13.同二十八日、ウグデイを討つ。
注曰く:君主が殺されることは、国内からは「弑」、外国からは「戕」と呼ぶ。ウグデイの行いからして君とは認められないため、「カン」と呼ばず、「討つ」と称する。
ドカンと、城が震えて、私は驚いて跳ね起きた。
文治十六年六月二十七日の早朝、猛暑。熱い汗と冷たい汗が交じり、一日の始まりだった。
私は長靴下を履くなり、急いでクレータを呼び出し、騎兵隊と出動準備をしていると殿下に伝えてくれと頼んだ。
そして急いで甲冑を身につけ、白旗を背に、ランスを手にして馬場へ向かった。惣菜をようやく見つけたが、なぜか藁を置いてある場所ではなく、豆の倉庫に忍び込んで、一頭こっそり食べていたらしい。
「やめなさい、体に悪いよ。急用があるから、一緒に駆けるよ。」
見つかった惣菜は大変に不機嫌そうに馬蹄で地面を掘った。騎兵隊の総員が集結するまでの間に、もう一つの飛来物の音がして、城北の商会のあたりに落ちた。
間違いない、巨石だ。
駆けて現場を確認すると、人の背丈の二倍ほどの巨石が一つ、ヴェネツィア商会の一角を崩したようだった。逃げ出した人々が絶望的に、瓦礫になった商会の部屋だったところへ向かって大声で叫んでいた。
私は伝令に、兵営の指揮陣と城門の衛兵へ損害報告を命じた。そして南市から東へ駆けて偵察した。
南市から見渡すと、おおよそわかった。兵が北の村から逃げ出していた。
その村には、途方もなく大きく高い、見たこともない巨大な器械が一つあった。
すると、二の丸の東門の手前に何かが落ちて、水面に水柱を吹き上げた。
巨石だった。――早朝に叩き起こされたのは、やはりこれのせいだったか。
感想を述べている場合ではない。私は騎兵隊とともに敵の正面百歩まで接近したが、やはり止まった。
ケシク百騎、歩兵数百、果てが見えない陣列、黄色い馬に跨る金色の甲冑。ウグデイとクナンだった。
「よくぞ来たな、ストーリアの自称娘の騎士様。」ウグデイは私を見て大いに笑い、憎たらしい挨拶をした。
「こちらこそ。」
ウグデイは私に背を向け、得意げに大声で嘲笑った。
「お前らの守りがどれほど堅くとも、この回回砲には敵うまい。速やかに投降しろ、奴隷になるだけで済むぞ。――女だけはな。」
露骨な脅迫、目にすら映さぬ軽蔑。ウグデイという男。その男は自軍の前に向き直り、鞭で私を指した。
「ジョチの天幕の豊かな糧秣、千人隊長二人の優れた戦法も手に入れた。回回砲はすでに築き上げた。欠けているのは大公と公女のみ。――お前はいずこへ逃げるのだ!」
後方の布陣がようやくできたようだが、相手が今なお動かないのは、やはり自信があるからだ。
「その権力と女への欲望のために、これほどの人を死なせるのか。」
ウグデイは陣形の前を横に歩き、長い編み込みの前髪を弄りながら答えた。
「それがどうした。わしはできる、わしが欲しい。全部、わしのものだ。」
「騎士様を女扱い……嫌だ、できないのだ、男だと言ったら、そちらはどうする。」
ウグデイは目を見開き、騙されていたと悟ったような顔をした。すると突然笑い、皺が顔に不自然に広がった。
「ならばお前も、殺す。」
その言葉を言い放つと、ウグデイはケシクの北端に着き、斜めに私を睨んだ。
「お前があのバイクを始末したか。――その一件だけは、感謝するぞ。」
「ウグデイ。」私は奴を呼び止めた。すると、ランスを横にして、左手で穂先を握りしめた。太陽が昇り、怒りも昇る。
「もう一つ、お前が感謝すべきことがある。」
ウグデイが怪訝な目で私を見つめた。
「バトゥがまだ生きていること。――それでも、お前を始末する。」
