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終末後遺症  作者: Anzsake
君のエピローグで、世界を終わらせてくれなかったから
25/79

カリン:世代

鳥の声がした。日はまだ暮れない。ホルンが立ち上がり、砲座に足を置く。


「何?」


「何してんの?」


「見て分からない?」


「あぁさっぱり分からん。意図が」


明らかに怒ってるのは伝わる。ミズキが助手席で伏せた。


「旅人にしては、何やら重装だな」


「えぇ、化け物退治に参加しに来たから」


周りの住民がザワつく。男のひとりが薄く笑った。


「なんだ、情弱な奴だな。聞かされて無いのかよ」


「……」


「アルファ世代は参加出来ねぇよ。最も、参加しようなんて奴は普通居ないんだがね」


ホルンがハチを見る。ハチが首を横に振る。


「ガキは足手まといとでも?」


「さぁ?」


ホルンが足で砲座を鳴らす。


「残念だったな。市場を崩すのに何の意味があったか知らねぇけど、無駄になったなぁ」


「はぁ?」


「キレんなよ嬢ちゃん」


ホルンがため息を長く吐く。


「もういい。私たちで化け物殺そ」


「そうだね」


ハチと男3人が同時に声を出す。


「「「は?」」」


「地上に引っ張れば行ける?」


「多分。長期戦にはなるし、化け物の都合次第な所はあるけど」


何となく話に乗っているが、あまり勝てるビジョンは浮かんでない。


「ちょ、お前ら……」


「待て、正気か?」


「もちろん。ハチ、降りる?」


「え……やってやろうじゃねぇか!!?」


周囲のざわつきは加速する。それを制する声がした。


「君たち、待ってくれ」


4人目の男だ。年上ではあるが、他の人よりは少し若い。男が僕たちを睨む。


「君たちが、住民に物資を無償で配って回ってる連中かい?」


「そうだけど?」


「……領主様が話がある。付いてこいと言えば付いてくるか?」


「えぇ、もちろん。あんたも乗る?」


「結構。道案内をする」


男が丈の長い上着をなびかせて歩き出す。人が道を開ける。ホルンが操縦席に乗り込んでゆっくり走り出した。


「……本当についてくのか?」


ハチが静かに言う。


「何?轢き殺す?」


「馬鹿野郎」


「ま、ここでダメなら手を引くしか無いし」


空が薄暗くなってきた。後ろからの視線が痛い。


戦車を建物の前に止める。男が玄関で待っている。さっきの鋭い目つきを感じさせない、柔らかな笑顔だ。


「良かった。轢き殺したり、土地を破壊する野蛮人では無いようだ」


「はいはい」


「さぁ、上がって」


ハチがホルンに耳打ちする。


「おい、ノコノコ入って閉じ込められたりしないか?」


「あんたここまで何を見てきたの?」


「はは、そういう警戒心は大切だ。まぁ、見るからに慣れてるしね。領主様の話は、別に説教じゃないよ」


そう笑って男が先に入る。全員で顔を見合わせて、僕を先頭にドアを開けた。


紐に付けられた灯りが静かに揺れている。テーブルの奥の椅子には、人形がひとつ座っていた。


「………」


横に居る男がくすくすと笑う。


「いや、ごめん。面白いかなって」


面白くはなかった。笑いながら、男が人形の横の席に座る。


「領主様なんて固い人はここにはいないよ。俺はキョウヤ。陸鰭(リクビレ)攻略隊の設立者。リーダーだ」


ハチが大袈裟に胸を撫で下ろす。ホルンが扉を閉める。


「リクビレ?」


「海峡の化け物さ。西の旧市街。君らの言う京都の通信がそう言っていたんだ」


「いや、ゼットのお前らが捨てただけだろ」


ハチが突っ込む。


「で?何?」


「あれ、君たち、参加の意思を示しに来たんだよね?」


「アルファはダメなんでしょ?」


「まぁ、原則」


「はぐらかすじゃん」


「既に例外が居てね……それでも、普通なら追い返すさ。普通なら」


ドキリとする。キョウヤが立ち上がり部屋をゆっくり歩く。


「あの装甲車、砲身は本物かい?」


ほっとする。


「さぁ?弾も無いし、試したことも無い」


「正直だね。嫌いじゃない。で、それでどう陸鰭に勝つつもりなのかな?是非聞きたい」


「カリン」


「え?僕?」


「いいや、啖呵を切ったのはガールだろ?君の口から」


ホルンが鬱陶しそうに舌打ちする。


「さぁ?それも適当。まぁルートは幾つかあるけど、どれも殺せる確証は無し」


「なるほど、それでも凄いじゃないか。大人の中にも、複数なら何とかなる。ましてや見たことも無い連中も居るのに」


暗に、僕らが遭遇経験があると言っている。もちろんその通りだけど。


「……もうひとつ、いいかな?」


「どーぞー」


「俺たちゼット世代が引き受ける。君らはただここで優雅に待ち、陸鰭が退治されたら進むだけ。そっちの方が得だとは思わないかい?」


ホルンが目を逸らして首を傾げる。


「そうね」


「あぁ、選択肢としては入ってた?」


「全然」


「……何故?」


「そうね。あんたにも伝わるかは知らないけど」


ホルンは手を口に当てて少し笑う。


「ロマンでしょ?」


ハチがなんとも言えない顔をした。


「はは、なるほど。はぐらかされた訳だ」


「ま、本当にあんたらだけで殺せるなら、私は待つよ」


「そうか。流石に分かってるか」


僕は分かっていない。ハチはどうなんだろう。ミズキは……まぁ。


「よし、君らさえ良ければ、俺は歓迎するよ」


「認めていいの?雑魚の寄せ集めだって」


「それは、これから決める」


「化け物退治に邪魔が居ても困るでしょ」


「まさか。下準備からがパーティーさ」


キョウヤが手を伸ばす。ホルンがそれを握った。


「そうだ。今後は無償提供は控えてくれよ」


「なら、ほしい物リストは作ってあげたら?」


「……ごもっともだ。そう進言してみるよ」

■ゼット世代・アルファ世代

一般的に、パンデミック時に必要な社会性と教養を会得した人間をゼット世代と呼び、そうで無い下の世代をアルファ世代と呼ぶ。

細かな定義は定期的に変化するが、現在では、パンデミック時に中等教育を終了した世代をゼット世代と定義している。

この2世代間で価値観の相違が顕著に見られ、度々問題視されており、独自に広まった名称で、過去に使われていた世代名を流用している。


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