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終末後遺症  作者: Anzsake
君のエピローグで、世界を終わらせてくれなかったから
24/79

カリン:回収員

大きな屋根が並ぶ市場には、複数台のトラックと、大きなカバンを背負った大人達が、店主らしき人に声をかけて回っている。使えそうな小物家具、銀器や衣服、小さな家電、工具箱、嗜好品、全部ある。


「おいおいおいおい……どういう事だよ」


「ま、私ももっと早く気付くんだった」


ホルンが息を漏らす。化け物退治に人が集まるなら、当然その人らはお金を稼ぐ必要がある。やる事と言えば、もの拾いだろう。


「これじゃ売れねぇじゃん!」


「そうね。諦めよっか」


「マジか……」


渋い顔をするハチに、ミズキが静かに布切れを出す。


「……なんだよ」


「えっと……泣かないで……」


「本当に泣く訳じゃねぇよ」


「ご、ごめんなさい……」


「ま……あんな風に売れなくてでかい荷物抱えてフラフラするよかマシなのか」


「下見。大事でしょ?」


「そうだな。大事だな」


「まぁ、やり方は変えないとね」


市場をフラフラと抜け、建物を回っていると、飲食店らしい店を発見する。中は殆ど客は居ないが、営業しているらしい。


「入ろっか」


「いいのか?」


店内は客が2組。テーブルが3つとカウンターが5席の小さな店だ。


「いらっしゃい」


テーブルに4人で座る。メニュー表が置いてある。店主が水を持ってくる。ホルンが気さくに話しかける。


「最近は儲かってる?」


「いいえ。人は増えましたが、流動は少ないですね」


「もの拾いって、絶妙に使わないものばっかり持ってくるもんね」


「そんな事はありませんよ。ただ、少し手を出しにくいと言いますか」


ホルンの営業トークだ。


「レストランで使えそうなものか。今、何が足りない?」


「いいえ、そんなお気になさらず」


「慈善活動。まけて欲しい訳でも、お金が欲しい訳でもない」


「そう、ですか?」


「俺、この肉セットがいい」


……とりあえず注文する。ホルンが紙切れを1枚渡す。


「欲しいものあったら書いて」


店主は静かに受け取って、厨房に消える。


「……タダで物あげるのか?」


「もちろん」


「俺らの労働は金にならないのか?」


「目先の金ばっかり見てないで、短期間の交渉なら、こういう親切は重要だよ」


「なんだそれ、どういうことだ?」


「長い目で見ると、確かに親切は損だし、金回りを壊しかねないけど、少しの間居るくらいなら、信頼を最短で手に入れられるから」


「……勝手では無いのか?」


「同業からしたらね。でも、コミュニティとしては、わざわざ買わないのに値段だけ付く物品が増えた所で意味無いもん」


料理が運ばれてくる。ハチの臀が浮き、ホルンが目を輝かせ、ミズキが料理をまじまじと見る。僕はと言えば、食べる前から体中の血が加速するのを感じていた。旅中はあまり食べないし、普段も贅沢はしない。


「……少なくないか?」


「2人分しか頼んでないし」


「絶対足りないだろ」


「次の店、行くでしょ?」


「行くぅ」


もちろん、交渉の為に。


―――


会計時に店主から紙を受け取る。


「OK。拾えるだけ拾ってくる」


「その時は、お礼します」


「ご馳走様!!」


そう言って外に出る。日差しに目を細める。紙に書いてある雑貨を見ながら、さっき拾った物を思い出す。ホルンが紙に店の名前を書いて仕舞う。


「じゃ、行こっか」


食料を売ってる所で聞き込みをすると、生鮮食料を加熱して貰った。


「本当にいいの?」


旅の道具を売ってる店は、必要な物が割と多いらしい。紙を2枚も貰う。


「次来た時は値引きしてやるよ」


車両の整備をしてる人は、戦車を整備して欲しいと言うと目を丸くした。もちろん、必要な物も聞いた。


「戦車は初めてですね……まぁ、興味はあります」


紙束をペラペラと捲る。市場は殆ど回った。積んできた分で足りるだろうか。


「意外と値引きしてくれたな」


「ま、タダをチラつかせるのはこういう利点もある」


なんてことなくホルンは言う。


「案外悪どいな。お前」


「そう?」


―――


履帯の回る音が小さく鳴る。これまで僕に向いていた視線は、その下に全て集められた。


戦車が夕方のコミュニティをゆっくりと走る。紙を広げながら止まり、荷物を降ろして店に入る。


「すいませーん!回収員でーす」


ホルンが顔を出す。目を丸くした店主さんがゆっくりと出てくる。


「あ、あぁ……本当に。戦車。た、助かるよ」


ものすごく動揺している。これが良い方向に傾くか不安にはなる。


「回収員って言われると、なんか取りに来る人みたいだな」


「そういう名前だから仕方ないでしょ」


再び低速で走らせる。視線はまちまちだが、歓声みたいな物も無くはない。少し恥ずかしくなってきた。ミズキも助手席でキョロキョロしている。


「やっぱ目立つなぁ」


「慣れて」


「カリンは慣れたのか?」


「全然」


「じゃあ俺も無理だ」

 

紙束を広げる。次の場所で降りて、持っている荷物を渡す。道具屋のおじさんが豪快に笑う。


「こりゃすげぇな!!お前ら何者だ?」


「回収員です」


「回収員?やけにかしこまった名前だな。コミュニティを出る時はまた寄ってくれよ」


「是非」


「これ、お礼」


そう言っておじさんから食べ物を貰った。


「これ、同業が見たらキレるんじゃね?」


「まぁ、それが目的だし」


「はぁ?」


ホルンから概要は聞いたけど、それにしても上手くいくか不安だ。案の定、予定通り、それは来た。


「ちょっと、何してんの?」


それなりに屈強そうな男が3人、戦車の前に立った。

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