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騎士の私が大公の娘を演じてモンゴルと婚姻交渉に行ったら、暗殺事件に巻き込まれて国ごと包囲された ~La Storia:三川光の「春秋Annales」~  作者: 三川光
文治十六年、金帳汗国の役

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16/24

12.同十三日、ラテン十字軍が、ブルガリアに宣戦布告を送った。

 翌十四日、私はいつも通り未明に出発したが、西門前にはすでに新しい木柱が一本立てられていた。近づいて見ると、晒し首が一つ載せてあった。そして地面には、衣を剥がれ、もう血の流れていない体があった。先日捕らえた、食糧を横領した者たちだったらしい。


 衛兵に話を聞くと、殿下は昨夜のうちに磔(はりつけ)の上、これらの罪人を南市・西城門・中央広場と商会入口に梟首(きょうしゅ)されたという。数日前に捕らえた間者も同様で、それぞれの罪状を書いた札を添え、五寸釘で固定したとのことだった。


 私はうなずき、これらの者の自業自得だと認めた。むしろ一族ごと処刑すべきだった。


 その時、ヴェローナが城から出てきて、複雑な顔で晒し者と私を見た。


 やがて胸に十字を切り、無言のまま去っていった。私は引き留めたかったが、ヴェローナは振り向かず、次の地点へ祈祷しに向かった。


 殿下の話によると、処刑人とその家族を差別的な目で見る者があまりに多いため、公開処刑はすでにやめて、地下牢で済ませることにしたという。多分そうだろう。自分より早く起きる者はまずいない以上、夜のうちに執行されたのだと思う。


 どうせ死ぬ者のことはともかく、殿下のために生きている者のことまで考えてくださるのが、殿下らしい。ヴェローナは同意しないかもしれないが、戦時とはこういう仕方のない時期なのだろう。


 晒しが終わると、衛生上の配慮から、十七日の未明をもってすべて北の狩場の森の堆肥に棄てた。善良な民が悪に堕ちぬよう、敵と通じる者を罰して見せしめにするためだ。


 こうして、ヴェローナの姿を見ない以外は平穏な数日が過ぎ、二十二日になった。


 この日は、なぜか異様な匂いがしていて、不安な気持ちばかりだった。するとドミトリーが私を見つけ、川の対岸の村が焼き討ちに遭ったと報告した。しかもすでに数人が城門から出発して、対岸へ向かっていたという。私は驚いて、誰かと聞くと、ヴェローナと同行の修道女たちだった。


 私は大いに驚き、心配のあまり、玉砂利の路面を強く踏みしめた。


 この状況でなぜ止められなかったのかと聞くと、民に尊敬される聖職者であるヴェローナがかなり毅然とした態度で交渉したため、さすがの衛兵でも引き留めきれなかったらしい。


 私は、殿下と傭兵隊に速やかに状況を報告し、陣触れを命じると、すぐに馬場へ駆け、惣菜に馬甲をつけて背に跨り、兵営で前半身甲一点、兜一式とランス一本を取り、速やかに陸路で村へ向かった。


 やがて西門前に至ると、対岸の火事が目に入った。川の北の村から黒い煙が吹き上がり、あの異臭の源だった。長く見ていると堪えられないので、東へ向かい、そして北上した。ようやく、川北への木橋の手前で、ロバ数匹と立ち尽くすヴェローナを見つけた。


 ヴェローナは静かに、焦げた匂いが漂う村の入口の前で祈祷をしていたようだった。後ろの馬蹄の音にまったく気づいていない。私は惣菜から降りてしばらく待ち、ようやく祈祷が終わった。彼女は私に振り向き、そしてまた前を向いて歩き出した。


「ヴェローナ!」と呼んでも、彼女は振り向かなかった。


 村は死のような静寂と、火で燃え尽きた屋根裏の崩れ落ちる音に包まれていた。真夏のような天気の中、あちこちに半ば焦げて倒れた死体やそれと思しきものが散乱し、地獄の様相を呈していた。


 修道女たちがそれを収容し、掘ったばかりの千人塚に運んでいた。ヴェローナも私も無言で、この完全に破壊された村を巡り、惨殺された民の遺体を安置させた。


 やがて収容が終わり、修道女たちは無言で胸に十字を切り、死者の冥福を祈った。私は合掌し、ちらりと見た。死者の中に村の聖職者の老人がいたようで、彼だけが他の者から少し離れた場所に安置されていた。村の南から白い鳩の群れが飛び立ち、村の上を旋回した。まるで鳥までもが、死者の無念と生者の痛みを悼んでいるかのようだった。