ウグデイの目が見開かれ、驚いたように見えた。そして大笑いした。
「そうか、お嬢様。――いや、光だろう。安心しろ。奴は後方にいる、お前の情けなど知るわけがない。」
バトゥがまだ生きていることを確認できて、心底安堵した。ウグデイは自軍のほうに向き直り、鞭で私を指した。
「城を落としたら、皆殺しだ。ただそいつだけは、きちんと埋葬してやるぞ。」
私に軽蔑の目を向け、指の関節を鳴らした。
「さすがに、わしの鼻を折った、一人前の男だな。相応しい結末を保証するぞ。」
私はあいつを見据え、そして向きを変え、太陽を背にして自軍の陣列に戻った。ウグデイは指揮をクナンに任せた。クナンは無言でうなずき、ウグデイは陣列の後方に退いた。
両軍ともに、この夏の朝日に照らされ、対峙する。
「三川。指揮を取れ。」
伝令から、殿下の軍旗が渡された。
「え? 私がですか……?」
私は驚いて、殿下の色褪せた軍旗を手に取り、視線が殿下を探した。
「殿下は、あなたの突進が見たいと仰っている。」
私は深く息をつき、城に向かって一礼した。
朝十時、汗が止まらない。
戦場を見渡すと、敵の左翼にケシク、中央にクナンの弓騎兵、北に軽歩兵、そしてやや離れたところに回回砲が一基佇んでいる。
自軍の右翼には私自身の騎兵隊と軽歩兵の方陣、中央には重歩兵と投槍兵、北には傭兵隊。
「殿下からもう一つ申し入れがあります。速やかに戦闘を終わらせれば、投石機は無視してよいと。敵の石が足りないことは見てわかりますので。」
私はうなずき、伝令に笛を吹くよう命じて、中央に手旗信号を送った。
中央のマルコが振り返り、軍を緩やかに前進させた。
クナンも指揮を執っていたようだ。同じく軍勢を整え、中央で対峙する。
私は全軍の軽歩兵を前に出し、突撃の態勢を整えた。ケシクが私の右翼の密集した陣形を見て、近づいて連射を始めた。歩兵に動揺が走った。
このままでは左翼が崩れるのは時間の問題だ。堪えきれず、軽歩兵に突撃を命じた。
だがクナンは黙って、ケシクの自発的な後退を見ていた。ケシクは損害を出しながらも振り返りざまに射撃を続け、軽歩兵に被害を与えていく。このままでは村まで追わされるだけだ。
しかし私はすでに、ロンバルディア方陣を待機させ、ジェノヴァ隊のみを前進させるよう命じていた。クナンはそれに気づき、斜めからの射線を遮るために弓騎兵を前面に出し、ジェノヴァ隊と斜めに対峙した。
これでようやく、私のオペラ・ゲームの幕開けだ。
私は同時に二つの命令を出した。軽歩兵がケシクを南翼の中心から追い払ったところで、北東へ向かわせる。私は戦場の真ん中を取り、騎兵を二列縦隊にして中央を狙った。そしてジェノヴァ隊が難なく北面の要所を押さえた。
私の狙いに気づいたクナンが、ようやくケシクを前方に戻そうとしたが、私は白旗を掲げ、ジェノヴァ隊の支援射撃と三軍の突撃を命じた。
この形で、クナンは中央に追い詰められた。北の軽歩兵は装填を終えたジェノヴァ隊に牽制され、ケシクは軽歩兵と揉み合って動けなかった。必死に円陣を組んでクナンを守ろうとする弓騎兵が次々と倒れた。ケシクはようやく南側から抜け出したが、損失は過半に達し、間もなく右から左へ私の第一騎兵隊に突撃しようとしたものの、すぐに北のロンバルディア方陣に行く手を阻まれ、戟の森に突っ込んだ。そして私は軍旗を二つ掲げ、第二騎兵隊とともにクナンへ致命的な突撃を仕掛けた。
クナンは黙って刀を構え、防御の態勢を取ったが、ランスに抗えるものではない。むしろこの敗北の贖罪として、一死を求めていた。
すると一頭の馬が駆け入り、馬上の武者が身を挺して私の突撃を受け止め、ランスもろとも馬から転落した。
