないが、周りを徘徊している。

武器を持ってきていない。直ぐに動けるように足裏を床に付ける。

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