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終末後遺症  作者: Anzsake
君のエピローグで、世界を終わらせてくれなかったから
40/79

カリン:伝える

キョウヤとホルンが何か話しながら去っていくのを見送る。横で座ってるハチが顔をあげる。


「なぁ、あいつと俺、キャラ被ってね?」


「キャラ?」


「なんつーか。話し方とかさ」


「そうかな?」


少なくとも、見た目は全然違う。あっちの方が大人びてる。

考えてみる。何が違うだろう。


「ハチはなんというか、チャラい?キョウヤは悪いって感じ」


「くっそぉー、あっちが上位互換じゃねぇか」


「そう、なんだ」


こういう所も似てない。多分キョウヤなら、笑って受け流す。


「ほら、続きやろ」


「えぇ、もう脚動かねぇよぉ……」


そう言いながらもズルズル立ち上がる。確かにこんなにフラフラだと、訓練にはならないだろう。


「情けない」


更に横にいるフェタが見下している。


「俺はもうダメだァ。戦闘ってもっとこう、腕とか、そういうのを鍛えると思ってたのに」


別に僕の腕は太くないし、そういえば師匠も特別ムキムキでなかったな。


「実際、足腰もそうだし、バランス感覚とかの方が大事だよ」


「言いたい事は分かるけどよぉ」


そう愚痴るハチの背中を、フェタが押す。よろけてハチが頭から転ける。


「……何すんだよ」


「5秒は止まったかな?今のでハチ死んだよ」


「それはここまで筋トレさせられてたからだろ!?」


「そんな言い訳が、虫が聞き入れてくれると思ってる訳?本当に情けない男」


タンマと言って待ってくれる虫を想像して、少し笑ってしまう。


「師匠、私は行けます。次は何を?」


フェタがそう言う。ハチも僕を見る。


「師匠はやめてよ。でも、今日はもう終わって、コミュニティの手伝いにでも行こう」


「分かりました。そうします」


すぐに動き出したフェタと違い、ハチは転けたままゴネる。


「行ったところで、今は人がいっぱいだぜ?あの子らの仕事取ってもいいのか?」


「じゃ、ハチは僕と戦車の整備しよっか」


「あぁ、そっちの方がマシだ」


ぬるりと起き上がったハチと戦車に向かう。車庫にはミズキが居て、戦車の助手席に座っていた。


「お、ミズキじゃん。何してんだ?」


「……何も」


「そうか。俺らこっから整備するんだけどよ、ミズキもやるか?」


「……うん」


ミズキがチラリとこちらを見て、すぐに目を逸らした。あの日掛けられた言葉は、何となく覚えている。起きた後、ミズキが僕を止めたのだと、そう教えてもらった。


「おーい、初め何する?師匠?」


ハチがからかう。僕のベゴニア師匠に対する気持ちを知ってやってる。


「師匠じゃない。僕は操作系やるから、ハチはエンジンお願い」


「あいよー」


運転席に座って、足元に溜まっているはずのゴミを……ゴミが無い。そういう事もあるのかと思ったが、助手席のミズキと目が合う。


「掃除してくれたの?」


「あ、えっと……」


「ありがとう」


お礼を言って、速度計をいじる。少し放置するとすぐに狂う。実際走っていないのに、速度計は10km/hを指している。

おやっさん曰く、無理やり付けてる品なのでこうなっているらしい。メンテのやり方も、おやっさんに一から教えて貰ったことだ。今何してるかな。

実際、年月だけならば、師匠よりもおやっさんとの時間の方が長い。

横のミズキがこちらをまじまじと見ている。


「どうしたの?」


「あ、覚えておこう、かなって」


手を前でモジモジさせながら、ミズキが少しこちらを見る。


「私……何も出来ないから」


いつの間にか後ろに居たハチが顔だけ出す。


「師匠じゃん」


「違うって」


それでも、頼られる事は嬉しかった。助手席のミズキに色々と教えながら、作業を進めていく。


「……基本的には2人でやるから、分からない事はその時一緒にやる人に聞けばいいから。ね、ハチ」


「俺もカリンに聞きながらやってるのに?」


「まぁ、ホルンも分かるから」


ミズキが少しだけ反応する。


「が、頑張ります」


「うん、お願いね」


モジモジしながらも、ミズキは少しだけ笑った。


「……はい」


ホルンが来た。目が合う。大丈夫か聞く前に、ホルンが口を開く。


「富士に行くことになった」


「富士?富士って東だろ?」


「私とカリンの、昔の家に」


家。あそこだ。


「何しに行くんだ?あそこら辺って、今は資材も殆ど無いはずだろ?」