「ケテ!」クナンが不意に大声で叫んだ。ランスを失った私に意味深い一瞥を投げ、地上のケテを見つめた。
「この仇、忘れぬ……」と言いながら、後方から迫る我が騎兵を見て、乱軍の中に消えた。
私は伝令にケテの首を掲げさせ、敵の士気を揺さぶろうとした。すると敵陣の後方から笛の音がして、敵が収縮し、村に固まった。回回砲から矢が降り注ぐ。決着がつかないまま、私も仕方なく陣形を整え、負傷者を収容して城に戻った。
「にぃさん! すごい、また敵を打ち破りました!」ヴェローナが喜んで迎えに出たが、笑顔が凍りついた。
「これは……」
「そう……ですね。ヴェローナに、任せたい。」
私は破壊されて砂利ばかりの東城門に向かった。門外から千人ほどの負傷者が血を流しながら絶え間なく入ってきて、そのまま修道女たちに預けた。
「にぃさん……」黙って顔色の悪い私を見て、ヴェローナが不安になった。
私は辛うじて微笑んだが、真昼の太陽が眩暈を誘う。
「大丈夫です。敵の千人隊も二つ減った。残るはウグデイとクナンの残兵のみ。」
城門から甲冑姿の二人が入ってきた。
「これはこれは、勝利ではあるが……」レオは兜を投げ捨て、黄色い地面を喘ぎながら見つめ、呟いた。
ヤコポが仕方なさそうな目でレオを見てから、私に向かって不安げに声を震わせた。
「言い方はあれだが、さすがに三分の二以上が負傷し、数十の死者が出るとは……」
私はこの二人に無言で向き合った。すると一つの低い声が、ゆっくりと響いた。
「なに、傭兵として務めている以上、責任を果たすくらいできないのか。」
ラファエッロ・ドーリアが城門の左側で腕を組み、負傷者を見ないように天を仰いでいた。私たちのほうは見ていないが、言葉を続けた。
「まさかここまで領主気取りして、どこかの坊やみたいに独善の幻想に浸るのか。」
彼は、療養室の場所を尋ねる負傷者に指で方向を示し、また腕を組んだ。
「それがしは商人だ。金をもらった以上、最初に満足のいく金を払った者に尽くすのみ。貴族の坊やにはわからんだろうが、これがドーリアの生き様だ。」
レオとヤコポは恥じ入るように顔を伏せた。
「いや、私の指揮のせいだ。」私の声に痛みが滲んだ。
「この無謀な戦を指揮したのは私ですから。これがピュロスの勝利……ですね。」
ドーリアが私の肩を掴んだ。怒りが髭を吹き上げるかのように見えた。
「殿下がお前に任せ、お前が危機を退けた。何か文句があるのか。」
いつの間にか、マルコが後ろで聞いていたらしく、突然口を開いた。
「彼の言う通りだ。むしろ、あれほど精確な前進と後退を命じるとは、さすが三川閣下でした。一撃でもう一人の千人隊長を討ち取り、優勢の敵騎兵を牽制して撤退させるとは、さすが三川閣下でした。」
レオが急いで補足した。「そうですね。三川閣下でなければ、私自身は何をすればいいかもわからなかった。むしろ感服しております。」
ヤコポが倉庫のカートに座りかけて、危うく転倒した。
「素晴らしかった。」
殿下の声が聞こえた。なぜか、その隣に侍女が二人いる。
「殿下は皆さんと話があると仰っていますが、まずは三川閣下とヴェローナに話したいとのことです。」
私とヴェローナは視線を交わし、一礼をして他の面々を見渡した。
「頑張ってください、三川閣下。」ヤコポが体勢を立て直し、レオもマルコもうなずいた。「ヴォレール大公やあなたが勝てない相手なら、誰に任せろと言うんです。」
「今後ともよろしくお願いいたします。」
殿下はようやく納得したようにうなずいて、謁見の間に私たち二人を招いた。
