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終末後遺症  作者: Anzsake
君のエピローグで、世界を終わらせてくれなかったから
27/79

ホルン:悪党

木しか無い自然の中の、今にも消えそうなアスファルトの道を進む。流石に速度は乗ってきたが、それでも明確に遅い。

荷物を積んでる時と同じだが、今回は理由が違う。


「もっと速度出ないの?」


やっぱり言われた。


「重いんですけど?」


「いや、普通戦車は関係なく走るでしょ」


「あんたの戦車の普通なんて知らないよ」


渋い顔をするキョウヤに、ハチが振り向く。


「こいつ、普通の自走砲じゃないんですよ。エンジンも電気駆動のオリジナルで、俺らの想像する戦車では無いんですよね」


「へぇ、そういう事」


キョウヤも詳しい口なのか。他の奴らに降りるよう指示する。3人降りて、いつもの4人とキョウヤの計5人。


「……あんたは降りてくれない訳?」


「え?」


「は?」


普段通りの速度にはなったと思うが、シンプルに別の所に行って欲しい。


「ま、俺は次世代を護る大義がある。少しうるさい護衛位に考えてくれ」


「要らない」


それ以上何も言ってないのに、キョウヤはカリンを見る。1番重武装だからだろうか。


「そういえばさっき"楽園からの天使様"って言われてたね」


「えっと……」


カリンが口篭る。フォローを入れる。


「少なくとも彼一人で虫喰いも殺せる。あんたはもう一人の例外って子を護ったら?」


「すごいね。はは、そうかもしれない。けどもうひとつ、概要を話して無かったと思ってね」


「概要?」


「これからぶっ飛ばす悪党の話」


「ぶっ飛ばす?」


キョウヤがカリンを見る。


「対人戦闘の経験は?」


「……まぁ」


「恐らくこれまでは殺してただろうけど、今回は出来るだけ殺さないで欲しい。難しいお願いですまない」


「い、いえ……」


「なんで殺したらダメなんだ?」


「必要悪ってやつさ、知ってる?人が増えて集落となると、どうしても隣人への不満は出てくる」


「話し合って解決すればいいじゃねぇか。そのヒツヨウアクってのとなんの関係があるんだよ」


「解決出来るならするさ。でも集落ってのはルールがある。全員の幸福を保証するルールじゃない」


言いたいことは分かる。市場があるのに欲しい物が無い人達があれだけ居る現状がそうだ。


「でも、特別争ってなかったろ?」


「そうだな」


「それは、俺たち人類には今、虫や虫喰いという脅威があるし、パンデミックという理由がある」


「そうだね」


「それだけじゃダメになってきたって事。少なくとも俺たち偽善者の釣り人達ヒポクリト・アングラーズは」


つまり、虫喰い単騎なら殺せて当然という事だろうか。それなら、少なくともハチとミズキは無理だろうな。


「で?それが殺さない理由とどう繋がる訳?」


「悪が消えれば、次は隣人を憎めるようになる。その次が俺で無い保証ができないってだけさ」


キョウヤが空を見上げて笑う。と思えば、突然カリンに顔を寄せた。


「君、何故夏なのにマフラーをしているんだい?」


「えっと……」


カリンの代わりにハチが言う。


「秘密だとさ。でもただのマフラーじゃねぇよ。マフラーが武器になるんだ。しかもそれで虫喰いが殺せる」


「へぇ……それは、楽園の武器なのかい?」


「……別に」


「それがどう動くのか、今見せてくれたりは?」


カリンは黙って、キョウヤから目線を逸らした。


「なるほど。では最後に。戦場でそれを使う気は?」


「……出来るだけ、使わないつもり」


キョウヤは小さく笑ってカリンから顔を離す。


「そっか。OK。ではカリン、君は僕らとは別行動にしよう」


「……別?」


「あぁ、俺たち本隊は悪党叩きを軸にするから、君は囚われてるアルファを助けてやって欲しい。君がそれを見られても良い仲間のみ連れて行ってくれ」


キョウヤは、演説の時に見せた悪い顔をする。


「相手は人間だ。見られてまずいなら殺せ」


運転をしながら首を突っ込む。


「さっきと話が違うけど?」


「カリンは別だと言っただろ?いいかい。ここ10年。いやもっと前からかもしれない。そんなまさかが何度あった?少なくとも俺は、君のそのマフラーがどんなおっかなびっくりな品物だろうと、排斥する気は毛頭無い」


「……そう」


木々が開き、建物の残る平野が見えた。バリケードを張った場所がある。


「……奴隷って、本当なの?」


「アルファを集めてる。そのアルファを見ない事は事実だ。もしかしたら中で殺してるかもしれないし、もっと酷いかもしれない。逆かも」


「逆?」


「……とにかく、俺たちは正義ごっこだ。欲しいのは資材と統率。楽しもうぜ、パーティー」


キョウヤが立ち上がり、手を額にかざして戦車から飛び降りた。後ろを走るトラックに飛び乗る。

多分、私たち4人ならば、マフラーを使うと思ったのだろう。残念な事に、キョウヤが思うほど、この4人は長い付き合いじゃない。


「……俺、不安になってきた」


「カリン、どうする?」


「……1人でいい。やってみる」


「……そう、お願いね」


私たちの戦車をトラックが追い抜いて、すごい速度で走り抜けた。後部の男の集団の中に、うっすら髪の赤い人が見える。例外、アルファの子だ。


トラックから色の付いた煙弾が飛んだ。奇襲する気は無いらしい。

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