「細かい事は言わない。でも、行くのは私だけ。あんたらは留守番と、後日北の方に行く事になってる」


「おいおい、いつ化け物退治に行くんだよ」


「中途半端に挑んで全滅する気?」


「でもカリンが居るんだぜ?……カリン?」


瞬きをしていない事に気が付いた。一瞬だけ深く目を閉じる。


「何?」


急に血が減ったような、フラッとした感覚を誤魔化す。


「俺たちは北の方に行くんだと。そういや入った事ねぇな」


「何があるの?」


「前通ったコミュニティでちらっとだけ聞いたんだけど、なんか行かない方が良いらしい」


「曖昧だね」


「禁止にするような法律も無いんだろ?別に危ないけど行きたきゃ行けば?みたいな」


「あー……」


「危険生物なら、話は広がってると思うんだけどな」


「その、陸鰭じゃないのかな?」


キョウヤやフェタが、海峡の化け物をそう呼んでいる。フェタの元々居たキョウトで、そういう呼ばれ方をしているらしい。


「それならそう言わねぇかな?」


「とにかく、そういう事だから」


「戦車は?」


「私が使う。あんたらはスミとトラック」


「えー。まぁキョウヤじゃねぇならいいや。スミさん優しいし」


「……カリン、ちょっといい?」


「え?うん」


運転席から降りてホルンの方に行く。車庫から出て少し歩く。


「……何しに行くの?」


「ハヅキさんの技術の残骸が無いかって。あると思う?」


「うーん……建物くらいしか無いような……」


「だよね。私もそう思う」


「危なく無いかな?」


「多分」


何となくわかった。ホルンの武装を見て、その技術が分かれば、戦力向上になるからって事だ。

車庫の裏まで来る。人の居ない所だ。振り返ったホルンが両手を伸ばす。


「……ん」


「え?」


「……ん!」


何だろう。分からないから同じポーズをする。ホルンが2歩踏み出して、僕に抱き着いた。暖かかった。


「……怖い」


「僕も行こうか?」


「ダメ」


ホルンが僕の胸に顔を埋める。4年前は、背丈はそんなに違いは無かった。今になって、背が伸びたんだなと気付く。


「ミズキの事、どう思ってる?」


「ミズキ?」


多分、僕が暴走した時にミズキが僕を戻したからだ。


「仲間、かな。それ以外は特に」


「……何聞いてんだろ、私。あと一人、誰か連れてくんだって。私に決めていいって」


「誰を連れていくの?」


「まだ、決まってない」


キョウヤとホルンと、あと一人。誰が良いんだろう。それこそミズキと思ったけど、そうすると、僕がまた何かあった時に止める人が居ないのか。待てよ、それだとホルンが居ない時に僕がまた暴走した時、止めるのはミズキだけになる。それは不味い。


「……ハチとか?」


ホルンが顔を強く押し当てる。


「馬鹿。私が男に囲まれてて良い訳無いじゃん」


「……ごめん」


顔を上げたホルンと目が合う。静かな車庫の裏。心臓の鼓動。唇が触れて離れる小さな音が、誰かに聞こえるんじゃないかと、そんな不安が後から来た。

ホルンが大丈夫で帰ってくるように、少しだけ長くキスをした。


「……ありがとう」


「……うん」


1歩下がったホルンの体温が離れる。風が憎い。


「気をつけて」


「カリンも」


車庫裏から出る。戦車に戻るとハチは慌てている。ミズキは教えたことを噛み締めるように操作系を見ては、少し触っている。


「お、おかえり!何の話してたんだ?」


「あんたは眼中に無いって話」


「俺はそこまで悪どくないぜ。いや、キョウヤみたいなのを目指すなら悪く居るべきか?……」


独り言のように呟くハチを無視して、ホルンがミズキの所に行く。


「ミズキ」


「は、はい……」


「この前はありがと……カリンの事、よろしく」


「え、あ、はい!」


不意に立ち上がろうとしたミズキが、ハンドルに膝をぶつけて痛がった。

■アルファ世代②

アルファ世代と言えど、年齢や旧時代の環境によって、感性や価値観は大きく異なる。

また、終末後時代にどう過ごしたかも大きく影響する。

ゼット世代とは違い、単一で共有された道徳や倫理観を持ち合わせておらず、個人差は会話レベルにまで影響している。

しかしながら、旧時代をぼんやりとしか知らない事に変わりなく、大半のアルファ世代が、ゼット世代のマクロ的な懐古意識に対しては理解を示せない。

また、現在11歳~15歳のアルファ世代は非常に少なく、当時の未成熟児の生存率の圧倒的低さが確認できる。

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