そしてそこを出ると、また複雑な心境になったが、秘書官室に戻ってすぐに必要な財務文書に署名した。
すると衛兵に城下の捜索を命じ、甲冑を脱いで、夜を待った。
「誰だ!」
月もない夜、占領された宿場町。町外の松明の下でモンゴル兵の声が聞こえた。
「私はトカ・テムルだ。」隣のモンゴル人がそう答えた。
「トカ様? いや……トカ様はバイクの隊にいたはずでは?」
トカ・テムルは冷静に答えた。「実は、バイクが戦死した後、私は難を逃れて村の廃墟に身を隠し、こちらの使者の方と出会った。」
「誰だ、そこの御仁。」
私は高い高麗帽子の下に顔を隠し、台詞通りに言った。
「私は中書令・耶律楚材。トゥルイ様からジョチ様への書状を携えて参った。お話がある。」
私はマルコから預かったもう一通の書状をそのモンゴル兵に見せた。モンゴル兵はようやく認めたが、松明の下でよく見えない顔を訝しげにしながら呟いた。
「しかしジョチ様は……」
「構わぬ。跡継ぎのバトゥ様でもよい。東方で反乱が起きるという重大な事態ゆえ、速やかに案内してほしい。」
衛兵が無言で私たちを案内していった。宿場町の中にはいくつかの天幕も立っていた。そして馴染みの天幕が、ちょうど町の真ん中にあった。
私は呼吸を整え、うなずいて、トカとともに天幕に入った。すると、ひどいほどの酒の匂いが鼻を突いた。
「アンダ! 我が兄よ!」トカが急いで駆け寄り、跪いた。中央に倒れている若者の目が開くと、傍らの憂いに満ちた初老の男の視線がこちらに向き、不意に声を漏らした。
「トカ様!」スブタイがジョチ様の十三男の名を呼び、そして大いに驚いて私に向き直った。
「ひ――」
私は急いで声を遮った。
「中書令、耶律楚材でございます。」
スブタイは察して、すぐに私の手を引き、暗く、人が酔い潰れるほど広い大天幕の中央に連れていった。バトゥの目が大きくなり、横を向いて次の酒を椀に注ごうとしたが、スブタイに手を叩かれて酒がこぼれた。
「兄……」
私の心が痛い。手を胸に押さえながら、彼の目の前に跪き、その疲れ切った顔をじっと見た。
「妹様……光。」と、バトゥはそう言って視線をそらした。
「公女……いいえ、光閣下とお呼びすべきでしょう。」スブタイは歯を噛み、声を絞り出した。
「その……老臣にも、どうにもならぬのです。」スブタイはバトゥを見て嘆息した。
「妹君……私のことは、そのまま放っておいてくれ。」
バトゥの手がまた酒に伸びた。
私は拳で天幕の柔らかな床を叩き、ようやく冷ややかな声を発した。
「そう。わかった。いいよ。」
バトゥとスブタイが驚いた顔で私を見つめた。
机の上の蝋燭が彼らの顔を、バトゥの汗を照らしていた。
跪いたまま、私はそれを吹き消した。
自分の顔も他の三人の顔も、闇に包まれた。
「どうせ私は死ぬのだから、いまここで、この不器用な義兄弟を殺して、自分も死んでもいい。」
私は両手でバトゥの首を絞めた。残り二人がすぐに私の指を解いた。スブタイは口を開いたが、何も言えなかった。
バトゥは吐きそうな顔をしていた。
「どうせ自暴自棄になるつもりなら、トゥルイ様の期待をさっさと裏切ればいいさ。」
私はトゥルイ様からジョチ様への書状を取り出し、封蝋を破って本文をスブタイに渡した。
スブタイは目を通し、沈黙の末、声を震わせながら読み上げた。
「兄貴へ
もう会わなくなって、何年になるかな。親父もいなくなって、山に鹿狩りに行く歳でもないから、体を大事にしないとな。
聞いたところ、お前は酒を飲みすぎてるんじゃないか。それをやめて、息子たちのような部下に、父親らしいジョチ様として生きてほしい。
