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終末後遺症  作者: Anzsake
君のエピローグで、世界を終わらせてくれなかったから
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ホルン:模擬戦

カリンがマフラーのまま、しっぽを展開して何人かとやり合っている。近づく人は居るが、カリンに攻撃は当てられてない。私たちを見て戦闘が中断される。


「気にしなくていいのに」


「やっぱリーダーは強いっすわ。ただの虫喰いなんか比じゃねぇ」


褒められたカリンは顔色を変えずマフラーを首に戻す。


「そりゃあそうだ。あっちは本能的。リーダーは計算された技だ」


「いいえ。僕のも、虫喰いから見て覚えた使い方ばかりですよ」


何気なくカリンが言って、みんな黙った。そりゃそうだ。そういう虫喰いが存在するのだと言っているんだから。


「……まじ?」


「え?はい」


何かフォローを入れようと1歩前に出る。


「個体差があるんで」


キョウヤが私を見る。何事も無かったように手を叩く。


「そうだ。ホルンも修行するといい。カリンと」


「は?」


「何気にやった事無いだろ?そう見立てた。というか、楽園出身の2人の模擬戦闘を、ぜひ見たい」


みんなが羨望の眼差しを向けてくる。ハチまでもだ。何を色気着いたのか戦いを覚えると意気込んで、実際1週間悲鳴をあげながらやっている。


「……カリンがいいなら」


「だ、そうだ。カリン、君の弟子達の為にも、見せてみてくれないか?」


カリンが「弟子」に小さく反応する。


「まぁ、ホルンがいいなら」


「それなら決定だ。鉄棒か?」


「いえ、普通に武器でいいです。カリンも、いつも通りでいいよ」


「……わかった」


宿に着いた車庫に自分の装備を取りに行くと、戦車にミズキが居た。何となく気まずくて目を合わせず大盾を取り外す。ミズキも何も言わない。

どうしてミズキには、カリンの事が分かったんだろう。それにリズちゃんやヒマワリの名前。

ヒマワリという人については、私も詳しくは知らない。ベゴニアさんや他の回収員の一部が、回収員をやる前に旅をしていた頃のリーダー的存在だと、そう聞いただけ。


結局ミズキと顔を合わせず表に出る。既にフル装備のカリンの前に立って、大盾を右腕のジョイントに接続する。


大丈夫。手加減なんてしない。普段、好きだけど溜め込んでる不満を思い出してみよう。大丈夫。怖くなんてない。


合図も無いまま前に出る。正面に構えるだけで成立するなら、こんなヘンテコな盾は使ってない。


カリンが右腕で弓を構える。矢を番える前に盾裏に閉まっているナイフを抜いて投擲する。盾を回す。接続した中心を軸に回転し、カリンが右に避ける癖を先読みして盾を投げる。

予想通り右に避けたカリンがすぐにマフラーを抜いて防御姿勢をとる。盾と腕で繋がっているワイヤーを引いて軌道を修正しつつ、弾かれる位置に持っていく。

カリンがしっぽで盾を弾く。その隙に距離を詰めて弓の間合いの内に入る。


「わ……」


体術に持ち込む。隻腕のカリンにおいて、しっぽを抑えれば私と大差はない。両腕があったなら完敗だけど。

カリンの後ろに転がっていく盾を引き戻しながら、左手でカリンの脇を狙う。詰めた時のマフラーは根元の挙動で判断する。

徒手打撃を使うカリンに対し、私は組手だ。展開中は重心の悪いカリンに対して、奥に押し込む動きで詰める。

カリンはバランスを崩すとマフラーを十分に攻撃に転用出来ず、必ずバランスを取る為の補助を挟む。その隙に詰める。

ワイヤーで盾を動かし、カリンに当たるように向ける。カリンのしっぽのリソースを増やせ。


カリンが大きく距離を取る。盾を引き戻すより先に、カリンのマフラーには矢があった。弓に番えた矢が引き伸ばされる。盾が手元に戻ってきたのと矢が放たれるのは同時。


右腕に強い衝撃と鋭い音が入ってよろける。わざと盾を狙ってきた。手を抜かれた。いや、あれは当たると死ぬ。死んだやつは何人か見た。


カリンのマフラーが飛んでくる。盾で防ぐ。カリンが1歩前に出たら1歩下がる。

この間合いなら、カリンのマフラーはギリギリ捌ける。もしもカリンに両腕があったら、ここに矢が飛んできて終わり。


挙動は正確には捉えきれない。だからこそ、この大きさの盾が要る。

それでも、右腕だけでこの大盾は振り回せない。大盾を軸にして身体を捻り、カリンのマフラーと私の間に必ず盾が来るように立ち回る。

カリンも私の事は分かってるから、一気に突っ込んでこない。持久戦を狙いだした。当然、普段からやってない私の方が早くボロが出る。


カリンがナイフを抜いて投擲してくる。細かな潰しはお互い対策済だ。こちらも盾からナイフを抜いて牽制で投げる。

埒が明かない。どうせ模擬戦だ。やれるだけやる。スミの言う通り、それで慢心する気は無い。


スイッチを捻る。ガコンと盾が鳴る。カリンが詰めてきた。縦に割れた盾の片方を引き抜く。振り下ろされるメイスを、引き抜いた大剣で勢いよく弾き返した。質量勝ちでカリンが空中で大きく飛ぶ。着地に合わせたナイフはマフラーに弾かれる。


やり切れなかった。戻す余裕は無い。間合いが開きすぎだ。どうしよう。

■変形式大盾(Hestia)

ホルンの装備している大型の盾。普段は戦車の追加装甲板シュルツェンとして装着されている。

縦120cm、横50cmで、重量は15kg程。

盾裏にはナイフホルダーが10基、中央にベアリングとワイヤーが装備されており、身体側のジョイントと繋げる事で手放し防止、ワイヤーによる手動の簡易遠隔操作が可能。

縦に割れる事で片方を質量武器として振り回す事が可能で、切断力は無いが、虫ならば容易に甲殻を潰せる。

これを扱えるホルンの筋力は言うまでもないだろう。

元々は両肩に2基、軽量の盾を装備する形だったが、東京奪還時に片翼が破損し、現在の形に大盾な改修されている。

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