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終末後遺症  作者: Anzsake
君のエピローグで、世界を終わらせてくれなかったから
33/79

カリン:約束

『師匠』


『ん?』


旧市街の帰りの電車。ベゴニア師匠はぼーっと外を見ている。隣では、師匠の相棒のシライシさんが口を開けて眠っている。


『師匠は、どうやって強くなったんですか?』


師匠は窓の外を見つめたまま、小さく唸る。


『あれだろ?体術的な強さの話だろ?』


『え?えぇ、それ以外があるんですか?』


『体術に関しては、多分才能だろうな。別に昔から格闘技やってた訳でもないから』


師匠は小柄で、他の回収員より細い。それでも、虫やケラ喰いの攻撃をスレスレで回避しながら、斧で的確な一撃を叩き込むそのカッコ良さに、僕は弟子になると決めた。


そういえば、師匠という言葉は何処で覚えたんだろう。思い返してみても分からない。


『そうだな、約束を守る。とかかな』


『なんの?』


『何でもいいし、誰でもいい。カリンならリズとかじゃないか?そういう、守りたい約束ってのがあると、迷わないと思ってる』


『……それも、強さってことですか?』


『あぁ、少なくとも僕はそう思っている』


師匠はたまに難しい事を言う。でもそれは、きっと僕が分からないだけなんだろう。


『師匠なら、誰なんですか?』


『……さぁ。なんて名前だったんだろうな』


白い塔で、ヒマワリさんの墓と手紙を拾った師匠の顔は、とても穏やかだった。まるで、これから引き裂かれる僕とリズを嘲笑うかのように。


―――


気を失って居た事に気づく。いや、そんな事は無い。そういうフリをして目を覚ます。微かに覚えている声や感覚。自分の身体が上手く動かない苛立ち。


戦車の荷台から見上げる空は、夜になっていた。星が見える。ハチと知らない男が顔を覗かせた。たしか、キョウヤの演説の時後ろにいた男だ。


「おっ、起きた。本当に瞳の色が違うな」


「おはようございます。水は飲めますか?」


「あ、はい」


上半身を起こして、男から水を受け取る。


「身体の不具合はありますか?」


「いいえ、ありがとうございます」


敬語だが、どこか軽い。顔だけ上げて確認する。荒れた町に、トラックが3台。1台はボコボコに壊されている。あの壊し方は、多分僕だ。


そのトラックから、色んな人が顔を出している。歳の近い子と目が合ったが、すぐに逸らされた。


「おっ、起きたか」


キョウヤが来た。後ろにはホルン。元気が無いのは当然か。その後ろには、地下に居た同じ髪色の子たちだ。


「スミ。カリンは大丈夫そうか?」


スミと呼ばれた敬語の男がキョウヤに返事をする。


「さぁ?帰ってちゃんと診た方がいい」


「医者なんですか?」


「いいえ?」


戦車に乗り上げたキョウヤがマフラーを持っている。僕のしっぽは、夜の中静かにそこにある。


「……返してください」


「まぁ待てよ。裁判がしたいんじゃない。これはあくまで面接。カリンと一緒に肩を並べられるかどうかのね」


「……無理です。こうなった以上、僕にその資格はありません」


「そうだせリーダー」


トラックから、1人の男が顔を出した。


「そんな危ないヤツはダメだ。あんたの言う統率に反するぜ」


「はは、それはそうだ。間違いない」


キョウヤが笑いながら立ち上がる。槍の柄を戦車に着く。


「だが俺たちが望む場所は生ぬるい平均じゃない。高みだ。それが偽善者だろう?」


来る前の演説で見せた、あの顔だ。


「それに、俺たちはなんのためにここに来た?アルファの奴隷を助ける為だ。アルファの彼を見捨てる選択肢は無い!」


そう言い切る。トラックからざわつきが聞こえる。


「カリン、動けるかい?」


「え?はい」


「よし!ではこれより、奴隷解放、及び復帰支援だ!つまらないと吐き捨てるものはここに置いて行こう!」


キョウヤが戦車から降りて振り返る。


「行くぞ」


「……」


ハチも戦車を降りて僕を見る。手を差し伸べてくれた事が嬉しかった。


「行こうぜ。カリン」


「……分かった」


地面に足を付ける。風が涼しい。進もうとするキョウヤ達を止める声が響く。


「私はまだ、納得していません!!」


その子の手には、手斧があった。師匠のより小さい。


「私は被害者です!!そんな怪物が同行する場合、私は

行けません!!」


「ふむ、確かにそうだ。だがここに法律は無いよ」


うん。僕もそう思う。スミが手を挙げる。


「キョウヤ、裁判になってないか?」


「いいや?」


キョウヤがマフラーを手放す。風に流されるマフラーを掴んだ。


「良かったですね」


スミは、僕には敬語みたいだ。しっぽにマフラーを巻こうとした時、キョウヤが大きな声を出す。


「カリン。勝負しよう」


「え?」


キョウヤが腰の鞭を取り出す。首にかけてたつばの広い帽子を被って笑う。


「君が異物を持って尚、人として武器を振れる事を、まずは証明しよう」

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