息子といえば、バトゥはラテン語を勉強して、キリスト教に帰依したそうだな。それはよいことだ、よその文化を取り入れないとな。うちの倅のクビライも漢語を学んで、儒教という忠君・孝行とかいう良い思想を勉強しているぞ。
ああ、そうそう。うちの天神様のことも、あちらでは孔子と呼ぶらしい。
もし会えるなら、お前もちょっとバトゥから教わって、あちらの《聖書》で天神様のことを何と呼ぶのか、俺に教えろ。まさかキリストとか言うのか。あはは、冗談だ。
お前も酒ばかり飲んでいないで、引き続き自律で英雄たる父親として」
スブタイは泣き崩れ、バトゥは座ったまま悲しい顔でスブタイを見た。
私は書状を取り戻し、読み続けた。
「引き続き自律で英雄たる父親として、真のわが道を天下に示してほしい。
かつてホラズムで得た悪名は、次の世代に渡してはならぬ。
部下に愛され、家族と仲良く暮らし、諸国に敬服される、征服者ではなく統治者として、バトゥに教えるべきだ。
この手紙は、一番信頼する者に託す。必ず兄貴の手に届くだろう。
最愛の、トゥルイ。」
沈黙が続き、泣き声だけが聞こえた。バトゥの号泣は枕に埋もれ、痛いほど体が震えていた。
私は彼らの髪を掴み、声がかすれた。
「もういい、泣いてもいい。どうせ諦めて、父親のような英雄にはなれないだろう。」
「どうせ囚われたまま、国を叔父に明け渡すだろう。」
「どうせ酒に溺れた、父親と同じ最期を迎えるだろう。」
スブタイはまた何か言いたげだったが、微かに声を発しかけて、泣きながら沈黙に帰った。私は悲憤を堪えながら、笑って言い放った。
「そうだ、そうだ。恥を忍んで女装し、お前の陣営で命の誓いを結び、仇のバイクを討った、この私を、」
私は歯を食いしばり、悲憤の極みに大笑いした。
「そうだな、私をも、ストーリアをも、あの無念な村と同じように、見殺しにするんだろう。はは、実に心地よいな、そうだろう。」
「やめてくれ、兄弟、やめてくれ……」
私は立ち上がり、手を放した。深く呼吸し、胸から飛び出しそうな心臓を鎮めようとした。
「男なら、カン様として責任を果たし、正々堂々と立ち上がれ。」
トカがバトゥの涙を拭った。スブタイが震える声でバトゥの肩を掴み、座らせて、厳しい顔と声で続けた。
「その通りだ、バトゥ。復讐の半分は、義弟に殺ってもらった。残りの半分は、お前でなければ誰がやるのだ。まだ忠誠を誓う者たちがいるだろう。」
「そして、回回砲に対しても、あの武器が……」
バトゥは汗にまみれた顔を上げ、ゆっくりだが自力で座り直し、私を見つめ、そして猛然と佩刀を抜いて机に突き刺した。
トカが慌てて避け、危うく刺されるところだった。
私とスブタイは無言で見ていた。
「まさか……我が妹に見くびられたとはな。」
「弟。」私が強く正した。バトゥは雷に打たれたような顔で私の服装を見つめ、やがて受け入れた。
「まさか……」
こいつが奮い立つ様子を見て、私が話を遮った。
「だから何をするか。ここにいて、私はすぐにばれてもおかしくないから、早く言え。」
一喝されたバトゥは恥ずかしそうに、また弱々しい声で佩刀を指した。
「……と誓う。明日、それをせねば、未来永劫、主の審判を地獄で受けよう。」
私はうなずいて書状を机に置き、一礼した。
「私が伝える。あとは任せろ。」
バトゥは無言のまま、スブタイと目を合わせてうなずいた。
明日は、信じるのみ。
私はひそかにトカとともにモンゴル陣営を抜け出し、南市の港から城内へ戻った。
いよいよ明日だ。私はレベックを手に、月のない夜の城壁に上り、緩やかで慷慨に満ちた調べを奏で、声を重ねた。
