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終末後遺症  作者: Anzsake
君のエピローグで、世界を終わらせてくれなかったから
32/79

ホルン:脇役

私の知識不足だ。「奴隷」というのがどんなものかは、何となくだけ知っていただけ。もっとちゃんと知っていればこんな事にはならなかった。

いや、そもそも。私がカリンのことを、もっとちゃんと知れていれば、こんな事にはなってない。


薄暗い室内を抜けて 太陽の下に出る。フェタもカリンも居ない。


「さて、何処に遊びに行ったかな」


キョウヤは棒を鞭に変えてそれを建物の屋根に伸ばす。鞭が棒に戻る力で屋根まで登った。


「……あっちみたいだ。走ろうか」


屋根の上でキョウヤが走り出す方向に、私も道を走る。落ち着くように自分に言い聞かせる。人を殺す事に躊躇があるのはカリン位だ。少なくとも私に、そんな余裕は無い。

だから悪い事じゃない。ゼットの連中ですら殺すんだ。


小さな音と衝撃を感じて、狂っていた方向感覚が戻ってくる。戦車のある位置からだ。


「ホルン、任せたよ」


トラックが大きく揺れるのが目に入った。フェタがカリンから逃げる為に、トラックを壁にしている。カリンの頭に巻いた布は、左眼だけが覗いている。夕方の空の下。本当ならちゃんと見えているはずだ。


「カリン!!」


返事がない。おかしい。いつもの、ちょっと疲れた時とは全く違う。どうして?何があったの?なんで?


カリンのしっぽがトラックを突き刺して穴を開けていく。さっきキョウヤとの戦い方も、抜いた時のカリンだ。この4年で必死に鍛えて磨いてきた立ち回り。あの日ベゴニアさんに打ち負かされた時みたいな、ふらつく足取りでは無い。


「カリン……?」


戦車の上の、ハチとミズキと目が合った。やめて。そんな顔しないで。せっかくカリンにとって、友達になれるかもしれないのに。


1歩前に出る。やるしかない。止めるしかない。まだ半泣きで逃げるフェタを追っている。


「助け……」


嗚咽しながらフェタが転けた。それにカリンがゆっくり近寄る。その横、後何歩だろう。大丈夫。大丈夫。


『お兄ちゃんには分からないよ』


カリンが私を見た。身体が固まる。違う。怖くない。しっぽが動いたのが目に入った。耳元で張り裂けるような音が鳴った。思わず瞑った目を開けると、横にキョウヤが居る。


怖い。


「力づくで止められるかな?俺も自信は無いけど」


返事が出来ない。上手く前が見えない。止めてって、言っていの?


揺れる視界の隅で動いた物を捉える。ミズキが戦車か降りて、真っ直ぐ歩いてくる。


……それだけはダメ。立ち上がろうとしたのに、足に力が入らない。カリンが再びフェタを捉える。1歩ずつ近づくカリンより早く、ミズキがカリンの背中から近づく。


「……まっ」


カリンが気づかないまま、ミズキはカリンの背中に触れた。カリンが止まる。

背中に触れたミズキが、小さく口を結んだ。


「……大丈夫。カリンくんは、ちゃんとリズちゃん、大事だった」


そう、ミズキが言った。一瞬、訳が分からなかった。カリンは動かない。


「大丈夫。カリンくんは今もちゃんと、約束守れているよ」


自分が耳を塞いでいる理由が分からなかった。ザワザワと人の動きがあるなか、顔を伏せて縮こまるしか無かった。

何か、得体のしれない物が蠢く頭も、揺れ続ける影も。

横に立っているキョウヤの足だけが、ただそこにあった。


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