 ここにはもはや鐘の音がなく、時間が長く感じられた。太陽と影を見れば、実際は十数分に過ぎない儀式が、何時間にも思えた。


 やがて簡易の葬式を終えた。ヴェローナは村の南口に戻り、ロバに跨って皆と帰っていく。私は声を出すことができず、喉が詰まったような気分だった。ヴェローナは悲しい顔で私を一瞥した。


 するとふと気づいた。東へ五十歩ほどのところ、入会地の林の入口前に、もう一つの遺体があった。さっきは村の中に気を取られていたから、あの遺体には意識が向かなかったのだ。


 ヴェローナは他の修道女たちにそのことを伝え、自らロバで向かおうとした。私は引き留めるつもりだったが、ヴェローナが応じなかったので、先に惣菜の背に軽く乗り、遺体から十歩のところで下馬、合掌した。そして遺体に近づいた。ヴェローナのロバも近づいてくる音が耳に届く。


 この瞬間、一瞬だけの異変に気づいた。


 この遺体も、焦げていた。


 そういえば、さっきの鳩も……


 私は顔を上げ、すると猛然と地に伏せた。――数本の矢が、頭の上を斜めに鋭い音を立てて飛び、後ろの地面に突き刺さった。


「にぃさん!」ヴェローナの叫び声が後ろから漏れた。すると彼女のロバの蹄音が近づいた。


「やめろ! 逃げて!」私は地面に伏したまま全力で立ち上がろうとしたが、甲冑が重く、動きは矢の雨に遮られた。ヴェローナはやっと後退したようだ。


 惣菜が焦ったような嘶きを発した。この状況では、お前も近づくべきではない。


 三、四波の射撃の後、やがて矢が止んだ。私がようやく立ち上がり、惣菜に向かった。するとヴェローナの声にならない声が響いた。


「にぃさん!!! だめ!」


 後ろから馬蹄の音が迫り、私が急いで身を伏せると、大刀が兜の上に重く打ちつけられ、飛ばされた。


 馬が左手を通過する。――バイクだった。


 頭に痛みがあるが、それはともかく急いで惣菜の背に跨り、ランスを手にした。


 バイクはヴェローナのロバの前まで突進したが、彼女を無視してすぐに転じ、東側へ戻った。


 そして奴は私に向き直り、ケシク十数騎と合流した。林から土煙が吹き上がり、他の伏兵の姿も露わになった。


 作り笑いで、そいつはこう言った。


「大したものだ。まさかヴォレールの娘を騙って、死地から逃げ出し、今日のここまで命を延ばすとはな。」


 私は拳を握りしめ、奴の得意げな顔を見て、歯を食いしばって堪えた。


「そんな顔で見ないでほしいな、せっかくの美貌も台無しだ。」バイクは続けた。「まるで、かのジョチ・カン様の最期のような無惨な顔だな。」


「あなたは、こうして自分の手で弑逆したジョチ様の話を、平然とする人間だったのですね。」意外にも、私の口から冷静な声が出た。まずは時間を稼ぐべきだ。


「いやいや。まさかの誤解だな。俺は、ジョチ様の命を救うために、あらゆる手段を講じたんだ。」バイクの傲慢な声は本当に聞きたくなかったが、堪えるしかない。


「たとえば……カン様の首に大きな腫瘍ができて、それが破裂したから、やむを得ず俺が取り除いたとか?」


 こんな恥知らずな言葉を聞くのは、ハンガリーの偽文書以来だと思う。「そうして弑逆の事実が消えるとでも思うのか。」


 バイクの顔に一瞬だけ、怒りか悲しみか、異様な感情がよぎった。「あんたが信じる事実は、事実じゃない。現場にいた者だけが、真実を知る。」


 そしてこの裏切り者はまた得意げに言い出した。「まぁでも、あのルイージがちょうどいたのは助かったな。自然死のカン様とただの馬賊一人で言い訳を作れた。新帝の軍功、ストーリアを侵攻する口実としてな。」


「やはり……最初から、そう計画していたのだな。ウグデイも、あんたのような裏切り者も。」


 バイクは厚顔無恥に笑い、細長い目が憎たらしいほどに細まった。


「違うぞ、お嬢様。ウグデイ様は本来、ストーリアの女大公に興味を持って、妾(めかけ)にしたかっただけだ。国を乗っ取って、ヴォレールを楽しませながら生かす。それだけのことだ。」