「海ゆかば 水漬く屍」
「山ゆかば 草生す屍」
「大君の 辺にこそ死なめ」
声を高めた。
「長閑には死なじ」
そしてもう一度、悲歌を始めた。
「海ゆかば 水漬く屍」
「山ゆかば 草生す屍」
「大君の 辺にこそ死なめ」
「顧みはせじ」
私は無言で弓をレベックの弦に載せ、蒼天を仰いだ。
拍手が聞こえた。
「わからないが、いい曲だ。」ロビンフッドだった。
私は照れくさそうに立ち上がり、一礼した。「まだ休んでいないんですね、他の衛兵も。」
「光もな。さっきの曲は何だ。」
私が簡単に説明すると、ロビンフッドは軽く笑った。
「君のためか。まぁ、悪くない。」
私は首を傾げた。
「もしその君が、こうして民の仇を討つために戦い抜くなら、俺も心折れるかもな。」
私は驚いて、この男の目を確かめようとした。だがまだよく見えないうちに、ロビンフッドは大笑いして続けた。
「冗談に決まっているだろう。つまらないし、きっといつか、民の仇にもなるぞ。ここの民のために、どこかの民の仇になるんだ。」
私は沈黙し、石の城壁に顔を向けた。さっきのロビンフッドの言葉に、本当に冗談の意味だけがあったのか。
「寝ろ。明日は、俺はここにはいないからな。」
私たちは無言のまま、別れた。
翌二十八日、辛酉の年、辛酉の日。天はますます熱くなり、心もまた然り。
また巨石が一つ投じられて城壁を打ったが、大した損害は出なかった。陣形を整えた兵士、黄色い馬に跨るウグデイ、装填する回回砲。
私は白旗を背に、先日の戦いで負傷を免れた騎兵三十人とともにいた。
ランスを手に惣菜に跨り、密かに南市の港からウグデイ軍の側面に回って待機した。
回回砲がもう一度投石を行うと、ウグデイが鞭を振り、兵が砂を詰めた袋で南市の渓流を渡した。騎兵が東門に突入した。
城内で待ち伏せるジェノヴァ隊と重歩兵隊が食い止め、倉庫で戦っていたが、騎兵が押し入り、二の丸の二重門を破ったらしく、歩兵隊も突撃の準備に入った。南市への上陸はマルコの弓兵隊が射止めてなかなか進まなかったが、回回砲のもう一撃で新兵たちは恐慌に陥って動揺し、同じく押し込まれた。
ウグデイは馬を降り、得意げに髭を整えた。
すると、一本の矢が空に弧を描き、ウグデイに向かった。驚いたウグデイは弓で横を払い、三百歩先のロビンフッドの射撃を弾いた。
ウグデイは怒って北の村の廃墟を指し、歩兵に捜索を命じたようだった。そして回回砲の次の装填を命じた。それが歩兵突撃の合図だったらしい。
だが、その機会は与えられなかった。
初めて、あの奇妙な音が聞こえた。まるで弓矢が鳥になって、哀れな世の争いを悼むかのような、高らかな叫びのような音がした。靴が地面を乱れ踏む音と混じり、ウグデイが不思議な顔で振り返った。
歩兵の陣形の後方から、真昼の太陽よりも赤く明るい乱射の火花が飛び出し、甲冑を着けていなかった歩兵方陣の後半と回回砲に飛び込んだ。回回砲が炎上した。
一瞬の沈黙の後、背後から襲われた兵が慌てて前に逃げ出し、陣形が大きく乱れた。ウグデイは驚いて部隊の指揮を取ろうとしたが、すでに乱戦状態に入った歩兵が将棋倒しになり、輸送隊に偽装していたバトゥ勢に蹴散らされた。
そしてスブタイがウグデイとクナンを睨みながら中央を突破し、二の丸の東門まで駆けて、マルコが言うところの「火焔の羽根」を城内の騎兵隊に撃ち込み、馬を驚かせた。たちまち馬を棄てて逃げ出したモンゴル騎兵が城門から溢れ出した。
ウグデイは激怒し、兜を地面に叩きつけて自ら馬に跨ったが、私が白旗を高く掲げ、ウグデイの黄色い馬を指した。
「あれがウグデイだ! その首を取って一番手柄にしろ!」
