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終末後遺症  作者: Anzsake
15/18

ホルン:縫合

近くのコンクリートの建物に入る。肩を貸していたハチが、床に喚きながら座り込む。


「クソいてぇよ……マジで」


「……驚いた。あんた、なんでミズキの所に駆け出したの」


「分かんねぇ……多分、カリンに憧れちまったんだろうな」


「馬鹿ね」


カバンから医療器具を取り出そうと漁る。上手く取れない。入口からの光に照らされる影が動いてそちらを向く。ミズキが泣きながら立ってる。


「怪我は無い?」


「何をすれば、いいですか……」


服の裾を両手で掴んで、歳不相応に顔を歪ませている。


「カリンに伝えといてくれ……俺はかっこよかったって」


「意味分かんない事で混乱させないで。ミズキ、こっち来て」


「こっち来て」に小さく反応し、ミズキの足が後ろに下がる。


「カバンから医療器具を出して欲しいの。出来ない?」


「……やります」


「お願い」


ミズキに教えて、カバンから消毒とスタンプ型の縫合ジェルを取り出す。ジャケットを脱いで患部を出し、スタンプする。

貫通はしてない。ペレットはさっき抉り取った。


「ミズキ、ありがと」


ミズキが目を逸らす。


「ハチ。脚出して」


「あぁ、この痛みが収まるならなんでも差し出すさ」


「は?痛み止めなんて無いけど」


「最悪だ。撃たれるんじゃ無かった」


その発言にミズキが動揺する。ハチが申し訳なさそうな顔をした。


「……かっこよかったか?俺」


「全然」


「俺のフォローの流れを止めるなよ」


「自分で踏んだくせに?」


傷を塞いだハチが立とうとして顔を歪ませる。


「ほんとに痛ぇままじゃねぇか……」


「止血と傷が空気に触れるのを塞いだだけ」


右肩を慎重に回して、痛む動かし方を探る。縫合ジェルが剥がれないかも確認する。


「カリンは?」


「追わせた」


「なんでだよ」


「ただ撃たれただけじゃ、割に合わない」


エアライフルはそこまで普及してない。あれが何処からの物なのかは確かめたい。


「ホルンもカリンも、冷静すぎるだろ……これが普通か?」


「いいや、人狩りは殆ど居ない。そういう事をする奴はコミュニティでも省かれるから。最も、証人が居ないなら別だけど」


「こんな土地で殺し合いなんかするなよな……」


「あんた、殺しを楽しむやつは居るって言ってたでしょ?」


「それはガスマスクの要らない土地の話であって……」


足音がしてハチが黙る。入口からカリンが入ってきた。エアライフルを肩に提げ、カバンを下ろす。中には服が入っていた。


「傷は?」


「塞いだ……また逃がしたの?」


「えっと……うん」


身ぐるみだけ剥がして殺さなかったんだろう。カリンの顔を見れば分かる。


「エアライフルは?」


カリンがライフルを持つ。


「別物。ボンベも給圧構造は最近の形だね」


「なんの話だ?」


ハチが脚を庇いながら首を突っ込む。


「エアライフルの出どころの話」


「そんな違いが大事なのか?」


「僕らが昔使ってたのなら、それは東京からの人だから」


「……有り得るのか?」


「ゼロじゃないから。見たこと無いけど」


カリンがライフルを降ろす。ハチがそれを拾い上げる。


「うお、重」


「使いたい?」


「いいのか?」


撃たれた痛みがあるとは思えないほどハチが笑顔になる。


「いいよ。どうせカリンも私も使わないし」


カリンがカバンを持ち上げる。


「ハチ、服もあるよ」


ハチは大喜びと痛みが交互にあるのが顔で伝わる。


「ハチ、ありがとう」


カリンが服を渡しながら言う。


「は?何が?」


「ミズキを助けに行ってくれて」


―――


私が撃たれた直後、カリンはハチを戦車の裏に隠した。裏でハチとカリンが言い合う。


『おいどうするんだ!』


『多分正面から撃たれた。細かい位置を探る』


『ミズキがまだ助手席だ!』


『ホルンも居る。ハチが出なくていい』


伏せているミズキと目が合う。少し震えながらも、ミズキは何か決心したような顔だった。


『……何をすれば、いいですか』


ミズキが小声で言う。戦車の裏からハチの声がする。


『撃ってきた奴の位置なんてどう探るんだよ!?』


カリンが答える。


『どっちにしろ、顔は出さないといけない。ハチは隠れてて』


『……ミズキ、待って』


ミズキは口をしっかり閉じ、真っ直ぐに顔を上げた。


―――


縮こまるミズキの横に座る。ミズキが目を逸らす。


「ミズキ、ありがとう」


「……何も、出来ません、でした」


そんなことはない。そう言うか迷った。結果オーライではあった。


「見えた?」


「……分かりません」


敬語を使われるのは、何だか壁を感じて悲しくなる。でもミズキの心境を勝手に考えると、それを否定するのも違うような気がした。

■旧市街の負傷

胞子が直接的に人体へ影響を及ぼす事例は非常に稀であり、ここの地域の人間にとって胞子は「見えない悪臭」でしか無い。

だが旧市街等の高濃度胞子環境下にて、胞子を大量吸引をした人間は、免疫力が著しく低下する事が分かっている。これにより、10年前のゾンビパンデミックは文明が崩壊するほどの致死率となった。

旧市街を歩く場合、即効性のある止血や患部保護は必須であり、旧時代からの簡易医療器具は必需品である。

食べ物の次に復興が進められた物資であり、特定の地域ではジェルを生産している。

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