 こいつは自分の長い前髪を触って、声には自慢の気持ちを満たした。


「それじゃ俺らの軍功にはならんから、俺がちょっと手を貸してやったのさ。本来、存在しない娘との婚姻を求めるだとか、ありえない話で要求するだとか。まさかあんたのような……」


 その目が私の全身をいやらしい意味を込めて見回し、舌打ちをした。


「まぁ、結果が良ければそれが全てだろう。美人と戦うつもりはないが、やむを得ないことだな、お嬢様。」


 私はすべてを理解した。やはり、こいつの独断で、ジョチ様はあのように無念な最期を遂げたのだ。


「ジョチ様も、この村の人たちの命も、あなたの軍功とウグデイのために……ということですね。」私は怒りを抑えながら、その怒りの極みで不意に微笑んだ。バイクはその顔を見て、不思議そうにしていた。


 だめだ、時間を稼ぐべきだった。


「ならばいい。一つだけ申し入れる。私と一騎打ちをしてもらいたい。」


 バイクの目がほんのわずかに見開かれた。


「私が勝てば、後日正々堂々の戦場で決着をつける。あなたが勝ったら、この身はあなたに委ねる。――死んだ体でも、首でも、生きている私でもいい。」


 幸いのことだけど、こいつはまだ私を女扱いしていた。


「あんたの戦功にもなれるよ。まさか、兜もないたった一人の女子に勝てないとでも?」


 バイクはそれを聞いて、ようやく表情が引き締まった。沈黙の後、突然、後方から歩兵の声が聞こえた。


「援軍か?」バイクが冷笑し、後ろを見つめた。


 私は軽く体を傾け、背後を一瞥した。軍旗から見れば、傭兵隊と殿下の部隊が到着しており、陣形はすでに整っていた。私は手を振って、後方で呆然としているヴェローナに撤退の合図を送った。するとヴェローナはようやく身動きが取れるようになり、心配の目を向けながら、南の林の後ろに布陣したロンバルディア勢のほうへ退いた。


「まぁ、いいだろう、お嬢様。」目を離した隙に、バイクが唐突に応じていた。


「勝負というのは、番狂わせもあるが、結果がすべてだ。」バイクの声でわかった。私を蔑(ないがし)ろにしている。


 私たちは互いを見据え、馬上で体勢を整えた。殿下の声が後方から、低いながらもしっかりと届いた。


「やめなさい、三川! 無理です!」


 それにバイクの金色の甲冑は、私より遥かに動きにくいはずだ。援軍が到着した以上、逃げるくらいはできる。


 傭兵の指揮官の誰かが、突然叫んだ。


「危ない!」


 それと同時に、バイクの背後でケシクの一人が体勢を整え、弓を引いて私に狙いを定めた。


 私は跳ねるように左へ重心を移し、危うくかわした。するとバイクが突然、駆けてきた。惣菜は体勢を立て直しつつ逃げようとしたが、バイクはもう目の前だ。


 私はランスを横に構え、バイクの渾身の一撃を受け止めた。後方から驚きの声が上がった。


 そして奴の大刀が私のランスに重く打ちつけられ、私はランスを落とした。


 バイクが大いに笑い、私と援軍のちょうど中間で馬を止めた。そして手を振ると、林から伏兵の軍勢が現れ、突撃の体勢に入った。私は手の痛みを堪え、腰の剣を抜いたが、バイクは嘲笑った。


「もう終わりだ、お嬢様。そんな玩具では馬上で戦えんぞ。さあ、その首をもらう!」


 奴が鞭で私を指し、後方の弓騎兵がケシクを超え、士気旺盛に前へ圧迫してくる。傭兵隊と殿下の軍勢は慌てた様子だった。誰かが泣いて叫ぶ声が聞こえた。


 この瞬間、空に低くから高くへ、一瞬だけ響いた音がした。そしてバイクの大笑いは突然、大きな叫び声に変わった。


 その喉からは血が止まらず、右から刺さった一本の矢の下を流れていた。


 私は驚き、戦場も凍りついた。右の林を見ても何も見えない。百歩先にはただ黄色い断崖絶壁があるだけだ。


 断崖絶壁の上、緑の森の中に……いいえ、その木々の下に、同じく緑色の衣に包まれた、人の背丈の二倍はある長弓(ロングボウ)を手にした、青鬼のような大男が一人。


 私は静かにうなずき、そして苦悶するバイクに向き直った。


「結果がすべてだと言ったな、小細工の卑怯者め。」私は軽蔑の目であいつを見つめ、近づいて、両手で剣を掲げた。


「楽にしてやる。覚悟!」


 叫びながら、私は剣を斜めに振り下ろした。


 甲冑を砕き、恐怖の目で私を見ているバイクを左肩から右腰まで斬り裂いた。


 そして剣の先でその首を刺し、全力で半身を空中に掲げ、両軍に見せた。


「敵将バイク、討ち取ったり!」


 すると後方の敵軍の陣形が乱れ、後退する前隊と前進する後隊がぶつかり合い、揉み合いになった。これを好機と見た殿下が手旗信号で突撃を命じた。傭兵隊も急いで進み、私は陣の後ろに戻った。敵は大混乱に陥り、指揮を失った騎兵の主力三百がそのまま包囲されて投降し、残りは東へ撤退した。