「おお!」と騎兵隊が叫び、我が隊は林から飛び出して突撃した。ウグデイは慌てて逃げようとした。
「ウグデイ! 全てはヴォレール殿下の計算のうちだ。貴様の首、もらった!」
私は叫んだが、ウグデイとクナンの馬は遥かに速かった。ウグデイは全力で鞭を打ち、馬は数十秒で三百歩先まで駆け去った。
私は掃討を騎兵隊に任せ、惣菜の全力で東へ追ったが、二分ほどして、もう二人の姿は見えなかった。目の前にあるのは十字路だ。
私は絶望しかけたが、対面から来たのはなんとバトゥだった。状況を伝え、二手に分かれた。
私は左へ、バトゥは右へ。
追跡が十分ほど続き、惣菜も懸命に走ったおかげか、ようやく丘の入口に一つの影が見えた。
灰色の馬が倒れていた。私は落胆し、ウグデイではなくクナンだろうと思った。
と思いきや、辛うじて立ち上がったウグデイがいた。そして森の中に、老人が一人と孫が一人いた。
私は驚いたがランスでウグデイを突いた。ウグデイは躱し、矢で射返して鉄の手袋に当てた。先日バイクに打たれた傷のせいか、骨に痛みが走りランスを落とした。
拾おうとしたところ、ウグデイが一歩先にそれを掴んだが、後ろから石が飛んできてウグデイに当たり、やむを得ずランスを傍の溝に捨てて森に逃げ込んだ。
私はまた惣菜に跨り追おうとしたが、老人が手を振って止めた。すると指差した先の地面に、何十株もの茨を結んで作った仕掛けがあった。
「旦那様! 旦那様!」老人と孫が跪いて地面に額をつけた。
「どうしたことか!」私は驚いた。
「ヴォレール様、旦那様のご恩に報いるため、丘の上からモンゴルの敗走を見て、逃げてくる奴はここを通ると踏んで、罠を張って待っておりました。」
「ご恩?」私は首をかしげたが、老人は孫の手を引いて茨の仕掛けを切り開いていた。
「旦那様は命の恩人でございます。あの食糧のおかげで、ようやく今日まで生き延びられました。まさか恩返しの機会が来ようとは。」
ようやく思い出した。籠城が始まった時、一ヶ月分の食糧を渡したあの老人と孫だった。
私は老人たちに感謝し、道が開いた。後ろからスブタイとバトゥも駆けつけてきた。バトゥの馬の下にはクナンの首がぶら下がっていた。
怪訝そうな二人に、私は地上のクナンの馬を指して状況を説明した。
「籠城の折、食糧を少し多めに渡した老人のおかげで、ウグデイはクナンの馬も失って、遠くには逃げられない。」
二人はそれを聞いて、深く感じ入った様子だった。
私は一礼して老人と孫の名を尋ねようとしたが、老人は笑って首を振り、また一礼する私たちを見送った。
丘を登り、森を抜けると、ようやく甲冑すら脱ぎ捨てたウグデイを見つけた。
「ウグデイ!」バトゥが弓を引き、矢を番えて叫んだ。
「ほう……倅か。」ウグデイは恨みの深い顔で私たちを睨んでいた。「最初から、兄貴がいなくなった時に、お前ら全員をぶち殺しておけばよかったな。恩知らずどもが……」
「何だと……」スブタイが唸った。
「やめろ!」
突然、前方から大声が響き、二人のモンゴル人が現れた。
一人は猪武者で、黄毛白口の奇特な馬に跨り、顔には大きな鷹のような目があり、細い髭が長く流れるように金色の甲冑を越えて腰まで届き、弓とちょうど平行していた。もう一人は文官風で、茶色の羽織を着て、白く丸い顔に焦りが滲んでいた。
「援軍か?」私は驚いたが、バトゥは声を失い、スブタイも目を見開いた。
「ジェベ? そして……耶律楚材?」
「中書令・耶律楚材」と自称に使わせてもらった、その丸い顔のご本人が登場するとは、さすがに妙な気分だった。そしてもう一人のジェベと呼ばれる武者が叫んでいた。
