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死んでていいから生きててほしい  作者: やりいかのフリット
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輪廻転生哀毀骨立魑魅魍魎 Ⅱ

「やぁ、歩夢君。久しぶり。思い出した?」

 ニヤニヤと黒髪の男は妖しく笑いながらそう口を開いた。

「あぁ、思い出したよ……」

 コイツの顔を見て、ようやく全ての記憶が戻った。

 そうこの男こそが――

「お前が俺を殺し……この町の人を殺し回っている連続殺人犯ってわけか」

「ハハハハハハハ‼︎おっっそ‼︎ようやく思い出したんだ‼︎」

 顔に手を当て愉快に笑う男に俺は怒りが込み上げ奥歯を噛み締める。

「でもその答えは、正解をあげるにはいくらなんでも真相から遠すぎるね」

 ふぅ……と息をついた男はまたニヤニヤとしたムカつく口調に戻って話した。

「……どういうことだ。また回りくどい言い方しやがって」

「50%ってところかな。半分正解、半分不正解って事だよ。歩夢君を殺したのは僕であり、僕でないのさ」

 ククッ……と言い終えた後に男は笑う。

「まぁでも、そんな事を歩夢君が知っても何の意味もないんだけど、どうせキミはこれから死ぬんだし!死んでるのに死んじゃうんだ!面白いよね!」

 また顔に手を当て上機嫌に男は語り始めた。

 なんなんだコイツは……。全くペースが掴めない。一体何を話している?というかそれよりも――

「あっ、そういえばまだ名乗ってなかったね」

 男がおもむろに口を開いた。

「殺しちゃう前に、ちゃんと自己紹介はしておかないとね。前回はできなかった訳だし――」

 そう言うと、男はショーの始まりを告げる司会者のように大きく両腕を開き、話した。

「僕は続木(つづき) 終夢(しゅうむ)――続く木に、終わる夢と書いて続木 終夢だ」

「続木……終夢……」

 それが――俺を殺した奴の名前。

「夢を持ち、未来へと向かって歩くキミが最後に辿り着く夢の終わりにいるのは、僕のような殺人鬼。何とも皮肉で面白い――そう思わないかな」

 続木は顎に生えた無精髭を指で撫でる。

「ねぇ、歩夢君?」

 皮肉めいた奇妙な笑みを唇の端に浮かべ、ねっとりと舐めつくような気持ち悪い声で続木は俺の名を呼んだ。

「さっきから何で……お前は俺の名前を知っているんだ」

「そんなの当たり前だよ。火事で燃え尽きた家の中で、あんなに楽しく話し合った仲じゃないか」

 続木は小首を傾げ、本当に“何を言っているのか分からない”という顔を浮かべた。

「そんな記憶は……ないぞ」

 またコイツは、この続木という男は俺をからかって遊んでいるのか?

 俺のその返答に、続木は「あっれ〜?」と頭を掻きむしり唸った。

「そうだったかなぁ……あっ!」

 続木は何かを思いついた様子で指を鳴らす。


「じゃあ……あの三日月って子の夢を壊して、自殺に追い込んだ時だっけ?」


「は?」

 思わずそう声が出た。

 今までの発言もよく分からなかった。だが、この発言はそれ以上に意味のわからないものだった。

 どういう事だ……?三日月が、自殺……?

「あ〜……違いそうだねぇ。ん〜じゃああれか!神倉って子を殺した時に歩夢君とばったり会ったんだっけ?」

 一体この男は……何を言っているんだ?

 からかっているかとも思ったが、この男は本当に今口にした事柄を()()()()ように語っていた。

 嘘をついているようには思えなかった。

 だから――わからなかった。

 そんな存在してないものを、男が知っているのかが理解できなかった。

「あーらら……歩夢君ぽかーんと口開けちゃって、こりゃあダメだね。完璧壊れちゃってるね」

 はぁ……じゃあもういいか。と男はため息をついて続けた。

「まぁ僕が何でキミの名前を知ってるとかそんなことはどうでもいいじゃないか。僕はこの世界の真相を知る黒幕の協力者だから知ってるとか、悪役によくあるパターンって事でいいじゃない。あながち、間違いでもないしさ」