 途中、南の林からバイクについていた馬賊が傭兵に奇襲を図ったが、林の中に潜んでいた殿下の散兵に打ち破られ、後退の途中でまたモンゴルの罠にかかり、死傷は数知れなかった。


挿絵(By みてみん)


 ようやく合流し、私は殿下の元へ行って無謀な一騎打ちを詫びた。殿下が答える間もなく、ヴェローナが号泣しながら私の胸に飛び込んだ。


「にぃさん……にぃさん……」と。


 私はヴェローナの帽子(コイフ)を軽く触って慰めた。


「ヴェローナ……」


「ヴェローナのわがままが、にぃさんにあんなことを……」


「ヴェローナのせいじゃない。」私は、見上げてくるヴェローナの涙まみれの顔から、さっき甲冑についた弑逆者の血を拭い去った。


「すべては、神を冒涜する、あのウグデイのような梟雄(きょうゆう)のせいだ。」


 私は笑いながら、ヴェローナの手を取り、彼女の胸に当てた。


「そしてこのメシアは、悪しき梟雄を打ち破り、真の神の啓示を未開の民に伝え、ヴェローナの手で彼らを感化させる。」


 ヴェローナは泣いて泣いて、ついに不意に吹き出した。


「にぃさんのバカ。なぜメシア気取りなのですか。死にかけたばかりではないですか。」


「それも天意でしょう。キリストの燔祭(はんさい)のような試練とも言えるのではないですか。」


 ヴェローナは涙ながらに笑い、私の唇に指を押し当てた。


「なに、この使えないにぃちゃんは。神への冒涜ばかりではないですか。しかもイサクの燔祭、キリストの昇天でした。」


「でもヴェローナは許してあげます。胸を張って、私をも国をも守ってくれる、天使のような家族ですから、あなたの罪を、全部、許してあげます。」


 機嫌を直したヴェローナは、ようやく私から離れ、恥ずかしそうに後ろへ逃げ出した。


 殿下はなぜか物思いにふけるような目で私たちを見ていた。


「素晴らしい手柄です。」


 私は佇み、殿下の叱責を待った。


 しかし殿下は背を向け、こう続けた。「それがあなたの本質なら、そのまま貫いてほしい。」


 と言って、殿下も佇んだ。


 私は驚きのあまり、喜びが込み上げてきた。


 そしてやがて一礼をし、殿下に次の活躍を約束する形で感謝の心を伝えた。


 殿下は軽くうなずいた。


 勝利した軍勢が帰ると、マルコが不機嫌な顔で城門を開けた。話によると、ケテは城下に向かって再び奇襲するつもりだったが、マルコの留守番を見てすぐに撤退したという。あまりにもつまらなかったので、マルコはわら人形を南の港に立てて、町の伏兵の射撃練習にしたそうだ。


 兵士たちもいい顔はしていなかったが、後で話を聞くと、無駄に体力を使わされたのが我慢ならなかっただけだった。


 勝利後のパレードで、私は先頭に立ち、町中の人々と挨拶を交わした。知り合いが多いせいか、意外にも大勢の人が集まった。そしてようやく夜になり、喜んで迎えに来たティルーンとクレータと会い、螺旋階段で戦の話をした。ほとんど自慢話になった。やがて城に上がり、謁見の間に皆が集まって、褒賞の五万銀貨を下された。私はそれを城内の民に分けて殿下の御恩を示したいと述べ、殿下はさほど気にしない様子でその意見に従った。


 扉が開き、衛兵が報告した。城下に、青い目の大きな髭を持つ者と、ギリシャ人の女と子ども一人が謁見を求めているという。


 皆が驚いた。殿下はうなずいた。


 しばらくして、扉が開いた。細長い緑色の革の外套を身に着け、色褪せた茶色の靴を履き、長弓を携えた、猟人のような風体の青眼の野武士が、傍若無人に椅子を二つ掴んで入ってきた。後ろについているのは、白いヴェールと金色の衣に包まれ、棕色の目を伏せた、子どもを抱いたハイデだった。