「チャガタイ様の命令だ。モンゴルの内戦は避けるべし、今すぐ停戦せよ。」
「何だと!」スブタイは怒りを隠す気もない。ジェベは真剣な表情でスブタイを見据えた。
「大帳からの命令だ、スブタイ。お前も先帝の御霊前に誓ったはずだぞ。」
スブタイの声が森の鳥をも驚かせ、黒い雲になって旋回して飛び立たせた。「ふざけるな! 兄殺しの野郎だぞ! こいつを見逃したら、先帝にどの面を下げて会うというのだ!」
苦しげな顔の楚材も、声は静かだがしっかり耳に届いた。
「それはわかるが……トゥルイ様からも、似たような書状が……」
「耶律楚材……あんたは儒者だろう、不忠者への裁きがわかるはずだ。この状況を見て、なぜ何も言えぬのだ!」
耶律楚材は頭を垂れ、返す言葉がなかった。
ウグデイは天を仰ぎ、大いに笑った。
「はーっはっはっはっは! まさか、まぁさか、あのトゥルイが貴様らを救うために画策したのが、俺を助けることになるとはな。」
ウグデイは私たちを睨み、やがて目が私で止まった。
「ふん……帝位をチャガタイに譲ったら、いずれまた貴様の首をもらいに来るぞ。」
私は拳を握りしめた。
「ウグデイ……」
「兄弟……もういいから……すまない、私が無力なせいで……」バトゥは絶望して、地面に向けて矢を放った。
「モンゴル内部の件……とおっしゃったのですね。」私に一つの考えが閃いた。
ウグデイは私たちに背を向け、疲れた体で勝ち誇った口調をあの二人に向けた。
「よくぞ来たな、ジェベ。お前にも万人隊長の位を授けてやるぞ。」
ジェベは嫌悪の色を浮かべたが、ウグデイはまるで気にしなかった。
「なぁ、耶律楚材。この顛末をトゥルイに伝えて、あいつの悔しい面を朕に報せろ。」
スブタイの指の関節が鳴り止まなかった。バトゥはまた泣き出しそうだった。
私は無言で、バトゥの矢筒から三本の矢を取り出した。バトゥが驚いた顔で私を見上げた。するとスブタイが無言で弓を差し出した。
冷静な顔をしていた耶律楚材が、不意に私たちを一瞥し、それから哀れむような目でウグデイを見つめた。
ジェベが私をしばらく見定めてから、深く息を吸った。そして馬を転じ、背を向けた。
私は弓を引き、十歩先のウグデイの背を狙った。一射目。
矢がかすめ、ウグデイの左手を擦った。ウグデイが驚いた顔で振り返った。
二射目。ウグデイが大声で叫び、手で顔を掴んだ。右目から血が流れた。命中だ。その後方のジェベが、軽く弓を空に振った。
そして三射目。またジェベが弓を振り、耶律楚材まで何か動きをした。ウグデイの首にもう一本の矢が増え、地面に倒れた。
ようやくウグデイの声が弱まり、やがて動かなくなった。天から無数の黒鳥が降りて、その上に旋回した。
なぜか、スブタイは馬を後方に向けた。
「よかった……よかった……」と、バトゥは呟いた。私は馬を降りてウグデイに近づいた。その体にはもはや命がなかった。
「これが……贖罪だ。」私は目を閉じ、そして見上げた。
するとジェベが向き直り、厳しい顔で私に二本の矢を差し出した。
「あんた、練習がまったく足りないな。大帳にも来て、心だけでなく体も真の英雄にならんか。」
その一言を残して、私たちの後方へ去っていった。耶律楚材が「敬服いたします」と囁いて、またジェベの後を追った。
私は戸惑いながら戻ると、無意識に手ぶらのバトゥに弓を渡そうとしたが、バトゥは首を振って馬から降り、跪いた。私も同じようにした。
「義兄弟……私、この恩を……」
私は彼を止め、抱きしめて、その泣き声を受け止めた。手に握った二本の矢を強く掴みながら、十歩ほど先のスブタイの背を見つめた。