「お前……さっきから何なんだよ!」

 ヘラヘラと笑い、俺の事など御構い無しに話をするその男に殺意に似た怒りが込み上げた。

「訳わかんない事ばっか言いやがって!ちゃんと説明しろ!三日月を……神倉を殺したってどう言う事だ‼︎」

 だが怒鳴られた続木は「ヒュー」と口笛を吹き、楽しそうに笑った。

「まあまあそう怒らないで、落ち着いて話をしようよ。死んだばかりだろ?時間は充分ある」

「…………」

 空気も読めずそう冗談を言う続木を睨みつける。

「あらら、せっかく考えた生き返りジョークだったのに残念だなぁ……これ、今回の出会いのためにわざわざ考えてきたんだよ?」

 そう言って続木はヘラヘラと笑う。

「お前の目的は何なんだ?何のために人を殺して回る」

「目的……?そんなの生きる為に決まってるじゃないか」

 “何がおかしいの?”と言った様子で続木は話を続けた。

「生きる為だよ。あれ?もしかして歩夢君、寿命伸ばす方法知らない感じ?」

「……そんな、事かよ」

 生き返った人間が寿命を伸ばす方法ーーそれは生きている人間の命を奪い、自分のものとすること。

 そんなことはもちろん知っている。

 だがコイツはーーこの続木という男は、そんな私利私欲のためだけに、何人もの人を――

「生きるためさぁ、しょうがないじゃないか。ハハッ!」

「お前は自分が生きながらえる為だけに、何人もの人を殺したのか!」

「うん、そうだけど……というかそれ、今僕が言ったよね?相手が言ったことを復唱するだけ、何ともお粗末で頭が悪いんだ歩夢君は……」

 俺の怒りなど、続木には全く伝わっていない様子だった。

 続木は「やれやれ」と言って俯いた。

「それにしてもーー」

 顔を上げ、続木はおもむろに口を開いた。

「どうだい歩夢君、この世界を楽しんでいるかい?」

「楽しい……?ふざけんな!死んでいるのに楽しむも何もあるわけないだろ!」

「えー、そこはしょうがないじゃないか……君が死なないとこの世界は始まらないんだよ」

 続木の唇の端が釣り上がる。


「だってここは――()()()()()()なんだもん」


 だからさーーと弾み調子に続木は話す。

「それを抜きにしてどうだい?この世界を楽しんでいるかい?」

 続木のそのふざけた質問に俺は叫んで返した。

「あぁ、そりなりには楽しかったさ……。死んでから出来た家族だっているし、妹の誕生日も友達と一緒に祝ったしな‼︎」

「ククッ――!」

 俺のその答えに、続木は腹を抱えて笑い始めた。

「アハハハハ‼︎うっそ⁉︎楽しんでたんだ‼︎良かった!やっぱり()()()歩夢君に話しかけた甲斐があったよ!」

 そしてひとしきり笑った続木は涙を拭く。

「そっかそっかぁ……楽しかったんだ……」

 そう言うと、続木の黒い瞳が俺を見た。


「じゃあーーぶっ壊さないとね」


 低い声で続木がそう言った刹那――。

 ドゴォン‼︎

 という衝撃音と共に、突然続木の周りに巨大な火柱が三本舞い上がり、取り囲んだ。

「炎系能力者か――戦闘向け過ぎんだろ‼︎」

 灼熱の熱さにやられる前に、俺は地面を蹴って後方へと飛ぶ。

 ヒュン――

 途端、何かが火柱を突き抜け高速で飛んでくると、俺の右胸に突き刺さった。

「うぐっ……⁉︎」

 銃弾にでも貫かれたような鋭い痛みが胸に走る。

 な……なんだ⁉︎何が⁉︎

 衝撃で背中から地面に叩きつけられた俺は、体を起こし何が起こったのかを確認する。

「こ……氷……だと?」

 見ると、俺の右胸には、30センチ程の氷柱が突き刺さっていた。

「ハハハッ!大当たり〜!」

 ヘラヘラと余裕の笑みを浮かべた続木が火柱の中からゆっくりと姿を現した。

「二つも能力が使えるなんて、聞いてないぞ……」

 俺は痛みを我慢し、胸に刺さった氷柱を抜くと、栓の無くなった傷口からどろりと鮮血が漏れる。

 だがもう普通の人間ではない俺の体は、文字通り人間離れした回復力で傷が回復していく。

「僕は元が弱いからね、二つあってやっと他の人とおあいこさ」

「そうかよ……それなら、俺は三つは欲しかったね」

 傷が完全に塞がったのを確認した俺は、能力で地面と体を反射させた。

 ドガンッ

 と大量の土埃を舞い上がらせ、俺は数十メートル上空へと飛んだ。

「ヒュー、やるねぇ。こりゃあ絶景」

 俺は空気の壁を頭の中でイメージ、それと足とを反射させ、豪速の蹴りをヘラヘラと笑う続木へとしかける。

「喰らえッッッ‼︎」

 ゴワンッ

 という風を斬る音を立て鋭い蹴りが続木の頭へと繰り出される。

 だが――。

「うぉっ……と」

 続木は上体を逸らすと、難なくその一撃をかわした。

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