「ロビンフッド! あんたは……」私は立ち上がり、あの男をじっと見つめた。ロビンフッドはハイデを椅子に座らせ、自分も勝手に腰を下ろし、靴を脱ぎ始めた。そして周囲をまったく気にしない様子で口を開いた。


「何だい。俺、馬賊の奴らとは気が合わなくなったし、タタール人もまるで気に入らねえから、お前らと手を組む。よかろう。」


 私はすぐに一礼した。ロビンフッドが斜めに私を見た。


「ありがとうございました。その……」


 ロビンフッドは鼻で笑った。


「何だい。お前は随分、タマがあるんじゃねえか。体は弱そうだが、まさか一騎打ちを受けたとはな。」


「俺ァ、タマがある奴が大好きでな。小細工する奴が大嫌いだから、ちょっとだけ、当たり前の結果にしてやったのさ。」


 そしてロビンフッドは半ば笑いながら、他の者に目を向けた。殿下が無言で、考えるものがあるような視線で、彼の視線を受け止めた。


「領主(ロード)さまだろう。別にお前らを助けるわけじゃないが、村の人があんなに死んだし、一度ルイージの恩を受けた以上、タタールを追い出すまでは城守りぐらい力になろう。義理だからさ。馬賊は大体お前らにやられたから、俺一人でよいか。」


「もちろん。三川の件、私も感謝いたします。あなたがロビンフッドですね。マルコから聞いています。」


 ロビンフッドがもう片方の靴も脱ぎ、眉を上げてとぼけた顔をした。


「むしろ、猫の手も借りたいところでしたから、あなたのような方なら尚更です。よければ今後ともよろしくお願いいたします。」殿下は珍しく立ち上がって一礼した。


「ああ、いいぜ。」ロビンフッドは礼をしようとした殿下を手で制し、続けた。「だが、一つ保証してもらいてえ。」


 彼は首を傾げ、ハイデのほうを向いた。


「ビザンツの姫さんだが、夫があんなことになった以上、お前らが責任を取れ。面倒を見てやってくれ。」


 すると、ハイデが突然顔を上げて、ロビンフッドを見つめた。ロビンフッドは慌てて顔をハイデに向けた。


「違います。何度も言ったでしょう。私の夢のために、ルイージを無駄死にさせたのだから、私……私の責任です。あの夢を諦めて、普通に暮らしていれば……」


 ハイデは悲しげに顔を伏せ、子どもを見た。


「何をおっしゃいますか、奥様。」


 ロビンフッドが少し、あの荒い声を低めた。これは助かった。


「男ってのは、自分の運命は自分で決めるもんでしょう。女は別に、責任なんか負わなくたって、楽に生きりゃいいでしょうに。」


 私は思わず口を挟んだ。


「それは違う。人は誰でも、自分の責任はしっかり取るべきだ。男女は関係ない。」


 ハイデがうなずいた。


「一度自分の生き方を決めた以上、しっかりとその役目を果たさなければだめです。」


 ロビンフッドが靴を履き直し、私に向き直った。その青眼が大きく閃き、髭の下に口がわずかに動いていた。


「よく言った。ハイデのことは引き受けるが、あんたも自分の、民を守るという役目から逃げないでもらいたい。ヘ(・)リ(・)ワ(・)ー(・)ド(・)殿。」


 ロビンフッドは沈黙し、そして大笑いした。


「まぁ、そこまで言われちゃあな。――しばらくだが、よろしくな。」


 ロビンフッドはようやく地面を踏みしめ、勢いよく立ち上がって一礼した。


 解散すると、クレータが駆け入り、無言でハイデと抱き合った。


 声なき涙が、古い板張りの床に零れるばかりだった。




 そしてまた、籠城の日々が続いた。ただ城の上に長弓が一つ増えたり、晩祷の時に教会にハイデと子どもの姿が増えたり、そして三日間だけ、城の西門前に弑逆者の晒し首が一つ増えたり。そのような日々だった。ヴェローナは、捕虜にも説教していたようだ。


 ほかには、ようやく残りの二つの村と一番東の宿場町の長者から、軍の配置を要請された。食糧と宿屋を提供するというので、百人の歩兵をそれぞれに配置し、モンゴルの次の侵攻を待ち受けるようになった。もちろん、民の不平不満にも心を配っていた。


 だが、その次の侵攻は、もう六月末のことだった。

 注曰く:五月二十二日、大将の首を討ち取った。作者の戦功だが、君の為に臣の功績を称せずにした。

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